ニョニョのひとりごと

バイリンガルで詩とコラムを綴っています

ウリナラの絵本 「こいぬの うんち」 日本語版

2013-08-15 09:14:19 | 詩・コラム

 私が今まで読んだ世界中の絵本の中で、 一番感動した絵本です。 権正生先生の原文が素晴らしい! 

 権先生の生き様がそのまま絵本になっています。ひらがなで打ちましたので、小さなお子さんにも読ませてくださいね。




      「こいぬの うんち」日本語版





トリの いえの しろが、うんちを しました。
いしがきの すみっこに。
しろは ちいさな こいぬだから、
こいぬの うんちです。





すずめが いちわ とんできて、
こいぬの うんちを ちょんちょんと つつきました。
「うんち! うんち! アイゴー きったねぇ┅┅」
すずめは そういって、どこかへ とんで いきました。


「なんだって! ぼくは うんちだって?
ぼくは きたないんだって?」
こいぬの うんちは、はらがたつやら かなしやらで、
とうとう なきだしました。





それを みていた つちくれが、
うわめづかいに にやっと わらいました。
「どうして わらうんだよう?」
こいぬの うんちは、くってかかりました。
「じゃあ、うんちを うんちと いわないで、なんというんだよ。
おまえは うんちの なかでも、いちばん きったねえ いぬぐそだぞっ!」


「うわーん!」
こいぬの うんちは、こえを はりあげて なきました。





それから しばらく たちました。
「うんちくん、おいらが わるかったよ。ごめんよ。
もう なくなよ、なっ」
つちくれが やさしく なだめるように いいました。
「┅┅」
「ほんとうは おまえより おいらのほうが ずるいし、
きたないかもしれない┅」
こいぬの うんちは、いつのまにか なきやんで、
つちくれの はなしに みみを かたむけていました。





「もともと おいらは、むこうの やまの だんだんばたけで、
こくもつや やさいを そだててたのさ。
なつには、むらさきや しろの じゃがいもの はなを さかせたり┅」
「それが どうして、ここに ころがっているの?」
こいぬの うんちが たずねました。





「おいら、とってもわるいことを したんだよ。きょねんの なつは、あめがちっとも ふらなくて、
ひどい ひでりつづきだったんだ。
おいら、そのとき とうがらしの あかんぼうを からしてしまったんだよ。」
「えっ! かわいそう」
「そのばちが あたったんだ。きのう、ここで おいらだけ にぐるまから こぼれおちたのさ。
ああ、おいら、もう はたけにも かえれないし、なかまにも あえないよ」
つちくれは かなしそうに つぶやきました。
そのときです。にぐるまが がたごと やってきて ぴたっと とまりました。





「ありゃりゃ!これは、うちの はたけの つちの ようじゃが?
おお、そうか そうか。
きのう、ここを とおったときに おとしちまったんだな。
よしよし、はたけに ちゃーんと もどしてやるからな」
にぐるまの おじさんは、
つちくれを いとおしそうに りょうてで ひろいあげました。





にぐるまが つちくれを のせて いってしまうと、
こいぬの うんちは ひとりぼっちに なりました。


「ぼくは きたない うんち。なんの やくにも たたないんだ。
ぼくは これから どうすれば いいんだろう?」
こいぬの うんちは、ひとり さびしく つぶやきました。





ふゆが すぎ、はるに なりました。 
にわとりの かあさんが、ひよこを 12わ つれてやってきて、
こいぬの うんちを じろじろ みながら いいました。
「どうみても たべものでは なさそうね。なにかの かすのようだわ」
かあさんどりは、ひよこたちを つれて、
くびを ふりふり いってしまいました。





あめが しとしと ふってきました。
こいぬの うんちの まえに、
みどりいろの めが、ぽつんと かおを だしました。
「きみ、だあれ?」
「わたしは きれいな はなを さかせる たんぽぽよ」


「どれぐらい、きれいなの? そらの おほしさまくらい、きれいなの?」
「そうよ。きらきら かがやくの」
「どうして そんなに きれいな はなを、さかせることが できるの?」
「それは そらから ふってくる あめと、
あたたかい たいようの ひかりの おかげよ」
「そうか┅、 そうなんだ┅ 」
こいぬの うんちは たんぽぽが うらやましくて ためいきが でました。





「それとね、もうひとつ ぜったい ひつようなものが あるの」
たんぽぽは そういって、こいぬの うんちを みつめました。
「┅┅ 」
「それはね、うんちくんが こやしに なってくれることなの」
「ぼくが こやしに なるって?」
「うんちくんが ぜーんぶ とけて、わたしの ちからに なってくれることなの。
そうして はじめて、わたしは おほしさまのような きれいな はなを さかせることが できるの」




「えっ! ほんと? ほんとに そうなの?」
こいぬの うんちは、うれしくて うれしくて、
うれしさの あまり、たんぽぽの めを りょうてで、 ぎゅっと だきしめました。





あめは みっかかん ふりつづきました。 
こいぬの うんちは、からだじゅう あめに うたれて どろどろに なりました┅。 
どろどろに とけて、つちの なかに しみこんだ こいぬの うんちは、たんぽぽの ねっこに あつまり、
くきを のぼり、つぼみを つけました。





そして、あたたかい はるの あるひ、
きれいな たんぽぽの はなが ひとつ、さきました。
はなの かおりが、
かぜに のって あたりに ただよいました。
やさしく ほほえむ たんぽぽの はなには、
こいぬの うんちの あいが、
いっぱい いっぱい つまっていました。(おわり)



 


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8 コメント

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Unknown (小川)
2013-08-15 11:37:53
ステキな絵本の紹介、ありがとうございます。孫に読んでやりたい。
返信する
Unknown (ニョニョ)
2013-08-15 11:39:04
はい、小川さん、世界中の子どもにも大人にも読んでいただきたい絵本です。心が洗われます。勇気が湧いてきます。
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いい絵本は大人も子供も魅かれる (中山 茂)
2013-08-15 12:29:42
素敵な、心が洗われる絵本ですね。
まだ孫娘には無理ですが、再来年あたり(4歳児)に読み聞かせようと思います。
いつごろ書かれたのでしょうか。
朝鮮の昔話?なのでしょうか。
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なかやまさんへ (ニョニョ)
2013-08-15 14:26:43
この絵本は権正生先生が書かれ、1969年童話として第1回キリスト教児童文学賞を受賞いたしました。以来権先生は、目立たないもの、弱いものに対する愛情と、明確な歴史認識に立った作品を多く書かれています。
絵本「こいぬの うんち」は1996年に子供たちのための絵本として新たに書き直されたものです。
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ステキな絵本ですね (スンミョン)
2013-08-15 18:34:47
良いステキな絵本だと思いました。 良いステキな絵本は、子どもだけでなく、大人が読んでも、楽しめ感動できますね!

多くの人々に読んで欲しい絵本です。
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スンミョンさんへ (ニョニョ)
2013-08-15 20:26:24
スンミョンさん、お盆休みをどう過ごされていますか?どうぞお元気に過ごされて下さいね。
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お盆休み (スンミョン)
2013-08-15 20:59:59
お盆休みは友人と会ったり、実家(京都市南区)に帰ってチェサしたり、映画を観たり、読書をしてます。
普段の仕事が体力的にしんどくて夏バテしてしまったのでゆっくり休みます。
まだしばらく猛暑日が続きますので、オンニョさんも体調には気をつけて下さい。
それにしても特に今年の夏は暑すぎますね。
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Unknown (ニョニョ)
2013-08-15 21:13:27
本当ですね。お互い健康には気をつけましょう。
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