誰もが「景気が良くなればいい」と願っておることでありましょうが、この「景気が良い」という言葉の意味は、政府・日銀が使っている場合と、我々庶民が使っている場合では定義が異なるようです。
政府・日銀の「景気が良い」の定義は「国民や企業が借金をしてでもいいから不要なものでもいいから、皆モノを買いに殺到する状態」です。「買いたくて買いたくて、モノがどんどん値上がりする状態」です。ニュースで経済のプロが難しい横文字を並べて解説しますが、突き詰めると「国民や企業が借金してでもモノを買え」という政策の解説です。
一昔みたいに、日本でも皆物欲が旺盛でありましたら、通貨量や金利をコントロールすることで、国民や企業の「モノを買う」量を制御できたでしょうが、今はもう多くの日本の国民の物欲そのものが薄れ始めております。なかなか日銀の思惑どおりにインフレが進まないのもそれが一番の原因であろうと思います。通貨量や金利の政策では、薄れ始めた物欲を再燃させることは難しいことでしょう。
きっともう国民の物欲を煽るという経済政策は時代遅れになる時代に入っているのかもしれません。
そしてただでさえ国民の物欲が薄くなり始めているところに、景気の足を引っ張っているのが財務省というお役所であります。
片や、政府と日銀は「国民の消費を煽れ」と政策しているのに対し、財務省は「消費すれば罰金な」という政策を推し進めているからです。
そうそれは「消費税」という名前の「罰金制度」であります。モノを買えば買った金額に応じて罰金を支払ってもらうよ。という制度でありますから、消費が落ち込むのは当然であります。
だからもし本当に国民の消費を煽るのであれば、正反対の制度を導入すればいいのです。買えば買うほど奨励金が政府から出せばと良いのです。消費税は全廃して、100万円のモノを買うと8万円の報奨金を年末調整で支払います。そうするだけで消費がグンと上がるでしょう。国民の物欲は薄れつつはありますが、そういう報奨金制度であればまだまだ消費が伸びる余地があります。「景気」とは「人々の気持ちの総和」でありますから。そういう報奨金制度という目新しさで人々の消費は上がることでしょう。日銀は毎年80兆円刷って国債という借金を作るぐらいなら、消費税ではなく消費報奨金としてバラ撒いた方が、彼らの言う「景気」には意味があることでしょう。
ではなぜこんな素晴らしいアイデアが実現されないかというと、それは財務省が強行に反対するからです。なぜか。それは財務省は「税金を確保する」というのが最大の存在目的であるからです。景気という水ものに左右されることなく、確実に税収を確保しなければならないという最大命題を持つからです。
一般企業だと売り上げを増やすことが存続のために一番重要な事と言えます。そして官僚機構にとっての売り上げとは「税金」でありますから、とにかく「税金を確保する」ことが官僚機構にとって一番重要なことであるわけです。特に財務省は官僚中の官僚。頭の良い人達のうち、更に頭の良い人達が選ばれて集められた組織ですから、とにかくどうやって国民から税金をとるか、にもう百年以上心血を注いだ伝統を持つ日本最高のエリート組織です。
この財務省官僚からすると、正直「景気の良し悪し」は本音は関係ないことでしょう。景気が良くなれば法人税や所得税の税収があがる可能性が高いから、その意味では「良い景気」は賛成しますが、あくまで税収があがる要素の一つとしてです。
もし
「景気が向上するが、税収は下がる」
「景気が悪化するが、税収は上がる」
二つの選択肢があるとするならば、間違いなく財務省は後者を選択することでしょう。財務省とはそういう組織であり、消費税とはそういう制度なのです。国民の購買意欲を低減させて、景気を後退させてでも税収を確保する。という制度です。
想像ですが、財務省官僚の本音を言えば、消費税は多ければ多いほどいいことでしょう。8%、10%なんて甘い甘い。20%、50%でも足りないぐらいです。100%あったってまだまだ足りない。そのように彼らの「税収」の欲にはキリがなく暴走するかもしれません。彼らの組織の目的が「税金の確保」であるからです。人間の「足りない足りない」欲望にはゴールはありませんし、優秀な官僚ほど、全体目的ではなく、近視眼的な目的に目標を見失う罠があるからです。
話はずれますが、先の大戦で日本が戦争に向かって暴走した理由の一つが、官僚機構にあると私は思うのです。国全体の利益より、官僚組織の目的が最優先されてしまったことが、戦争の暴走を止めることができませんでした。
先日のNHKスペシャルでもありましたが、一度満州への開拓団を送り込むという入植者の数値目標が決まってしまうと、もう戦争が不利になって関東軍が撤退を始めだしても、官僚組織はひたすら日本人農民を満州に送り込むことを止められませんでした。そして送り込まれた多くの日本人が、特に老人、女性、子供たちなどの凄惨な最期を迎えたのでした。しかし驚くべきことに、そのような悲惨な事件に対して当の官僚組織だった人たちは、終戦後もほとんど罪悪感を抱いていないということが驚きでありました。自分たちの政策は正しかったと述懐していたのでした。
官僚組織には良い利点もたくさんあります。本当に優秀な方々は大変な労力で「日本のために」と働いておられるのは事実です。しかし国という全体ではなく、自分の官僚組織の命じられた目的のみの実行という近視眼的な努力にのめりこむ危険性はいつもどこにもあるように思います。そして官僚機構では一度決定されたことはなかなか覆(くつがえ)せません。
そして同じように財務省が、国民の生活よりも、自分たちの目的である「税金を確保する」ことに全ての精力を注ぎ込んでいることは、優秀な官僚ほど陥りやすい罠であるように思えてなりません。
本来は、国民の生活を豊かにサポートするための「公共サービス維持のための税収」であるはずが、国民の生活よりも与えられた「税収を少しでも多く安定的に確保する」に入れ替わっています。
つづく

※本日は新月週間ですね。
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