温泉クンの旅日記

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肘折温泉(1) 山形・最上郡

2010-04-18 | 温泉エッセイ
   <肘折温泉(1)>


 夕食を食べ終わると、共同浴場にいってみることにした。
 ここの温泉は、湯治を目的に訪れるひとが多いので、たいていの宿は内風呂は狭い。わたしの宿も同じで二、三人ぐらいでいっぱいの浴槽である。



 二度目の宿泊なので共同浴場が広いと知っている。
 フロントで共同浴場の入浴券をもらい、下駄をはいて川沿いの道にでる。


 
 どうやら雨も熄んだようだ。
 目の前の川の、ちょうど宿の前あたりが川底に段があって、流れ落ちる水音とどしゃぶりの雨音が区別しにくいのだ。
 宿の横の駐車場を抜け、路地を通って温泉街のメインストリートに向かう。

 山形から新庄に向かう国道から、右に折れて走れば銀山温泉、左に折れて走れば肘折(ひじおり)温泉というような、おおざっぱに言えば対照的な位置関係だ。銀山へ行くよりは走りでがある。
 
 山の底にある肘折カルデラと呼ばれる狭い窪地に、ひっそり貼りついたように旅館や住宅が立ち並ぶ。
 開湯は平安時代と古く、湯治場で栄えたので炊事場を持つ旅館が多い。
 鄙びた雰囲気の、なんとも趣のある温泉だ。この地は有数の豪雪地帯で、冬には積雪は四メートルを超すという。
 旅館を縫うメインストリートは、路地といっていいほどとにかく非常に狭い。ぎりぎり乗用車が二台の幅だが、トラックもくるのである。そうなると乗用車はすれ違えるスペースがあるところまでバックしなければならないのだ。

 この狭い温泉街の道を通りぬけると橋にでるのだが、そこがまた狭い。車二台は通れないので、先行したほうが優先となるが、ここも相手がトラックのときはそうはいかない。
わたしもこの橋をいったん通って、川沿いに引き返し次の橋を渡って温泉街にもどり、宿の駐車場に辿り着いたのだ。

 どの旅館も夕食時であるので、歩いているひともほかにいない。
 早めの夕食にして終るとすぐに温泉にいく・・・ほかの客は食事か宴会中なのでたいてい貸し切り状態ではいれる。これはわたしの得意技のひとつだが、身体には悪いのでお勧めできない。



 薄暗い温泉街を歩いていると、旅館のあちこちの軒に提灯のようなものがぶらさげられていた。



 よくよく近寄ってみると、五所川原の立佞武多の館でみた「佞武多(ねぷた」」のようである。



 素朴な作りなのだが、とても夜に暗さに映えて美しい。


 
 狭い通りは、郵便局のところからクランクのように折れ曲がっている。
 洒落た玄関の宿があるが、夜だからだろうか。



 共同浴場「上ノ湯」。



 こちらも運よく誰もいないので、貸し切り状態ではいれた。



 広くて深めな、身体をのびのびと思い切り伸ばせる浴槽だ。宿の泉質とは違うが、熱めの誠にいい湯である。
 女湯のほうは何人かはいってるようで、話し声が聞こえてくる。

 
 広い風呂にひとりのんびり漬かっていると解放され、身体に残っている小さなこわばりが溶け出してきてとても気分がいい。
 さきほどみた、昔の赤い陶器製の郵便ポストが前に置いてある郵便局は、いまはギャラリーとして使われているようだ。
 誰かがきたらそれを汐に出て、水分を補給したら、寄って見物してから宿に帰ろう。

  - 続く -


  →「銀山をぶらり」の記事はこちら
  →「立佞武多の館」の記事はこちら


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