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もんく [とある南端港街の住人になった人]

初雪

この冬の初雪が降って短い時間で止んだ。
きなことつぶあんに生まれて初めての雪を見せた。


つぶあんの容態はあれからあまり変わらないままだ。ただ、水をほとんど飲まないでいる。飲んだのはあの後1回だけ。舌を動かすのも難しい。赤ちゃんの時に初めてガラスのボウルから水を飲んだ姿を思い出す。水面がどこにあるかが分からず恐々口元を落とすと間違えて鼻先を水に突っ込んでしまった。

時々立ちあがって不器用に手足を動かして移動する。移動する先は猫箱の中が多いが、猫箱の中では水が飲みたくなってもやれないし。寝返りも打てないのでしばらくして引っ張り出される。時々動かす首が震える。そういう時には首の角度も変になる。

落ち着くと元に戻る。きれいな目と穏やかな顔つきに戻る。この子はたぶん未熟児で生まれた。耳の位置が今より横に下がっていて顔も変だった。それが1ヶ月もすると全く違う姿に変わっていた。身体中の毛はふわふわでまるでたんぽぽのようだったし、コロコロと遊び回る様子はどこかから降りてきた妖精が戯れているとしか思えなかった。今はあの天真爛漫さは失せたものの美しい生き物であることに変わりはない。

始めがあればいつかは終わる。それがここ数日以内なのではないかと思っている。もしかすると数時間以内かとも。この数日の時間を稼ぐだけのために、苦しまずに行ってしまえるチャンスを奪ってしまったのかもしれない。
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