Quantz: Flute Sonatas. Premier recordings
Chandos: Chaconne CHAN 0607
演奏:Rachel Brown (Flute/Flute d’amour), Mark Caudle (Cello), James Johnstone (Harpsichord)
ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(Johann Joachim Quantz, 1697 - 1773)は、1716年にドレースデンの町庸楽士になり、2年後にはポーランド国王アウグストII世の宮廷のオーボエ奏者となって、しばしばポーランドに行ったが、その間にヴィーンでツェレンカやフックスに学び、イタリア各地やイギリスを旅し、その後ドレースデンでフランス人のフルート奏者ピエール=ガブリエル・ビュッファルダンにフラウト・トラヴェルソの教えを受け、1728年にザクセン選帝候の宮廷フルート奏者に任命された。その頃にプロイセンのフリートリヒ王子と会い、彼が国王に就任した後の1741年に宮廷楽士、作曲家として招かれた。ベルリンとポツダムの宮殿では、毎日国王にフルートを教え、宮廷楽団を指揮した。
クヴァンツは生涯に200曲以上のフルート・ソナタ、300曲以上のフルート協奏曲などを作曲した。また、1752年には、「フルート教程(Versuch einer Anweisung die Flöte traversière zu spielen)」を出版した。
ここで紹介するCDには、この膨大な数のフルート・ソナタの中から、2曲のフルートとチェンバロのためのソナタと5曲のフルートと通奏低音のためのソナタ及びフルート・ダ・モールと通奏低音のためのメヌエットが収録されている。その様式は、バロック時代から初期古典派への移行期に当たる時代を反映している。この中で特に、フルートとチェンバロのためのソナタ変ホ長調は、バッハのフルートとチェンバロのためのソナタ変ホ長調(BWV 1031)と様式が非常によく似ている。16分音符の速いチェンバロの序奏に続きフルートが新しい主題で加わるところ、第2楽章のシチリアーノ風なところなど、いずれかが他方を知った上で作曲されたのではないかと思えるほどである。
フラウト・トラヴェルソを演奏をしているレイチェル・ブラウンは,現在イギリスの数々のオリジナル楽器演奏団体でフルート奏者として活躍している。彼女が演奏しているフラウト・トラヴェルソは、クヴァンツが開発したとされている、Esキーの他にDisキーを備えた楽器で、デナー製のフルート・ダ・モールとともにインスブルックのルドルフ・トゥッツによる複製である。このクヴァンツが考案したフラウト・トラヴェルソについては、このブログの
「バッハのフルートのための作品 ー 真作か否かを巡る論議(その3)」 で詳しく触れているので参照されたい。バロック・チェロのマーク・コードルとチェンバロのジェームス・ジョンストンもイギリスで活躍しているオリジナル楽器奏者である。このCDによって、クヴァンツの作品の全貌が分かるわけではないことは当然であるが、18世紀中頃の器楽曲の一端を垣間見ることの出来るCDといえるだろう。
発売元:シャンドス
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今回紹介されているCDでトラヴェルソを吹いているレイチェル・ブラウンですが、hyperionでもブランデンブルク・コンソートとともにクヴァンツの作品を録音してますね。かなりの作品をかいているので、結構CDが出ていてもよさそうなのですが、あまり見かけないですね。hyperion盤以外に、ナクソスからも出ています(8.555064)。ここでもクヴァンツ・モデルのトラヴェルソを使っています。ナクソスも探すとこういう掘り出し物がありますね。案外重宝しています。
クヴァンツはバロックから古典派への移行期に重なるはずですが、ずっと通奏低音を使っていますし、ある意味バロックの最後を飾った感じがします
クヴァンツの作品の録音が少ないのは、多数の作品があるとはいえ、個性に乏しく、どれを取りあげればいいのか、選択が難しいのかも知れません。
イギリスのフラウト・トラベルソのオリジナル楽器奏者といえば、少し前までリサ・ベズノシウク(読み方が難しい!)しか居ませんでしたが、ようやく選択の余地が出てきたみたいですね。