我が夫子(せこ)が来べき宵なりささがねの蜘蛛の行ひ今宵著(しる)しも 衣通姫 日本書紀
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「ささがねの」は枕詞で蜘蛛に掛かる。「小笹ケ根」が語源か。枕詞としてとらずとも解釈ができそう。
「夫子」は「背子」とも書く。夫など男性を親しんで言うときの称。
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わたしの愛しい人が来てくれそうな気配を感じる暮れ方である。小笹の根元に動いている蜘蛛の動きが、それと知らせて、今夜はどうもいつもとは違ってせわしなくはなやかである。
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「虫の知らせ」ではなく、ここでは「蜘蛛の知らせ」になっている。雲は先を見る能力が高いと見ていたのだろうか。
愛しい人を待っている女性もまた蜘蛛の動きのように、門前を行ったり来たりしていたのではないか。相聞歌だから、これを男性の元へ遣いをやって届けたのかも知れない。わたしはあなたが通ってきてくださるのをいまかいまかと待っています、と。切なくやるせない。昔は男性が女性の元に通ってきて。女性を愛しんだ。
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