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私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




The Division Flute
Traut Records HS207
演奏:花岡和生(ヴォイス・フルート)、金子浩(リュート)、福沢宏(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

17世紀から18世紀初めにかけてのイギリスでは、貴族に限らず、市民階級の間でも、自ら楽器を演奏する、アマチュア音楽家が隆盛を極めていた。そのようなアマチュアを対象として、様々な曲集が出版されていた。その中の一つに、1684年にJ. プレイフォードによって刊行されたThe Division Violinがあった。ディヴィジョンは、もともとヴァイオリン奏者の技巧を誇示する曲として1660年代に出来た変奏曲の様式である。この曲集は、拡大、改訂を重ね、1730年まで版を重ねていた。
 アマチュアのリコーダー愛好者が増大していることに目を付けたJ. ウォルシュは1706年に最初の曲集、続いて1708年に第2集を相次いで出版した。その曲集の名称がThe Division Fluteである。当時「フルート」は、リコーダーを意味していた。中でもfアルト・リコーダーは、コモン・フルート(common flute)と呼ばれ、最も代表的なリコーダーであった。このThe Division Recorderは、主にThe Division Violinに収められた曲を、Fアルト・リコーダーで演奏できるよう移調して収めた曲集である。収録されている曲には様々な様式のものがあり、イギリスの民謡の旋律に基づくものや、イタリアやフランスの様式に由来するものもある。
 このディヴィジョン・フルートの個々の曲は、いろいろなリーコーダー曲のCDに収められているが、この曲集からの作品だけで1枚のCDになっているものはほとんど無い。
 ここで紹介するトラウト・レコードの花岡和生の演奏によるCDはその希なものの一つである。標題にもかかわらず、収録曲にはThe Division Fluteからの曲だけでなく、他の当時の曲集からの曲も含まれている。また、またもとになったThe Division Violinも参照している。
 演奏は、ほどよいテンポで堅実なものだが、筆者が気にかかるのは、fアルト(トレブル)・リコーダーではなく、ヴォイス・フルートという単3度低い楽器を使用している点である。これは奏者の高音楽器を好まないという嗜好に基づくもののようである。ソプラノ・リコーダーのための曲集、ファン・エイクの「笛の楽園」のCD(Traut RECORDS H4702)でも、ソプラノ・リコーダーは一切使わず、gアルト、fアルト、cテノール・リコーダーを使用していることからもその傾向が読み取れる。ディヴィジョン・リコーダーがfアルト・リコーダーのための曲集であるからといって、他の楽器を使ってはいけないというわけではないが、筆者としては、やはりfアルト・リコーダーによる演奏で聴きたいのだが・・・。

発売元:トラウト・レコード

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ドイツ語やフランス語の文字が文字化けする問題について
この「私的CD評」では、ドイツ人やフランス人の名前、それにそれらの国の作品や文書をそれぞれの国の言語で用いられているウムラウトやアクセント付きの文字を用い表記しています。これらの特殊文字は、HTMLの文字コードを用いなければ正しく表示されないため、これを用いて記述していますが、最近「私的CD評」をよく読んでくださっている方から、それらの特殊文字が正しく表示されないという事を知らせていただきました。この事に関してその方と何度か意見を交換した結果、Windowsの各ヴァージョン、Mac OSいずれに於いても、その純正のブラウザー、Internet Explorer 7やSafari Version 4では特殊文字が正しく表示されませんが、Mozilla Firefox 3.5.3を用いれば、Windows環境下でも、Mac OS環境下でも、問題なく表示されることが確認されました。この「私的CD評」をご覧いただいている方で、ドイツ語やフランス語の表示に文字化けが発生しておられる方は、Mozilla Firefoxのサイトで、無償でダウンロード出来ますので、一度お試しになることをおすすめします。

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