前原国交相の八ッ場ダム建設中止について、谷垣自民党総裁が現地見学し、中止反対で国会で追及してゆくことや、下流地区の首長が中止の再考を政府の質してゆくと報道されていますね。
ダム建設予定地は、浅間山の下流に位置し、「地滑り」の危険性もあり、地学的にも問題がありますね。
八ッ場ダム建設反対のNGO「八ッ場ダムあしたの会」の「地質のもろさ」で、
”「【浅間山の噴火と八ッ場】
八ッ場から20kmあまり離れた群馬県と長野県の県境に、わが国有数の活火山、浅間山があります。八ッ場ダム予定地の地質は浅間山の存在ぬきには語れません。
浅間山は過去何度も大爆発を起こし、そのたびに吾妻川流域に甚大な影響を及ぼしてきました。中でも約2万4000年前の大爆発は、山体を崩壊させる大規模なもので、「応桑岩屑(おうくわがんせつ)なだれ」とよばれる大量の土砂が吾妻川に流入しました。吾妻川の川幅は吾妻渓谷で最も狭まる為、岩屑なだれは渓谷で一旦せき止められ、100メートル以上ダムアップしたとされています。」”
と問題視しています。
朝日新聞の10月1日のローカル記事「八ツ場 浅間山の因縁」では、地元住民の浅間山の噴火による泥流、地すべりの危険性の不安を報道しています。
転載すると、
”「前原誠司国土交通相が中止を明言して以来、賛否の声が渦巻く八ツ場ダム(長野原町)。前原国交相との意見交換会への参加を拒否するなど「地元はダム推進」とみられがちだが、ダム建設に疑問を持ち続けている人がいる。
226年前にダム予定地を襲った泥流の伝承や、地滑りへの恐れが背景にある。共通のキーワードは「浅間山」だ。
川原湯地区で、牛乳の製造・販売をしている豊田武夫さん(58)。
自宅近くには、先祖代々の墓地がある。
その一角に建つ石碑に「天明三年七月八日 浅間 有縁無縁三界萬霊 荒古碑流失依而造立之者」と刻まれている。幼いころから、豊田さんはこの碑に手を合わせるのを忘れないよう、教えられてきた。
天明3(1783)年に何があったか。
この年、5月(旧暦4月)から小規模な噴火を繰り返していた浅間山が、同年8月5日(同7月8日)午前10時ごろ、激しく噴火。土石なだれが嬬恋村鎌原の旧鎌原村を埋没させ、吾妻川に流入して泥流になった。
国の中央防災会議がまとめた「天明浅間山噴火報告書」などによると、火口から直線で約20キロ離れた八ツ場には、波高50メートルを超す泥流が時速72キロで押し寄せたという。
下流域も含め約1500人が犠牲になったとされる。うち計400人以上が長野原町内の住民だったと町誌は記す。
映画「男はつらいよ」で知られる東京都葛飾区の柴又帝釈天の墓地にも、泥にのまれて付近の江戸川でみつかった犠牲者をまつる石碑が建っている。
天明クラスの大規模噴火は、700年に1度の割合で起きているという。
八ツ場ダムの完成後に天明泥流と同様の泥流が襲ったらどうなるか。
県埋蔵文化財調査事業団の発掘調査では、ダムの水没地域とほぼ同じ範囲で、天明泥流の遺跡がみつかっている。
砂防フロンティア整備推進機構の井上公夫さんは、ダム予定地の吾妻渓谷で、天明泥流によって高さ70メートル程度の天然ダムが形成され、泥流が9分程度で5050万トンたまったとする試算を出している。八ツ場ダムの貯水容量は1億750万トンで、半分近くが泥流で一気に埋まる計算だ。
ダムの水位によっては、一気にダム湖へ流れ込んだ泥流がダム本体を越え、ダム湖の水と混ざって下流域に襲いかかる。あるいはダム本体が壊れるかもしれない。
そんな悪夢が頭をよぎった豊田さんが、万が一の泥流への対策を何度問いかけても、国土交通省の担当者から明快な答えは聞いたことがないという。
豊田さんが懸念するのは泥流だけではない。
この地に生を受けてから7回、自宅近くで地滑りを目の当たりにしてきた。
ダム完成後に湖岸になる場所で、地滑りの危険が指摘されるのは22カ所あるとされる。
この地質の弱さも、浅間山に起因する。
一帯は2万4千年前の巨大噴火の堆積(たい・せき)物でできているからだ。
奈良県川上村の大滝ダムは、ダム本体完成後の03年、試験的に水をためたところ、地滑りが発生。湖岸の集落が急きょ移転を強いられた。
国はあわてて対策工事を追加し、いまも完成していない。
ある土木コンサルタント会社OBは「いきなり本格的に水をためずに試験的にためるのは、地滑りするかどうかを確かめるため。
想定外のところで滑ったら、対策を取ればいい」とためらいなく話す。
豊田さんの自宅周辺の所有地には、吾妻川沿いから高台に移されるJR吾妻線の新ルートが通る予定で、新しい川原湯温泉駅も計画されている。
泥流の悪夢や地滑りへの懸念は、自分たちの家族だけではなく、下流に住む人々や鉄路の安全性にかかわる問題だと思っている。「ダムの安全性がちゃんと証明されない限り、土地は手放さない」。
推進派の住民に非難されても、筋を曲げるつもりはない。
国は、八ツ場ダムの計画にあたって浅間山の影響を調べたことがある。
旧建設省の外郭団体「国土開発技術研究センター」が19年前、八ツ場ダム工事事務所の委託で「火山活動に関するダムへの影響調査委員会」を設置。
ダム建設予定地から直線で約20キロに位置する浅間山と草津白根山の噴火が、ダムにどう影響するかを調べた。
「地元の人に言われたときにどう言うか、国会で出たときにどういう言い方をするか」。90年4月10日、東京・虎ノ門のレストランに集まった火山研究の専門家らを前に、当時の工事事務所長が、委員会の目的を述べた。
約3年を費やして93年3月、概要報告書が作成された。だが、そこには具体的な対策は何も書かれていない。
いま、八ツ場ダム工事事務所に尋ねても「そんな報告書があるんですか」と言われる始末だ。
報告書の作成にかかわった関係者は「浅間山の観測体制はかなり進んでおり、天明の噴火でも大爆発まで3カ月かかっている。あらかじめダムを空にするなどの対策は可能」と話す。国土交通省も「一般論として、泥流を想定してダムの水位を下げておけば、一種の砂防ダムになる」と楽観的だ。」”
と報道しています。
「八ッ場ダムあしたの会」の「地質のもろさ」で、地滑りの危険性を詳細に記述していますね。
本ブログ「八ッ場ダム:建設中止は正解(地学的問題:中和処理)」で、強酸性水質の不可欠な中和作業だけでも建設中止が正解と書きましたが、浅間山の麓の下流に位置し、地滑りの危険地区に、ダム建設中止は正解ですね。
谷垣自民党総裁が現地見学し、一方的なダム建設中止は、国会で追及すると広言していますが、マアー、恥をかくだけでしょうね。
ダムの下流域にある関東地方の13の自治体が、建設をやめれば水害の危険性が高まるとして、必要性の再検証を求める意見書を近く国土交通省に提出すると報道されましたが、地球温暖化で、スーパー台風の発生の危険性が警鐘されている現在、八ッ場ダム程度で、防災になるというのは、針小棒大と印象ですね。
それにしても、地学的な危険地区に、ダム建設を推進したい地元住民の意識がわかりませんね。
人工的なダムでは、観光資源の価値がさがり、水抜きしてまで地滑り対策地区にダム建設しても、地滑りの危険性は回避できないのに、生活再建(生活保障・生活支援)を政府が約束しているに関わらず、一方的だと批判している心情は何でしょうね?
政府に振り回されたという心情は、同情できますが、本当に、ダム建設で幸せになると信じていたのでしょうか?