<読んだ本 2014年7月>
今月は、梅雨の低気圧がぎりぎりと刺し込むように腰にきてしまったので、電車で一度だけ湯治のために出かけた。できれば草津あたりの強烈に効きそうな温泉がよかったのだが、いかんせん仕事帰りには遠すぎる。だから伊豆で妥協したのだ。
夜、伊東の町の居酒屋で食べた刺身が旨かった。

ずいぶん豪華のようだが、これで一人前の盛合せである。
鯵はもちろんどれも新鮮そのもので、金目鯛の刺身がことのほか気に入ってしまった。腰痛も温泉が効いたのだろう、おとなしくなってひと安心。やっぱり温泉はいいね。
奥飛騨温泉郷では、中崎山荘以外にふたつの日帰り温泉にはいった。心覚えのために書き記しておく。
その昔五時間を要した安房峠越えも、トンネルができた現在は五分ほどの所要時間しか掛らない。

岐阜側のインターチェンジを出て、信号を右折するとすぐのところに「ひらゆの森」という温泉施設がある。

五百円の日帰りで格別の温泉を存分に楽しめるのだが、二食付き格安料金で泊ることもできる。宿賃がハイレベルな奥飛騨温泉郷では穴場の宿でもある。これは覚えておきたい。
高級な宿が多い福地温泉で入った日帰りの温泉は「石動の湯」。


露天風呂は立ちあがると、外の客に丸見えだ。女湯はだいじょうぶなのだろうかと余計な心配をしてしまう。

この「石動の湯」、ずいぶん昔に一度利用したことがあるが、ほとんどそのころと変わっていなかった。
福地温泉の宿にも一度泊ったこともあるのだが、いまはもうどこだったか覚えていない。きっと、その程度のレベルの宿だったのだろう。
ひらゆの森と中崎山荘は、時間があって空いている曜日ならお薦めしておく。
さて、今月に読んだ本ですが、今月はまあまあの7冊、累計で51冊だ。
1. ○慕情旅まくら 高橋治 角川書店
2.○ちよの負けん気、実の父親 物書同心居眠り紋蔵 佐藤雅美 講談社
3. ○流域 高橋治 新潮文庫
4. ○男嫌いの姉と妹 町医北村宗哲 佐藤雅美 角川文庫
5. ○地の骨 (上) 松本清張 光文社文庫
6. ○地の骨 (下) 松本清張 光文社文庫
7. ○わけあり師匠事の顛末 物書同心居眠り紋蔵 佐藤雅美 講談社
「地の骨」は再読である。
松本清張はその昔、よく読んだ。とくに小説では、読んでいない本を探すのが難しいくらいだ。久しぶりに読んだのだが、貨幣価値の変化を気にしなければ、いまでも充分面白く読めるのが凄い。

「流域」は四万十川を主な舞台とする小説とエッセイを合体させた意欲的な試みの本である。でもやっぱり小説は小説、エッセイはエッセイのほうがスッキリしていいと思う。
ツガニと呼ばれる蟹を食べるシーンの描写が圧巻。
『・・・略・・・たっぷり浮かした刻みネギごと、ひと口啜った。
「うむ」
思わず唸り声が出た。塩味をかくし味程度の醤油で引き立たせてある。その下に、甲殻類特有の
玄妙きわまる甘さがひそんでいる。しかも、汁の濃度から来る舌ざわりが、サラッとは来ないで、
ある厚みを持って感じられる。西欧のスープの方向に寄ったというか、舌の上に載る重さが
あるのだ。
その重さは、明らかにツガニの肉と、体内の卵のまじり合いが生み出すものだった。魚のオボロを
散らしたような、豆腐を作る際、苦汁の作用で、液体が固体に変わって行く“あれ”が浮いている
とでもいったら良いのか、啜った時の舌ざわりが絶妙で、ノド越しの瞬間に、口中にある匂いが
ひろがる。それは、まさに、清流四万十の匂いというべきものなのだろう。
淡雪、卵白、密度の濃いクリームチーズ、そのどれに類似するとも表現しにくい優しげな固まりも
浮いている。それは口中でハラリとほどけた。汁の実に入れてある茄子にも十分に味がしみている。』
なんとも旨そうで、つい涎が出てきそうな描写である。
→「中崎山荘 奥飛騨の湯」の記事はこちら
→「読んだ本 2014年6月」の記事はこちら
今月は、梅雨の低気圧がぎりぎりと刺し込むように腰にきてしまったので、電車で一度だけ湯治のために出かけた。できれば草津あたりの強烈に効きそうな温泉がよかったのだが、いかんせん仕事帰りには遠すぎる。だから伊豆で妥協したのだ。
夜、伊東の町の居酒屋で食べた刺身が旨かった。

ずいぶん豪華のようだが、これで一人前の盛合せである。
鯵はもちろんどれも新鮮そのもので、金目鯛の刺身がことのほか気に入ってしまった。腰痛も温泉が効いたのだろう、おとなしくなってひと安心。やっぱり温泉はいいね。
奥飛騨温泉郷では、中崎山荘以外にふたつの日帰り温泉にはいった。心覚えのために書き記しておく。
その昔五時間を要した安房峠越えも、トンネルができた現在は五分ほどの所要時間しか掛らない。

岐阜側のインターチェンジを出て、信号を右折するとすぐのところに「ひらゆの森」という温泉施設がある。

五百円の日帰りで格別の温泉を存分に楽しめるのだが、二食付き格安料金で泊ることもできる。宿賃がハイレベルな奥飛騨温泉郷では穴場の宿でもある。これは覚えておきたい。
高級な宿が多い福地温泉で入った日帰りの温泉は「石動の湯」。


露天風呂は立ちあがると、外の客に丸見えだ。女湯はだいじょうぶなのだろうかと余計な心配をしてしまう。

この「石動の湯」、ずいぶん昔に一度利用したことがあるが、ほとんどそのころと変わっていなかった。
福地温泉の宿にも一度泊ったこともあるのだが、いまはもうどこだったか覚えていない。きっと、その程度のレベルの宿だったのだろう。
ひらゆの森と中崎山荘は、時間があって空いている曜日ならお薦めしておく。
さて、今月に読んだ本ですが、今月はまあまあの7冊、累計で51冊だ。
1. ○慕情旅まくら 高橋治 角川書店
2.○ちよの負けん気、実の父親 物書同心居眠り紋蔵 佐藤雅美 講談社
3. ○流域 高橋治 新潮文庫
4. ○男嫌いの姉と妹 町医北村宗哲 佐藤雅美 角川文庫
5. ○地の骨 (上) 松本清張 光文社文庫
6. ○地の骨 (下) 松本清張 光文社文庫
7. ○わけあり師匠事の顛末 物書同心居眠り紋蔵 佐藤雅美 講談社
「地の骨」は再読である。
松本清張はその昔、よく読んだ。とくに小説では、読んでいない本を探すのが難しいくらいだ。久しぶりに読んだのだが、貨幣価値の変化を気にしなければ、いまでも充分面白く読めるのが凄い。

「流域」は四万十川を主な舞台とする小説とエッセイを合体させた意欲的な試みの本である。でもやっぱり小説は小説、エッセイはエッセイのほうがスッキリしていいと思う。
ツガニと呼ばれる蟹を食べるシーンの描写が圧巻。
『・・・略・・・たっぷり浮かした刻みネギごと、ひと口啜った。
「うむ」
思わず唸り声が出た。塩味をかくし味程度の醤油で引き立たせてある。その下に、甲殻類特有の
玄妙きわまる甘さがひそんでいる。しかも、汁の濃度から来る舌ざわりが、サラッとは来ないで、
ある厚みを持って感じられる。西欧のスープの方向に寄ったというか、舌の上に載る重さが
あるのだ。
その重さは、明らかにツガニの肉と、体内の卵のまじり合いが生み出すものだった。魚のオボロを
散らしたような、豆腐を作る際、苦汁の作用で、液体が固体に変わって行く“あれ”が浮いている
とでもいったら良いのか、啜った時の舌ざわりが絶妙で、ノド越しの瞬間に、口中にある匂いが
ひろがる。それは、まさに、清流四万十の匂いというべきものなのだろう。
淡雪、卵白、密度の濃いクリームチーズ、そのどれに類似するとも表現しにくい優しげな固まりも
浮いている。それは口中でハラリとほどけた。汁の実に入れてある茄子にも十分に味がしみている。』
なんとも旨そうで、つい涎が出てきそうな描写である。
→「中崎山荘 奥飛騨の湯」の記事はこちら
→「読んだ本 2014年6月」の記事はこちら
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます