おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「告白」  湊かなえ

2010年06月21日 | ま行の作家
「告白」 湊かなえ箸  双葉文庫 

 「本屋大賞」には、なんとなく反感を持っている。正確に言うと、反感ではなくて、ちょっとしたヒガミ根性かもしれません。だいたい、私が愛する本が選ばれた試しがない。「今年は、これでしょう!」という作品が大賞に選ばれないどころか、トップ10に入ってすらいない。「私には、そんなセンスがないって言いたいの???」

なので、基本は、「大賞受賞作は意地でも読んでやるものか!」という意味のない頑ななスタンスでおります。当然のことながら、2009年の大賞である「告白」も読んでいませんでしたが、映画「告白」の宣伝にヤラれてしまいました。

取り立てて松たか子のファンという訳でもないのに、あの短いCMは、松たか子という人の圧倒的な存在感に、何度見ても、釘付けにされてしまう。無機質な破壊力が溢れていて、どうしてもストーリーが気になってならない。

しかも、2009年の大賞受賞作をわずか1年で文庫化したことは大いに評価できる(もしかして、双葉社だから?)ので、自らに課した「禁」を破って購入した次第。

なるほどねぇ…。こういうのが大賞受賞するのかぁ…。 というのが素朴な感想です。

確かに面白いのです。中学校の理科の教諭・森口の告白から物語はスタートを切る。映画の宣伝にもあるように、「私の娘は、このクラスの生徒に殺されました」。そんな、衝撃的な発言の先が気にならないハズがありません。森口の告白で、誰が犯人かは明らかになるのですが、その後、告白者がどんどんと代わっていく。犯人である少年の告白、クラスメートの告白、少年の親の告白。色々な人の告白を積み上げていくことで、事件の全容、背景が少しずつ明らかになっていく。そして、何の救いもない、乱暴でぶっきらぼうな結末は斬新ではあります。読み切りマンガを一気読みしたような気分。

でも、「書店員が一番売りたい本」というほど、私は、誰かに薦めたいという気持ちにはなりませんでした。

救いの無い事件-というものは、起きるものなのだと思います。中学生が身勝手な理屈と自己顕示欲のために殺人を犯してしまうという事件は過去にもあったし、教師といえども、生身の人間であれば復讐心が抑えられないこともあるかもしれない。そういう意味で、事件自体にはリアリティがないわけではないのです。

でも、事件が起こった後が、あまりにも非現実的なのです。最初の事件が起こった後、警察の捜査って、そんなに杜撰だろうか。学校の中で、目撃者もなしにそこまでのことをやり得るのだろうか。そして、そんな安っぽい復讐の方法って……。2つめ以降の事件が起こるのに、何のストッパーも働いていないことが、あまりに、リアリティがないなぁと感じてしまいました。

 でも、松たか子主演で映画を撮りたくなる気持ちはよくわかります。映像作品としての方が面白いかもしれません。


1 コメント

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同意 (古河しゅんたろう)
2010-06-28 19:44:31
「本屋さん大賞」受賞作品で納得できたのは、「博士の愛した数式」だけでした。「告白」もイマイチだったようですね。
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