することがない。雪が舞っている。
誰もわたしがここにいることに気付かない。一人で居るしかない。
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ほうほうと揚がる薬缶の蒸気にようにして、瞬間瞬間に消えている。
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齢だけはとどまらない。日一日老いて行くが、それを拒む手段はない。というのに、今日することもない。
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春暁や今はよはひをいとほしみ
中村汀女(1900~1988)高浜虚子の門人。
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眠い目をこすりこすり起きて来たら、春の光が窓際いっぱいに溢れていた。苦しみ悲しみばかりの一生を過ごした来たというのに、ほっかり今ここの時間と空間が明るくなっている。映画館の古い映画のように、瞬間ストップしている。
「案外、いい一生を送ってきたんじゃないか、自分は」などとも思えるようになって居る。老齢がそうさせているかもしれない。皺皺の手を擦ってみる。皺すらも愛しめるようになって居る。
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俳人中村汀女は時間を肯定している。老齢を迎えているのに、それでほんのり杏の花のようにしている。わたしとは天地の開きだ。
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