さぶろうという老人は小心者である。死んだ後のさぶろう。これが気になってしょうがないふうだ。死んだ後のさぶろうは今ここで実証が出来ない。それで勢い実証可能な「今此処」をかがやかそうという努力をし始める。きらきら。光の所へ移動すればきらきらになる。水浴をする小鳥のように光を浴びて、まみれる。そしてその姿を死後のさぶろうにそっくり重ね合わそうとする。そうだ。死後のさぶろうもこのように光にまみれているはずだ、と。きらきらしているのは簡単だ。光がそうさせるから身を任せてさえいればいいからだ。そうやっておいて、いま此処をきらきらすることが即死後のさぶろうをきらきらさせることだと信じたがる。まるで小鳥だ。老人でいながら冬の野原の小鳥だ。
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