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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

師家蔵・古いSP盤のデジタル化作戦(その5)

2006-11-17 01:25:49 | 能楽
【その4】材質(。。えっ!?)

みなさんもご存じかも知れませんが、SP盤のレコードって、とってももろくて割れやすいのです。うん、まあ ぬえもそう聞いた事はあったけれど、ぬえも所蔵している戦中の有名な時局能『忠霊』のSP盤を見たかぎり、また今回名古屋に運んだ師家所蔵の盤について言えば、それほど もろいという印象は持ちませんでした。でも師家の所蔵品の中にも割れている盤があったり。。やはり取り扱いに注意するに越したことはなさそう。

鮒さんいわく、やはり古い時代のSP盤ほど割れやすいのだそうです。時代を経るに従って盤の製作技術も進歩して、割れにくい盤ができるようになったのでしょう。名古屋ではSP盤の状態を1枚一枚確認しながら業者に引き渡したのですが、鮒さんは盤に触ろうともしない。そして「あ、それはマーキュリーレコードの盤だから丈夫です。保存も良好じゃないかな」「あ!また出た。。ニッポノホン。。それは気を付けて扱ってね」なんて言う。あとで聞いてみたら、すでにSP盤のコレクションを1千枚も所有する鮒さんの経験から、古い時代の盤は重く、そして割れやすいのだそうです。「重い盤ほど気を付けて扱う」のが鉄則なようで、いや実際驚くほどSP盤ってのは重いものですが、後世には軽くて丈夫な盤に改良されたようです。

そのうえ鮒さんは「ニッポノホン。。私も何枚割ったことか。。」なんて言ってる。事のついでに ぬえ、鮒さんに、古くてもろい盤とはどれほどの耐久性があるのか聞いてみました。答えは驚くべきもので、「ターンテーブルに載せたとたんに割れた」「手に持っただけで割れた」。。ですって。。

さて師家の所蔵品のSP盤は、だいたい3種類の方法で保管されていました。まずは『梅若万三郎名盤集』のような企画ものの盤で、これは一番を通して謡う素謡を数枚のSP盤に収録したもので、それらがセットで立派な函に納められています。そして一枚ずつ薄い紙ジャケットにくるまれているもの。これは小謡のような部分謡ばかりですが、本来どのような姿で販売されていたのか。。薄い紙ジャケだけじゃ破損の危険も大きいと思うのですが、先代の師匠の手による題箋が付けられて厚紙でくるまれ、丁寧に紐でくるんだものもあるので、それらは函を散逸したものか、あるいは元々簡素な包装で売られたのでしょうか。

そして最後に分類されるのが「アルバム」に納められて保管されていた一群の盤。「アルバム」とは、ホントに昔の写真アルバムのようなもので、革表紙の分厚いものですが、明らかにSP盤を納めるために作られたものです。内容は素謡が納められた数枚の盤があったり、1枚だけの小謡があったりと内容がバラバラですし、アルバム本体には納められた盤の内容を記すスペースもなく、これはどう見てもアルバムは盤の所蔵者が保管のために別に買い求めたもの。

。。で、ちょっと調べたら面白い事がわかりました。アナログレコードの時代にシングル盤と区別してLP盤を指して使った言葉。。今日でもフルCDを呼ぶ名称。。「アルバム」とは、この時代、SP盤を専用のアルバムに保管していたところから起こった名称なんですって! へ~~っ! 「アーティストのニューアルバム」「コンセプト・アルバム」と名称は現代的でも、その中にはSP盤時代の名残が残っているんですね~。

もひとつ。ここが本題。今回SP盤に携わる機会を得た ぬえですが、前述の通り ぬえ自身も『忠霊』を所蔵していて、あながちSP盤との縁がないわけではないんです。。で、以前から気になっていた事がありました。戦後に登場し、CDに取って代わられるまで約半世紀の間 音源として不動の地位にあったLP盤は、この材質は ぬえの世代ならみんな知っている「塩化ビニール」です。でも、早く明治時代(1910年代)からあったSP盤の材質はそのような化学製品であるはずがない。。この真っ黒で重い、そしてあまつさえ壊れやすいときているこの円盤は、いったい何からできているのか。。? 今回のこのデジタル化作戦のついでに、ぬえも長年の疑問を調べてみました。

結果は。。驚いた。。

答えは。。この発言のコメントとして書いておきます。。