温泉クンの旅日記

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天ケ瀬温泉(1) 大分・日田

2012-03-04 | 温泉エッセイ
  <天ケ瀬温泉(1)>

 久大本線の天ヶ瀬駅。



 一日の平均乗車人員は二百人に満たない小駅だが、特急「ゆふ」、「ゆふいんの森」の停車駅である。
 下車すれば、すぐに天ケ瀬の温泉街が始まる。

 天ヶ瀬(あまがせ)温泉は由布院温泉、別府温泉とともに、豊後大分の三大温泉のうちの一つという。
 筑豊の炭鉱が賑わっていたころには、歓楽地のような賑わいだったという。
 だが別府、由布院のような活気は、今はない。



 玖珠川沿いに十軒あまりの宿が犇めく、鄙びた温泉である。



 開湯だが、「豊後風土記」によると飛鳥時代、678年の大地震で山が裂け、峡が崩れ落ちて、温泉があちこちから出たという。また「豊西説話」によれば、元禄11年(1698年)に天ケ瀬の湯が一夜の間に湧き出たそうである。
 どちらにしても歴史は古いようだ。かつては、河川敷を掘ればどこでも温泉が湧いたらしい。



 専用の吊り橋を渡ったところに、今夜の宿があった。

 部屋に案内されると、さっそく浴衣に着替えて露天風呂に向かった。
 (しめしめ・・・)
 早いチェックインだったので、先客は誰もいない。



 この天ケ瀬温泉、わたしは初めてではなく、とても厭な記憶がある。
 宿をはっきり覚えていないのだが、一度日帰り入浴をしたのだ。
 自慢の露天風呂に入っていると、湯口のあるほうから白い泡の塊がぷかぷかと流れてきた。なんだろう、と思って掬ってみると、ぬるぬるとして、洗剤のきつい匂いがする。
 きっと、露天風呂を清掃したあとで完全に洗剤を洗い流さなかったのだろう。
 こういう甘い仕事をする宿は、なかなかお目にかかれない。
 洗剤まみれになってしまったわたしは舌うちして、内風呂に移り身体をごしごしと清めたのである。

(さすがにここの宿の露天風呂はだいじょうぶだな)



 単純温泉だが硫黄泉らしい、いい匂いに包まれる。

 ついでに、もうひとつの露天風呂にもいってみる。
 こちらは時間で男女が入れ替わる。





 すべての浴槽で温泉を楽しむと、ありがたいことにようやくこの温泉の厭な記憶は消え去った。



 温泉町が夕暮れてきた。


  ― 続く ―


  →「日田・豆田町界隈」の記事はこちら

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