おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「写楽・考」 北森鴻

2008年12月01日 | か行の作家
「写楽・考」 北森鴻著 新潮文庫 (08/12/01読了)

 昨日、奥田英朗の最新刊「オリンピックの身代金」を有隣堂戸塚モディ店で購入!それが読みたい一心で、頑張って、読了。「写楽・考」そのものは、イマイチ、私のシュミに合わず、2週間以上カバンに入れて持ち歩き、電車の中で「1ページ読んでは爆睡」の繰り返しでした。

 超・美人民俗学者の蓮丈那智という人が主人公なのですが…私は、蓮丈那智が冬狐堂シリーズ(「狐罠」講談社文庫など)に登場した時から、あまり好きになれませんでした。書き手は「わが道を行く孤高の人」というイメージで書いているのかもしれませんが、私には「唯我独尊すぎてはた迷惑な人」としか思えません。那智に惚れている内藤という助手がウジウジしているのにもイラついてしまう。
 でも、一番の理由は、このシリーズを読むと、民俗学が超エキセントリックな学問であるかのように描かれていることが引っ掛かってしまうのです。声を大にして「勉強しました」と言えるほどマジメな学生ではありませんでしたが、民俗学を専攻した身からすれば、「民俗学=オカルティズム」と誤解されるのは、とっても不本意。もちろん、民俗学の研究対象には土着宗教とか迷信・言い伝え、儀式とその背景にある超常的現象なども含まれますが、でも、オカルトではありません! しかも表題作になっている「写楽・考」では、「一旦は民俗学を捨てた元・学者が再び学問の世界に戻るために偽名で論文を書く」というハチャメチャな設定。「偽名で論文なんて書いたら、ますます、戻れなくなるだろう!」と突っ込みを入れたくなってしまいました。さらに、民俗学のようなメシの種にならない学問はスポンサーがつくわけでもなし、超ビンボー学問なのですが、なぜか、気ままに思いつくまま、あちこちフィールドワークしまくっていて、現実とは程遠いいなぁ。

 というわけで、私がたまたま民俗学専攻だったので突っ込みを入れたくなるだけで、余分なバイアスが掛かっていなければ、意外と面白いのかも。でも、主人公の魅力度から言えば、「冬狐堂」シリーズの陶子さんの方が、断然、好感持てます。