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私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Franz Schubert: Symphony No. 9 (!) “Great” D944 (D849)
Virgin 7243 5 61245 2 3
演奏:Orchestra of the Age of Enlightenment, Sir Charles Mackerras

フランツ・シューベルト(Franz Peter Schubert, 1797 - 1828)といえば、先ず「冬の旅」や「美しき水車小屋の娘」などのリート(歌曲)作品が思い浮かぶが、室内楽やピアノ曲、そして交響曲の作曲家としても高く評価されている。事実、彼はベートーフェンと並んでロマン主義時代を築いた作曲家と考えられている。シューベルトはオペラ、ジングシュピール、音楽劇も多数作曲しているが、音楽劇「ロザムンデ」のための曲が組曲として演奏される以外は、殆ど忘れ去られている。交響曲に関しては、構想や断片として残っているものを除くと8曲有る。その内第1番から第6番までは、青年期、21才までに作曲された。後の2曲については、その番号が変更されていて、混乱を招いている。1978年に刊行されたドイッチュ作品目録*において交響曲第7番となったいわゆる「未完成交響曲」は、以前は第8番とされ、今日でもまだこの番号が使われる場合がある。一方、今回取り上げる交響曲、最初は第7番、その後第9番とされていた「大交響曲(Große Sinfonie)」は、現在第8番とされている。この曲も依然として第9番と記されることが多い。
 交響曲第8番ハ長調(D944)は、「未完成交響曲」同様、シューベルトの死後発見された作品である。この交響曲の自筆譜の表紙には1828年と記されているが、今日の研究では、1825年に作曲されたものと考えられている。シューベルトは1828年に、ヴィーンの楽友協会に於いて演奏するよう運動し、その際作曲年を修正したが、結局その演奏は実現しなかった。1839年になって、ロベルト・シューマンがこの作品の総譜を発見し、直ちにその価値を認め、メンデルスゾーンに働きかけ、1839年3月21日のライプツィヒ・ゲヴァントハウスの演奏会で、メンデルスゾーンの指揮によって初演されることとなった。しかしこの交響曲は、すぐには評価されず、一般に知られるようになるまでには、長い時間が掛かった。1849年になってようやく出版され、この時点ではまだ「未完成交響曲」が発見されていなかったため、第7番とされた。「未完成交響曲」が発見された後に、交響曲ホ長調(D729)の断片が第7番とされ、「未完成交響曲」が第8番、そしてハ長調の「大交響曲」が第9番とされた。1978年のドイッチュ作品目録によって、最終的に交響曲第8番とされた**。もともと「大交響曲」と言う名は、もう1曲のハ長調の交響曲第6番(D589)と区別するために用いられたもののようである。シューマンによって発見された後も、演奏が困難で長すぎるという批判がつきまとっていたようだ。シューマンが「音楽と音楽家」の中で、この曲のことを「天国的に長い」と記したことが知られているが、これはシューマンにとっては批判ではなく、賛美する言葉であった。確かにこの交響曲は、あまり長さに違いのない4つの楽章からなり、演奏時間はおよそ1時間を要する。しかしどの楽章も、決して冗長ではない。
 今回紹介するのは、サー・チャールス・マッケラス指揮、オーケストラ・オヴ・ジ・エイジ・オヴ・エンライトゥンメント(以下OAE、直訳すると「啓蒙時代のオーケストラ」)による演奏のヴァージン・レーベルのCDである。OAEは、1986年にロンドンのオリジナル楽器の演奏家達によって設立された。特定の常任指揮者を持たない団員達の自主運営の団体である。そのメンバーは、同じくロンドンを拠点としている他のオリジナル楽器編成のオーケストラの演奏にも加わっている。アカデミー・オヴ・エインシェント・ミュージックやイングリッシュ・コンサート、ザ・イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークなどの演奏によるCDの解説書を見ると、団員のリストの中に、このOAEのメンバーの多くが名を連ねていることが分かる。1997年には、ロジャー・ノリントン指揮のロンドン・クラシカル・プレイヤーズが、OAEに合流した。OAEは、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールに属している。バロック時代の小編成の作品では、指揮者なしで演奏する場合が多いが、声楽を含む作品や、古典派、ロマン派の作品では、指揮者を置くことが多い。上述のように、常任指揮者はいないが、グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヒェン、サー・サイモン・ラトル、サー・チャールス・マッケラス、そして1997年からサー・ロジャー・ノリントン等がしばしば指揮を行っている。
 このシューベルトの「大交響曲」で指揮をしているサー・チャールス・マッケラスは、1925年生まれのオーストラリア人で、音楽の基礎教育を受けた後、シドニー交響楽団の主席オーボエ奏者となったが、1946年にイギリスに移り、1947年に奨学金を受けて、プラーハ音楽院でヴァーツラフ・ターリヒに指揮を学んだ。1948年以来、現在のイギリス国立オペラを長年にわたって指揮すると共に、様々なオペラ劇場、BBC交響楽団などのモダン・オーケストラを指揮し、ヤナーチェクやモーツアルトのオペラ、バッハ、ヘンデルからベンジャミン・ブリテンに至る幅広いレパートリーを有している。OAEのウェブサイトのディスコグラフィーには、10枚以上のサー・チャールス・マッケラス指揮による演奏のCDが掲載されている***。
このOAEによるシューベルトの「大交響曲」は、現在ヴァージン・レーベルから、交響曲第5番、第7(8)番と共に2枚組のCD、0724356180628として入手可能である。

発売元:EMI Classics


Veritas 07243 5 61806 2 8
* オットー・エーリヒ・ドイッチュ(Otto Erich Deutsch, 1883–1967)によって編纂された、シューベルトの作品総目録。最初は1951年に英語版が出版され、1978年にシーベルト作品全集の一巻として、ドイツ語で出版された。
** 交響曲第8番ハ長調(D944)については、ウィキペディアドイツ語版の”Große Sinfonie in C-Dur” を参考にした。
*** サー・チャールス・マッケラスについては、ウィキペディア英語版の"Charles Mackerras"を参考にした。

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