<草津よいとこ(2)>
湯畑をぶらぶらして宿に戻ると、持ち込んだ芋焼酎の水割りをちびちび呑み始める。散歩のおかげで眠気は飛んでいる。
食事は夕食、朝食ともに部屋食である。
部屋食は食事後に、どうしても鍋物とかの匂いがしばらく残る。朝食の三十分前には蒲団をあげにくるので、否応なく起床時間が決まってしまう。このふたつが気に入らない。
だから、わたしはどちらかというと食事処で食べるのが好きなのだが、こればかりは宿に従わざるを得ない。
夕食の献立を書いておくと、先付「うど 菜の花」、お凌ぎ「グリンピース御飯」、八寸「桜の葉寿司 ふぐ皮ゼリー寄せ たらの芽サーモン巻」、酢物「盛り合せ」、お造り「鮪 勘八」、煮物「海老芋 竹の子 手鞠麩」、洋皿「上州牛ローストビーフ」、鍋「地鶏つくね鍋」、揚皿「舞茸 ふきのとう 海老 伏見甘唐辛子」。香物の盛合せに、ご飯と吸物椀。デザートの水菓子に季節の果物が付く。
草津の宿の食事はご飯をのぞけばレベルは案外と高い。
ほろ酔いをとっくに通り過ぎているわたしには、地鶏つくね鍋が一番旨かった。あとは残念ながら朧な記憶しかない。
懐かしいダイアル式黒電話でフロントに夕食をすませたことを知らせ、タオルを持ち温泉に向かう。
酔っているので、入浴を軽めで切り上げ宿のなかを歩いてみることにした。
入浴後の広い休み処には碁盤が置かれ、冷たい飲み物が自由に飲めるようになっている。
いたるところに、片岡鶴太郎が書いた書画が飾られている。好きなひとには堪らないのだろうが、これでもかとあまりに多すぎてちょっとウルサい。
ロビーの裏にカフェルームがあって、宿泊客はコーヒーマシーンから無料で飲めるようになっている。
その奥には足湯があった。
機械がサーブする無料のコーヒーで旨かった試しがないのでやめておいた。これは失敗だった。チェックアウトの前に飲んでみたら柔らかい口当たりのなかなか旨いコーヒーなのだ。
翌朝、西の河原露天風呂から帰ってロビーで一服しながら新聞を広げていると、大旦那がまだ営業していない土産物ショップの奥に入るのを眼の片隅で捉えた。
しばらくすると、盆に載せたお茶を運んできてくれたのにはありがたすぎて恐縮してしまった。
露天風呂でたっぷり汗をかいたので、待ちにまった朝食はなんとも旨かった。
おかずが多すぎて、しかもどの皿もひと手間かけてあり、すこぶるご飯がすすみ大盛二杯平らげてしまった。
食休みをとり、九時を過ぎるのを待って大浴場へ行く。そろそろ客もチェックアウトの準備態勢にはいっているはずだから空いているはずだ。
この宿では午後十時に男女の風呂が入れ替わる。
昨日の夜、三回目に入った内湯である。
強烈な熱さで、たっぷり掛け湯をして身を沈めたのだが、表面の湯が半端でなく高い湯温である。
内湯を飛び出し、広い露天風呂にはいると、こちらは適温であった。
一泊だが、充分にリラックスできた。
それに、やっぱり老舗の宿は居心地がいい。客のもてなしが、押しつけがましいところがなく、実にさりげない。そうだ、ポットを電気ポットに変えてくれれば嬉しいのだが。
でも、チェックアウトして次の目的地で車を降りたとき、靴が綺麗に磨かれていることに遅ればせながらやっと気づいて、かなり感動してしまった。チェックインするまえに牧場に寄ってドロドロに汚れていたはずだったのだ。電気ポットなどどうでもいい。なんとももの凄く親切な宿である。
次回は湯畑の湯を引いた宿と決めたが、ぜひともまた来たい宿だ。
草津温泉、年に一度くらいはその実感を確かめに訪れたい。
まさに<草津よいとこ>、年に<一度はおいで>である。
→「草津よいとこ(1)」の記事はこちら
→「続・西の河原露天風呂」の記事はこちら
湯畑をぶらぶらして宿に戻ると、持ち込んだ芋焼酎の水割りをちびちび呑み始める。散歩のおかげで眠気は飛んでいる。
食事は夕食、朝食ともに部屋食である。
部屋食は食事後に、どうしても鍋物とかの匂いがしばらく残る。朝食の三十分前には蒲団をあげにくるので、否応なく起床時間が決まってしまう。このふたつが気に入らない。
だから、わたしはどちらかというと食事処で食べるのが好きなのだが、こればかりは宿に従わざるを得ない。
夕食の献立を書いておくと、先付「うど 菜の花」、お凌ぎ「グリンピース御飯」、八寸「桜の葉寿司 ふぐ皮ゼリー寄せ たらの芽サーモン巻」、酢物「盛り合せ」、お造り「鮪 勘八」、煮物「海老芋 竹の子 手鞠麩」、洋皿「上州牛ローストビーフ」、鍋「地鶏つくね鍋」、揚皿「舞茸 ふきのとう 海老 伏見甘唐辛子」。香物の盛合せに、ご飯と吸物椀。デザートの水菓子に季節の果物が付く。
草津の宿の食事はご飯をのぞけばレベルは案外と高い。
ほろ酔いをとっくに通り過ぎているわたしには、地鶏つくね鍋が一番旨かった。あとは残念ながら朧な記憶しかない。
懐かしいダイアル式黒電話でフロントに夕食をすませたことを知らせ、タオルを持ち温泉に向かう。
酔っているので、入浴を軽めで切り上げ宿のなかを歩いてみることにした。
入浴後の広い休み処には碁盤が置かれ、冷たい飲み物が自由に飲めるようになっている。
いたるところに、片岡鶴太郎が書いた書画が飾られている。好きなひとには堪らないのだろうが、これでもかとあまりに多すぎてちょっとウルサい。
ロビーの裏にカフェルームがあって、宿泊客はコーヒーマシーンから無料で飲めるようになっている。
その奥には足湯があった。
機械がサーブする無料のコーヒーで旨かった試しがないのでやめておいた。これは失敗だった。チェックアウトの前に飲んでみたら柔らかい口当たりのなかなか旨いコーヒーなのだ。
翌朝、西の河原露天風呂から帰ってロビーで一服しながら新聞を広げていると、大旦那がまだ営業していない土産物ショップの奥に入るのを眼の片隅で捉えた。
しばらくすると、盆に載せたお茶を運んできてくれたのにはありがたすぎて恐縮してしまった。
露天風呂でたっぷり汗をかいたので、待ちにまった朝食はなんとも旨かった。
おかずが多すぎて、しかもどの皿もひと手間かけてあり、すこぶるご飯がすすみ大盛二杯平らげてしまった。
食休みをとり、九時を過ぎるのを待って大浴場へ行く。そろそろ客もチェックアウトの準備態勢にはいっているはずだから空いているはずだ。
この宿では午後十時に男女の風呂が入れ替わる。
昨日の夜、三回目に入った内湯である。
強烈な熱さで、たっぷり掛け湯をして身を沈めたのだが、表面の湯が半端でなく高い湯温である。
内湯を飛び出し、広い露天風呂にはいると、こちらは適温であった。
一泊だが、充分にリラックスできた。
それに、やっぱり老舗の宿は居心地がいい。客のもてなしが、押しつけがましいところがなく、実にさりげない。そうだ、ポットを電気ポットに変えてくれれば嬉しいのだが。
でも、チェックアウトして次の目的地で車を降りたとき、靴が綺麗に磨かれていることに遅ればせながらやっと気づいて、かなり感動してしまった。チェックインするまえに牧場に寄ってドロドロに汚れていたはずだったのだ。電気ポットなどどうでもいい。なんとももの凄く親切な宿である。
次回は湯畑の湯を引いた宿と決めたが、ぜひともまた来たい宿だ。
草津温泉、年に一度くらいはその実感を確かめに訪れたい。
まさに<草津よいとこ>、年に<一度はおいで>である。
→「草津よいとこ(1)」の記事はこちら
→「続・西の河原露天風呂」の記事はこちら
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