傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

特養待機増:「施設から在宅へ」推進は医療費抑制への自助努力を強要(雑感)

2014-03-27 20:25:38 | 社会保障

26日の朝日新聞の「天声人語」で、特養待機増を取り上げ、人生の終幕の境遇で暗い印象に染まるなら、つらいことだと記述し、公助と共助と自助。生きることを支える網と人同士のつながりづくりが、待ったなしだ。と結んでいます。
厚労省は、特養待機増に、「サービス付き高齢者向け住宅」など医療・介護一体の「施設から在宅へ」を推進しているが、朝日新聞は、過去に、「サービス付き高齢者向け住宅」など施設の高齢者に訪問医への患者紹介ビジネスを問題提起しており、26日の「天声人語」は中身の乏しい内容ですね。
また、特養入居を「終の棲家」に思わせる論調にも違和感を覚えますね。

26日の朝日新聞の【天声人語】の冒頭は、言葉の順番次第で印象が異なるとし、
”「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
52万人という数字が、きのうの紙面で目にとまった。特別養護老人ホームへの入居待ちのお年寄りだという。4年前より10万人増えて、より切実な「在宅で要介護3以上」は15万人を越す。困っている人が、終(つい)のすみかにたどり着けていない。
 昨今は「待機」といえば児童だったが、じきに団塊世代が75歳を超えていく。家族や地域は揺らいで久しく、貯え不足や病気など、実らせてきた人生が、終幕の境遇で暗い印象に染まるなら、つらいことだ。
 介護や医療ばかりではない。独居のお年寄りをさいなむ孤独感は地域を問わずに影が濃い。それが万引きやアルコール依存の温床にもなっている。思いがけず晩節を汚す人も、少なくないと聞く。
シェークスピアの劇にこんなせりふがあった。<終わりよければすべてよし。終わりこそつねに王冠です>(小田島雄志訳)。
 公助と共助と自助。生きることを支える網と人同士のつながりづくりが、待ったなしだ
。」”
と結んでいます。

「天声人語」は、26日の朝日新聞の記事『特養入居待ち52万人 厚労省集計 4年で10万人増』を注視した思われので、記事の前書きを転載すると、
”「特別養護老人ホーム(特養)への「入居待ち」の高齢者が、昨年秋時点で約52万2千人にのぼることが25日、厚生労働省の集計でわかった。4年前の前回調査より約10万人増えた。待機者のうち、入居の必要性が高い「在宅で要介護3以上」は約15万2千人いた。高齢化で介護が必要な人が増え、受け皿不足はさらに広がっている」”
で、記事のサブタイトル「進む高齢化 受け皿不足」で、
”「・・・・・・・・・・
特養は、常に介護が必要で住宅で暮らすのが難しい人向けの施設。そこで最後を迎える人も多く、「終の棲家(すみか)」と呼ばれる。
・・・・・・・・・・・・
厚労省は「特養のニーズを考えると、今の定員数は十分ではない」と認めるが、受け皿整備の重点を特養以外に移す姿勢だ。具体的には在宅医療や、介護職員が高齢者を24時間定期的に訪問するサービス、住人が見守りなどを受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」などが柱となる。医療・介護一体で「施設から在宅へ」の流れを進める。・・・・・・・・・・・・
」”
と報道しており、厚労省は特養待機増を在宅介護・医療で対処する方向性です。

高齢者施設の入居者を訪問医に紹介する「患者紹介ビジネス」について、本ブログ『患者紹介ビジネスについて・・・ニーズがあるからビジネスとなる(雑感)』(2013-08-30)で、

”「(8月)25日の(朝日新聞)記事『患者紹介ビジネス横行』(高齢者施設への訪問 医師に営業)のリード部を転載すると
”「高齢者施設で暮らす患者をまとめて紹介してもらい、見返りに診療報酬の一部を紹介業者に支払う医師が増えている。訪問診療の報酬が外来より高いことに着目した「患者紹介ビジネス」に加担している形だ。法令の規制はなく、厚生労働省は「患者をカネで買うような行為は不適切」として規制の検討に乗り出した。」”
と、紹介業者は高齢者施設の入居の患者を獲得し、訪問医師に患者紹介し、医師は施設に入居の患者を訪問診療し、診療報酬(保険料や税金など)の2割程度を紹介業者に紹介料を支払うスキームで、診療報酬の一部が紹介業者へ紹介料として充当されるということです
。」”

と、患者紹介ビジネスは、高齢者施設の入居高齢者、訪問医を紹介することで、対価には診療報酬の一部が充当されるスキームで、朝日新聞の記事で厚労省が問題視した経緯があります。

当方は、入院中の老母を訪問医、介護ヘルパーを利用した在宅介護・医療を模索した経緯があり、訪問医療・訪問看護サービスが限定的で断念した経過があります。
当方は、認知症の高齢者の在宅介護は介護離職せざるをえないほど家族の負担が大きく、社会的入院の緩和の必要性を書いてきました。
経験的には、徘徊できる要介護度2,3の認知症の高齢者の介護が肉体的、精神的に負担が大きく、高齢者が半介助、全介助のレベルになれば介護も医療も限定的になり、訪問介護、看護、医療による在宅介護・医療は可能性があると思いますね。

3月6日放送のテレビ東京「カンブリア宮殿」の『ニッポンの超高齢社会を救え! 異色の経歴の医師が挑む医療革命!』で、祐ホームクリニック 理事長・医師の武藤 真祐氏を取り上げていました。
番組紹介を転載すると、

”「日本が今後、直面する〝2030年問題〟をご存じだろうか?
65歳以上の高齢者の割合が30%を超え、病院のベッド数の不足などから死に場所に困る人が50万人にものぼるという深刻な事態が間もなく訪れるという。この問題の解決に一役買う、ある東京の病院の取り組みが注目されている。患者の自宅で診療する在宅医療を専門に手掛ける「祐ホームクリニック」だ。
現在、42歳の医師・武藤真祐はこれまで医師一人で行うことの多かった在宅医療を高齢者に関わる関係者のネットワーク化と事務作業を極力減らすIT化によって、在宅医療の常識を変えた。武藤の診療所は開設から4年ほどだが現在、患者数は450人を抱える人気クリニックとなっている。そんな武藤が最も大切にしているのが、患者の生活の質をいかに高め、患者と家族が満足な形で自宅で人生の最期を迎えてもらうことだという。
また武藤は東日本大震災の半年後に宮城県石巻にも拠点を設けて、超高齢社会の問題解決にあたっている。
東大医学部卒業後、天皇陛下の侍医として活躍する一方、コンサルティング会社のマッキンゼーで経営を学んだ異色の経歴の男が模索する新しい医療の在り方とは・・・。

日本の超高齢社会を支える〝在宅医療〟とは
今回のゲスト、武藤真祐医師は6歳のときに野口英世展を見て医師になることを決意。東大医学部卒業後、天皇の侍医として活躍。しかし医療の現状に満足せず医療の世界を飛びだし、コンサルタント会社・マッキンゼーで問題解決のノウハウを学んだ。独立後、つくり上げたのが患者の自宅で病気を診る在宅医療のクリニックだ。一人で在宅医療に取り組む医師が多い中、武藤は30人もの専門医を揃え24時間365日対応、設立4年で450人もの患者を抱える人気クリニックに育て上げた。

武藤が最も大切にする看取りの現場を取材
今9割近くの人が病院で死を迎えるが、高齢者が増え続ける今後は病院で死を迎えることが難しくなる。特に2030年には約50万人が死に場所を失うといわれている。人生最期をどこで迎えるかは大きな問題だ。武藤は自宅で死を希望している人は実に9割近くに上るものの、逆に9割近くが病院で亡くなっていく現状を問題視する。武藤が最も大切にしているのが、患者の生活の質をいかに高め、患者と家族が満足な形で〝自宅で人生の最期〟を迎えてもらうことだという。

被災地から始まる新しい医療システム
武藤は東日本大震災の半年後に宮城県石巻市に分院を立ち上げ、仮設住宅や孤立世帯への在宅医療に取り組んでいる。被災地は若者が流出し高齢者ばかりが取り残され、さらに高齢化が進む未来の日本を先取りした状況になっている。そんな中、医師以外に高齢者の家を訪れるヘルパーと情報を共有出来るよう、最新のITシステムをつくり出したり、数十社もの民間企業も巻き込んで、ボランティアではなく民間で高齢者を支えるビジネスモデルを構築しようとしている。型破りの医者、武藤の取り組みが日本の高齢社会を救う!
」”

で、当方が、過去、老母の在宅医療・看取りを断念したのは、上述の”「一人で在宅医療に取り組む医師が多い中」”にあるように訪問医の訪問は事前計画日時と限定的であり、夜間休日の緊急時に訪問医にコールできず、救急車コールになり、救急病院での急患受け入れ検査があり、患者の負担が大きいと断念の理由でした。
当方の居住地区で、祐ホームクリニックがサービスをされていれば、老母を在宅での看取りをも検討したでしょうね。

厚労省が「施設から在宅へ」と推進している「サービス付き高齢者向け住宅」については、本ブログ『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は介護施設ではなく住宅に過ぎない(雑感)』(2013-09-04)で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は介護施設ではなく生活支援サービス付きの住宅に過ぎず選定には慎重を要するとし、患者紹介ビジネスのニーズがあると書きました。

朝日新聞の記事、天声人語は、特養を「終の棲家(すみか)」と表現しているが、特養は介護保険制度のもとでの介護施設で医療機能はなく、最後の看取りもサービス外であり、果たして高齢者や家族にとっての「終の棲家(すみか)」なのか疑問ですね。

先の本ブログで、”「老親の終末期医療を心配すると自分が配偶者から捨てられる」”という風潮とし、「社会のお荷物」扱いの高齢者に自己責任による孤立で終末期、終活を求められる日本社会になったと書きましたが、その主因は、認知症でしょうね。
石飛幸三氏の自ら食事ができなくなった高齢者は老衰という自然の摂理の「平穏死」の意見は、共感しますね。

「付記」

テレビ東京「カンブリア宮殿」の『ニッポンの超高齢社会を救え! 異色の経歴の医師が挑む医療革命!』で取り上げた祐ホームクリニック 理事長・医師の武藤 真祐氏の事業について、「村上龍の編集後記」を転載すると、


”「国連などの定義によると、今の日本は「高齢化社会」ではない。「超高齢社会」である。65歳以上が全人口に占める割合はすでに23%超で、2030年には30%に達するという。
そんな中、かってどこにでもあった「世間」という暖かな共同体が全国的に消滅しつつある。わたしたちは「世間」に代わるシステムを創出し、構築しなければいけないが、今のところ、政治、行政にはそんな動きはない。
武藤先生は、看護師や薬剤師などのコメディカル、介護、各種NPO、それに企業と連携し、生活支援を含む在宅医療の先端的モデルを実践し、進化させようとしている。
それは、単に高齢者の孤立を防ぐため、だけではない。日本固有の、暖かで、優しい「死生観」を守るという、貴重な、文化的事業でもある
。 」”

で、日本社会は、「超高齢」「核家族」「多死」であり、過去の延長線上の社会保障が通用しなくなったのです。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。