おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「三四郎はそれから門を出た」 三浦しをん

2008年12月29日 | ま行の作家
「三四郎はそれから門を出た」 三浦しをん著 ポプラ社 (08/12/29読了)
 
 静岡から久々に横浜にやってきた叔母が10,000円分も図書カードをくれた!人様からお小遣いを頂戴するような時代は遥か昔に終わっているのですが、有り難く「子ども扱い」に甘んじる。で、ちょっと太っ腹な気分になって、意味もなくエッセイに大枚(といっても、たかだか1600円)をはたいてみました。

 前書きに「本に関するエッセイをまとめた」とありましたが、本に関しないエッセイも半分ぐらい混ざっていたような…。ちなみに、タイトルは夏目漱石の名作をつないだものだそうですが、夏目漱石の書籍に関するエッセイは一遍もありませんでした(もしかしたら、私の記憶に残っていないだけ?)。

 以前から三浦しをんさんの新聞書評を読むたびに、三浦さんの読書生活を垣間見てみたいと思っていました。三浦さんが、他の人が決して注目しないようなちょっとヘンな感じの本を取り上げ、しかも、やや不思議な視点で、その魅力を力説しているところに心惹かれるのです。その期待を裏切らない、楽しい書評集というか…おススメ本エッセイでした。特に、楽しかったのは、かつて朝日新聞で連載していたという「中高生のためのブックサーフィン」を収録した項目。「中高生のため」と言っても、三浦さんのことゆえ、世界の名作っぽいものや、中学生日記的な教訓モノなどを薦めることはなく、取り上げられた本とそのおススメポイントからは「世の中は不条理なのだ」「普通じゃなくたっていいじゃん、別に」というメッセージがにじみ出ている。高校時代に、こういう国語の先生や図書館司書のお姉さんがいたら、さぞかし楽しかっただろうに-と思います。もちろん、中高生ではなくて、大人が読んでも十分に楽しげな本が色々。早速、何冊か購入予定リストに入れました。

 本に関しないエッセイでは「アンアン」連載モノが笑えました。日銀小樽支店の「金融資料館」が楽しかったとか、お父様が愛してやまない阪神タイガースのしょうもないグッズの紹介とか…どう考えても「アンアン」読者の98%ぐらいは関心を持たなさそうなテーマで綴られていることで、「アンアン」の懐の深さを感じました。

 三浦さんの書く小説は、あまり好きじゃないタイプのもの(「むかしのはなし」など)もあるのですが、エッセイはどれも楽しく、脱力できます。そして、なぜか、脱力したあとに元気が出てくるところがとっても良いのです。