私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 



Joseph Haydn: Cello Concertos, Sinfonia Concertante
Deutsche harmonia mundi 05472 77506 2
演奏:La Petite Bande

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn, 1732 - 1809)は、1761年にオーストリアの貴族エステルハーツィ家の宮廷副楽長に採用され、1766年に宮廷楽長グレゴール・ヴェルナーが死亡した後を継いで、宮廷楽長に任命された。エステルハーツィ候ニコラウスI世(Nikolaus I, Joseph, 1714 - 1790)の信任厚く、アイゼンシュタットの居城、ヴィーンの冬の宮殿、そしてハンガリーのエステルハーザにおいて、創作に演奏にのびのびと活動した。 1790年のニコラウスI世候の死後、後継の候は音楽に全く興味が無く、宮廷楽団を解散し、ハイドンには年金を支給することとなった。これによってハイドンは、自由な立場で活動出来るようになり、すでに広く知られていたその名声に目を付けたドイツ生まれのヴァイオリニストで興行家のヨハン・ペーター・ザロモン(Johann Peter Salomon)の誘いで、2度ロンドンに赴き(1791 - 92年、1794 -95年)演奏会を開き、大成功を収めた。このロンドン興行のために作曲した後期の交響曲、いわゆる「ザロモン・セット」が有名である。
 今回紹介するCDは、広く知られ、曲数も多い交響曲や弦楽四重奏曲、あるいはオペラやオラトーリオではなく、2つのチェロ協奏曲と協奏交響曲を収めたものである。ハイドンが採用された当時のエステルハーツィの宮廷楽団は、5人から8人のヴァイオリン(ヴィオラを含む)奏者、チェロ、コントラバス、ファゴット、フラウト・トラヴェルソ各1人、オーボエとホルン各2人という小規模な編成であった。チェロ協奏曲ハ長調(Hob. VIIb-1)は、このような時期の1761年頃の作品である。この作品のオリジナルのパート譜は、各楽器に1枚のパート譜からなっていて、チェロが独奏を奏する時は、低音のパートはコントラバスのみが奏したようである。後に作製されたパート譜は、第1,第2ヴァイオリンとバスの各1で、テュッティだけ加わるものである。今日最も多く演奏されるチェロ協奏曲のひとつであるニ長調(Hob. VIIb-2)の協奏曲が作曲された1783年には、楽団は拡大されていて、11人のヴァイオリン(ヴィオラを含む)奏者、2人のチェロ奏者、2人(時には3人)のコントラバス奏者を有していた。
 このCDで演奏しているのは、鈴木秀美の独奏チェロとジギスヴァルト・クイケン指揮のラ・プティ・バンドである。添付の解説書でクイケンが記しているように、チェロが独奏部を奏しているところでは、両協奏曲とも各パート1人で伴奏している。テュッティの部分は、第1,第2ヴァイオリン各4人、ヴィオラ、チェロ各2人、コントラバス、オーボエ、ファゴット各1人、ホルン2人とチェンバロという編成である。それによってソロとテュッティの対比を付けている。
 このCDに収録されているもう一つの作品、ヴァイオリン、チェロ、オーボエ、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲変ロ長調(Hob. I-105)は、当ブログ「 モーツァルトの協奏交響曲変ホ長調をオリジナル編成で聴く」で述べたように、マンハイム楽派から古典派初期に作曲された数少ない協奏交響曲のひとつである。この曲は、ハイドンの最初のロンドンでの演奏会(1791- 92年)のために作曲、初演された。この初演は非常に好評で、次の週の演奏会で再演されたほどであった。このロンドンでの演奏会のオーケストラは、12人から16人のヴァイオリン、4人のヴィオラ、5人のチェロ、4人のコントラバスに管楽器という編成であった。4つの独奏楽器の中では、ザロモンが奏するヴァイオリンが目立って活躍する。このCDの演奏では、第1ヴァイオリン、コントラバス、オーボエに各1人が増員され、フルート1人、トランペット2人とティンパニが加わっている。
 チェロ協奏曲ニ長調は、今日でも1890年にF. A. ゲフェルト(F. A. Gevaert)が刊行した編曲によって演奏されることが多いようだが、このCDでは当然のことながら、1935年に発見されたハイドンの自筆譜によって演奏している。録音は1998年2月にオランダ、ハールレムで行われた。古典派ハイドンの特徴を生かした明快で溌剌とした演奏である。しかしこのCDは、ソニーBMGの常として残念ながら廃盤になっている。BMGジャパンでも販売されていない。

発売元:Sony BMG Classical

注)ハイドンの生涯のデータ、作品に関する情報は、ウィキペディアの「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」と、CD添付のジギズヴァルト・クイケンの解説を参考にした。

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