あけぼの

アート、文化、健康、国際・教育、音楽、食・レシピ、日記、エッセイ、旅行記、学問

地雷博物館のアキ・ラーさん

2008-08-26 08:26:31 | ブログ

地雷博物館長のアキ・ラーさんの過去は悲惨だった。父も母もクメール・ルージュに殺害され、「動物や虫などを食べ、クメール・ルージュに育てられ、苦難、飢餓や銃は日常茶飯」(自伝より)という状況の中で少年期を過ごし、後にベトナム軍に加わったが食糧不足は同様で米を炊く水が無く「ビニール袋に放尿して米をふやかしたことが度々あった」(自伝より)そうだ。クメール・ルージュとベトナム軍で地雷をばらまき、設置させられ、日中に偵察、深夜には地雷の発射方向を変える、という日々が続いた。その後またカンボジア軍へ徴兵されたりと、様々な軍へ所属は変わったものの、武器や地雷に囲まれ死と隣りあわせて成長していったアキ・ラーさんだった。後に国連に協力して働いたり観光ガイドをしたりして、ようやく九年前シエム・リアップに土地を求め、小さな博物館を設立した。現在は三五歳ぐらい、毎日近くの野原に行っては地雷を探して撤去し、この博物館に追加展示している。いつも人々に役立ちたいと願い、危険を冒して暮らしているのだ。

アンコール・ワット周辺は一〇年ほど前やっと安全になったというが、カンボジアには地雷や不発弾などの恐怖と隣り合わせで暮らしている人が今でも少なからずいることを忘れてはならない。世界各地に埋まっているすべての地雷を撤去するにはまだ五〇年から一〇〇年もかかるという。この地球上には地雷を含む非人道的な兵器の数々がある。命より大切なものは何もない。筆者も身の回りに存在する非人道へ眼を向け、及ばずながら身を粉にしなければならない、との思いがこみ上げる。(カンボジア完)彩の渦輪


人工美と自然美の挑戦、タ・プローム

2008-08-25 17:34:09 | ブログ

王宮周辺の遺跡群中、かつてないほど興奮し、心を奪われたのはアンコール・トムの東部にあるタ・プロームだ。英仏合作映画「Two Brothers」はここで撮影されたそうだ。二頭の虎の兄弟が離れ離れになり、対戦させられる運命となり、手に汗握る映画だった記憶があるが、これを見た人は木の根が石造遺跡に絡みついている異様な光景に驚いただろう。よくぞここをロケ地に選んだと思える、いかにもその映画の舞台に相応しい幻想的な遺跡だ。人工美と自然美との挑戦が眼前に展開している。寺院の建物にも塀にも巨大な樹木の根がまたがり、覆い被さり、網をかぶせている。巨大な根っこは遺跡に食い込む怪鳥の爪にも、塀の上にとぐろを巻いた大蛇にも、塔に垂れ下がる長尾鶏の尾にも見える。入口を塞がれそうになってもなるに任せてあるが、自然の脅威を見せつけることも目的なのだろうか。根の意志を尊重していることに共鳴を覚え、深い感動で寡黙となり、宗教心さえ呼び覚まされる。映画で見た白い虎と重ね合わせ、記憶のスクリーンに生涯刻まれる光景だ。(続く)彩の渦輪


観光と地雷の国カンボジア そのI

2008-08-25 13:43:39 | アート・文化

二〇年もの長きにわたり内戦が続き、実に多くの命が失われたカンボジア。一〇年ほど前ポル・ポトの死亡が確認され内戦が終了、やっと平和が訪れた。だがカンボジアには過去の遺物である未撤去地雷(600万と推定される)の近くで今も暮らしている人が少なくない。名立たる世界遺産、アンコール・ワットやアンコール・トム、周辺の遺跡群のどこに行っても上半身だけの地雷被害者が明るい笑顔で楽器を演奏している。

 アンコール・ワットはヒンドゥーの美、中央神殿への長い参道は開放感があり期待感で胸が満ちる。だが期待が大き過ぎたのだろうか、建造物にはインドで見たヒンドゥーの寺々ほどの感動がなかった。中央祠堂周辺のデバターと呼ばれる壁面彫刻の美女たちに見惚れるばかりだった。他方のアンコール・トム(大きい街)は仏教の美、勝利の門や死者の門等、五つの門に囲まれた遺跡群の中央にはバイヨン寺院があり、観世音菩薩の巨大な四面仏が優しく妖しい微笑を浮かべ、見飽きることがなかった。(続く)彩の渦輪


ああ情けなや、突然のPC 事故

2008-08-24 09:23:04 | ブログ

一週間ほど前突然にPCが立ち上がらなくなりメーカーの富士通に電話した。カスタマー・サポートの電話指導でスイッチを入れた直後にF2KeyF12Keyを連打し、「ハード・ドライブの故障を確認した」と宣言され、続いて「保証期間が3か月過ぎたので何もできない、部品もない」との一点張りだった。PC は買い変えればいいが、過去6年分のデータ全てを一挙に失ったのだ。大量のエッセイ、本の在庫表等の数字的データ、研究発表のパワー・ポイント、過去の講演の内容やアウトライン、6年分のメール送受信記録とEmailアドレス全て、エトセトラ…。リカヴァーするサルヴェージ会社を紹介されたが10万円かそれ以上かかり、しかも成功の保証はないという。友人の何人かは「過去6年間のデータと言っても今必要なものは多くはないのだからさっぱりと諦めてその費用で新しいPCを買ったほうが賢明だ」と言う。本当に打撃的な事故かどうかまだ確証がない状態だが必要のため新しいPC は既に買ったので受信はできる。送信してくださったお方と年賀状にE-Addressが印刷してあったお方だけしか送信できない。サルヴェージに出すかどうかは未定。火事にあったと思って諦めるか!(彩の渦輪)


川柳作家、鶴彬

2008-08-06 21:45:14 | ブログ

  川柳作家、鶴彬(つるあきら)のことが数日前の朝日新聞、天声人語に載っていた。その生涯が映画化されるという。「世にはびこる『非人間性』へ怒りを燃やし」、「娘の身売り、帰還兵等、軍部などを批判する川柳を次々と作り、特高に捕まって勾留されたまま死んだ」とある。1938年(私の誕生年)に亡くなったということは、没後年数は常に私の年齢と等しい。私も非人間性には常に怒りを感じるが、その感情を行動に表わし得ていない。フィリピンやカンボジアの子どもたちがゴミの山に入って埃にむせながら必死で僅かな活用品を探し出している姿に涙する。南アジアの諸国では身売り同然で親元を離れた子どもたちによるチャイルド・レーバーで安く衣料が仕上がる。国内においても国際的にも格差社会への道を急いでいるが、特にいたいけな子どもが苦しんでいる姿は見るに忍びない。鶴さんがなくなった年に生まれた私なら、社会の弱い部分にいる人たち、特に子どもたちが少しでも幸せになれるような活動に身を投じるよう、余生の人生設計をしなければならない。アメリカ生活はあと一年、その後の人生の設計図に様々なプランを塗り始めている。(彩の渦輪)