私が今まで読んだ世界中の絵本の中で、 一番感動した絵本です。 権正生先生の原文が素晴らしい!
権先生の生き様がそのまま絵本になっています。ひらがなで打ちましたので、小さなお子さんにも読ませてくださいね。
「こいぬの うんち」日本語版
トリの いえの しろが、うんちを しました。
いしがきの すみっこに。
しろは ちいさな こいぬだから、
こいぬの うんちです。
すずめが いちわ とんできて、
こいぬの うんちを ちょんちょんと つつきました。
「うんち! うんち! アイゴー きったねぇ┅┅」
すずめは そういって、どこかへ とんで いきました。
「なんだって! ぼくは うんちだって?
ぼくは きたないんだって?」
こいぬの うんちは、はらがたつやら かなしやらで、
とうとう なきだしました。
それを みていた つちくれが、
うわめづかいに にやっと わらいました。
「どうして わらうんだよう?」
こいぬの うんちは、くってかかりました。
「じゃあ、うんちを うんちと いわないで、なんというんだよ。
おまえは うんちの なかでも、いちばん きったねえ いぬぐそだぞっ!」
「うわーん!」
こいぬの うんちは、こえを はりあげて なきました。
それから しばらく たちました。
「うんちくん、おいらが わるかったよ。ごめんよ。
もう なくなよ、なっ」
つちくれが やさしく なだめるように いいました。
「┅┅」
「ほんとうは おまえより おいらのほうが ずるいし、
きたないかもしれない┅」
こいぬの うんちは、いつのまにか なきやんで、
つちくれの はなしに みみを かたむけていました。
「もともと おいらは、むこうの やまの だんだんばたけで、
こくもつや やさいを そだててたのさ。
なつには、むらさきや しろの じゃがいもの はなを さかせたり┅」
「それが どうして、ここに ころがっているの?」
こいぬの うんちが たずねました。
「おいら、とってもわるいことを したんだよ。きょねんの なつは、あめがちっとも ふらなくて、
ひどい ひでりつづきだったんだ。
おいら、そのとき とうがらしの あかんぼうを からしてしまったんだよ。」
「えっ! かわいそう」
「そのばちが あたったんだ。きのう、ここで おいらだけ にぐるまから こぼれおちたのさ。
ああ、おいら、もう はたけにも かえれないし、なかまにも あえないよ」
つちくれは かなしそうに つぶやきました。
そのときです。にぐるまが がたごと やってきて ぴたっと とまりました。
「ありゃりゃ!これは、うちの はたけの つちの ようじゃが?
おお、そうか そうか。
きのう、ここを とおったときに おとしちまったんだな。
よしよし、はたけに ちゃーんと もどしてやるからな」
にぐるまの おじさんは、
つちくれを いとおしそうに りょうてで ひろいあげました。
にぐるまが つちくれを のせて いってしまうと、
こいぬの うんちは ひとりぼっちに なりました。
「ぼくは きたない うんち。なんの やくにも たたないんだ。
ぼくは これから どうすれば いいんだろう?」
こいぬの うんちは、ひとり さびしく つぶやきました。
ふゆが すぎ、はるに なりました。
にわとりの かあさんが、ひよこを 12わ つれてやってきて、
こいぬの うんちを じろじろ みながら いいました。
「どうみても たべものでは なさそうね。なにかの かすのようだわ」
かあさんどりは、ひよこたちを つれて、
くびを ふりふり いってしまいました。
あめが しとしと ふってきました。
こいぬの うんちの まえに、
みどりいろの めが、ぽつんと かおを だしました。
「きみ、だあれ?」
「わたしは きれいな はなを さかせる たんぽぽよ」
「どれぐらい、きれいなの? そらの おほしさまくらい、きれいなの?」
「そうよ。きらきら かがやくの」
「どうして そんなに きれいな はなを、さかせることが できるの?」
「それは そらから ふってくる あめと、
あたたかい たいようの ひかりの おかげよ」
「そうか┅、 そうなんだ┅ 」
こいぬの うんちは たんぽぽが うらやましくて ためいきが でました。
「それとね、もうひとつ ぜったい ひつようなものが あるの」
たんぽぽは そういって、こいぬの うんちを みつめました。
「┅┅ 」
「それはね、うんちくんが こやしに なってくれることなの」
「ぼくが こやしに なるって?」
「うんちくんが ぜーんぶ とけて、わたしの ちからに なってくれることなの。
そうして はじめて、わたしは おほしさまのような きれいな はなを さかせることが できるの」
「えっ! ほんと? ほんとに そうなの?」
こいぬの うんちは、うれしくて うれしくて、
うれしさの あまり、たんぽぽの めを りょうてで、 ぎゅっと だきしめました。
あめは みっかかん ふりつづきました。
こいぬの うんちは、からだじゅう あめに うたれて どろどろに なりました┅。
どろどろに とけて、つちの なかに しみこんだ こいぬの うんちは、たんぽぽの ねっこに あつまり、
くきを のぼり、つぼみを つけました。
そして、あたたかい はるの あるひ、
きれいな たんぽぽの はなが ひとつ、さきました。
はなの かおりが、
かぜに のって あたりに ただよいました。
やさしく ほほえむ たんぽぽの はなには、
こいぬの うんちの あいが、
いっぱい いっぱい つまっていました。(おわり)