私が名古屋で就職し数年たったころ鶴舞の古本屋を何気なく回っていたとき熊原正男著「飛騨の年輪」(昭和41年出版)を見つけました。著者は飛騨金山町下原の福来というところの出身で、出版当時は横浜の県立金沢文庫の文庫長をしておられました。
この本を読むと、ふるさとへの郷愁に駆られるとともに、飛騨に関係した円空のことや、同じ下原出身の加藤素毛についてはじめて知ることになり、以後ふるさとの歴史に興味を抱くきっかけになりました。
前段の南飛騨風物詩は、私が少年時代経験したことと同じ内容が詳細に書かれていました。お祭りや年越し正月の行事他に飛騨の朴葉寿司のことなど懐かしい内容でした。私の祖父は明治15年生まれの飛騨大工で、正月の行事など江戸時代から伝えられた風習で厳格に迎えていましたから、この本の内容そのものでした。
また本書に記された加藤素毛は、江戸末期の下原兼帯名主の次男で、遣米使節団に同行しました。文才のあった素毛の旅の記録や記念の品物などが下呂市金山町下原の素毛記念館に展示されています。2008年には記念館から写真のような記録集が発刊され150周年記念でアメリカでも展示会が開催されました。