私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




The Delightful Companion
RECERCAR RIC 220
演奏:フレデリク・デュ・ロース(リコーダー)、伴奏:ラ・パストレッラ

16世紀の終わりから17世紀初めにかけてのイギリスで、次々に出版されたアマチュアのためのリコーダー曲集の一つに、1686年にジョン・プレイフォードとジョン・カーの店で販売するために出版された”The Delightful Companion or Choice New Lessons for the Recorder or Flute...”(楽しい仲間:リコーダーのための選りすぐりの新しい練習曲集)という曲集があった。CDの標題は、この曲集から取られたのだが、収録されている曲は、様々な曲集から取られている。当時の曲集の中には、通奏低音の伴奏が含まれておらず、リコーダー・ソロあるいは2本、3本のリコーダーのためのものが多数あるが、これは必ずしも通奏低音の伴奏を排除するものではなかったと考えられている。このCDに収められている15曲の中で、リコーダー・ソロのものは3曲だけで、他は様々な通奏低音楽器、リュート、テオルボ、ギター、チェンバロとチェロなど、あるいは最小編成の弦楽合奏の伴奏付きである。これらの曲は、サンマルティーニの協奏曲を除いて、全て出版譜から取られており、協奏曲を含め、基本的にアマチュアのための作品であったと思われる。
 このCDでリコーダー奏者のフレデリク・デュ・ロースは、様々なリコーダーを使用している。添付の解説書によると、曲の起源が17世紀の中頃まで遡ると思われる曲、”Johney Cock thy Beavor”や”Greensleeves to a Groud”には、初期バロック・タイプの、ルネサンス・タイプの円筒形内径のものと、後期バロック・タイプの先が狭くなる円錐形の内径のものとの中間のリコーダーを使用している。後期バロック・タイプのリコーダーでも、fアルトのためと思われる曲に対して、ヴォイス・フルートやソプラニーノ(flautino)、b(fourth flute)、バス・リコーダーを採用し、4曲あるコンチェルトには、c(fifth flute = ソプラノ)、d(sixth flute)のリコーダーを使用している。これには、当時の演奏、楽器の使い方に対する解釈が関係しているようだ。添付の小冊子の解説によると、当時の多くのアマチュア向けの曲集が、コモン・フルートすなわちfアルト・リコーダーのためのものであった一方で、fourth(b)、fifth(c)、sixth(d)その他のリコーダーがかなり残されていることから、当時はリコーダーを移調楽器と考え、fアルトのための曲を、fアルトの指使いで、他の様々な種類のリコーダーを演奏したのではないかと言うのである。
 確かに当時のリコーダーには、上記のようなリコーダーの他にも、ルネサンスからあったgアルトやわずかながらesアルトもあったようで、これら多種のリコーダーをそれぞれの指使いを習得して演奏し分けるというのは、少なくともアマチュア奏者には難しかったのではないかと思える。
 使用しているリコーダーは全て、現代の製作者による復元楽器で、初期バロックの”Handfluyt”とgアルトは、ドイツのシュテファン・ブレツィンガーが17世紀中頃のリコーダーをもとに独自に開発したもの、他の後期バロック・タイプの楽器は、ベルギーのセバスティアン・ルメール、アメリカのフリートリヒ・フォン・ヒューネ、それにニュージーランドのアレク・ロレットの製作になる。
 15曲中6曲は、ディヴィジョン・フルートにも含まれる曲だが、そのほかの曲も含めて、変化に富んだ編成の演奏で、当時のアマチュアの音楽生活を垣間見ることの出来る、
楽しいCDである。

発売元:RICERCAR

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