郷原 信郎氏のコラム続編『「年金改ざん」を巡る思考停止が厚生年金を崩壊させる』では、社保庁は糾弾されるたびに、一方的に謝罪し、法令遵守の徹底を呼び掛けている間に、社保庁の組織は、どんどん追い込まれ、結局、組織自体が解体されるという事態に至り、信頼失墜を決定的にしたのは、舛添大臣の”「法令遵守」のパフォーマンス”と断言し、それでは厚生年金という制度とその運用に重大な支障を生じさせ、国民全体に大きな不利益をもたらすことになりかねないと危惧しています。
コラム続編『中小企業の実態に合わない公的年金制度の是正を』では、中小企業の実態と不整合の現行の厚生年金制度の問題を提起しています。
「法令遵守」だけでは、「思考停止社会」を助長することになることへの啓発の内容のコラムであり、舛添大臣の「法令遵守」第一では、問題の「本質」の解決にならないと舛添大臣の言動はパフォーマンスとし、断定しています。
郷原 信郎氏のプロフィールには、東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事などを経て、桐蔭横浜大学法科大学院教授 コンプライアンス研究センター長とあり、「法令遵守」を第一に考えるべき立場と思うが、”法令遵守”だけでは思考停止させ、社会を弱めるという発言には特異ですね。
郷原 信郎氏は、厚生年金における滞納には、法律に準拠した徴収方法が正解ではあるとし、遡及処理は現実解であるが「改ざん」として「社会悪」と糾弾されるのは、思考停止社会を助長させる危険性を提起しており、本質の問題は、厚生年金制度が社会と不適合部分がある制度の問題と滞納への処理基準が無く、現場の運用責任に負わせているに過ぎない組織的な問題を内在しているという見解ですね。
当方は、郷原 信郎氏の見解に賛同します。
現場人間であった当方は、関係先の中小企業が社会保険料の納付・滞納で苦しんでいたのを身近に見てきました。
ある会社の社長は、滞納で社会保険庁には、定期的(月次)に居場所と納付可能金額の連絡が義務付けられていました。
そして、滞納金額の処理は、最終的にどう処理したか未確認ですが、多分、遡及処理したのでしょうが、その後は社員の一部解雇し、残った社員を契約社員として、社会保険は自己責任(国民年金)にし、なんとか延命できましたね。
中小零細企業にとって、社会保険料の負担は重く、事業主にとっては、まずは運転資金(家賃、給料)が第一でキャッシュフローを考え、一度、社会保険料を滞納すると、その納付の金策には難渋するのが現実です。
郷原氏が提起した現行の厚生年金制度を弱小の中小零細企業まで対象することは実態と不適合があることは実感します。
滞納分の相殺を目的にした遡及処理は、現実解でもあるが、問題は、事業主は当事者であり、遡及処理は当然、認識しているが、従業員には、遡及処理したことは知らされない場合には、不利益のままで終息してしまう危険性があることで、従業員個人が自分の標準報酬額を知る仕組みなり、社保庁が個人宛に知らしめる仕組みは不可欠ですね。
郷原氏の提起した遡及処理による清算は現実解の要素もあり、一概に「改ざん」として単純な「悪」ではないこと、厚生年金制度が社会の実態との不適合部分が顕在化している本質の問題を、舛添大臣の「法令遵守」ありきの人気取りパフォーマンスが本質の問題を遡及処理を「改ざん」とし、社保庁の「悪」として世の中に「誤解」を植えつけた元凶との批判には、同感します。
当方は、年金記録問題は、国民の個人資産を損なう国家的犯罪という考えであり、長妻議員が当初から提案している「国家プロジェクト」で取り組むテーマと思っております。
舛添大臣は、独りよがりで、年金記録問題は「俺しか解決できない」だという姿勢には、批判的です。
社会保険庁の積年の三相階層による組織の問題や、問題の先延ばしを許容してきた体質、システム仕様・運用を閉鎖性の独自性を強めてきたシステムを請け負った事業会社が責任回避してきたツケが年金記録問題の根源的な原因と見ています。
世間では、舛添大臣には年金記録問題への取り組みを好感していますが、「法治国家であり、法律にのって厳粛に対処する」という姿勢だけでは、表層責任問題は解決しますが、根源的な責任問題はウヤムヤになり、現場を高圧的態度で接していれば、現場は緊張感・使命感もなくなり、指示待ちの無気力・虚脱感になり、最終的には従来のサラーマン体質になるだけでしょうね。
やはり、組織の長は、謙虚になり、反省すべきは反省し、組織を守る姿勢が肝要であるが、自ら駄目組織と糾弾の旗振りすることは組織力を生かせず、国民の不利益につながりますね。
それにしても、郷原 信郎氏は、コラム『「年金改ざん」を巡る思考停止が厚生年金を崩壊させる』で、舛添厚労大臣を「人気取りパフォーマンス」とこき下ろしており、その勇気に拍手を送りたくなります。その部分を一部引用すると
「・・・・・
そのためには、実態も問題の所在も理解しようとせず、自らがトップを
務める厚生労働省の一員である社保庁職員を一方的にこき下ろす「人気
取りパフォーマンス」ばかり続けてきた舛添大臣が、まず、これまでの
軽率な対応を謙虚に反省し、問題の本質に目を向けた対応を行うことが
不可欠であろう。
・・・・・・
しかし、舛添大臣も含め「人気取りパフォーマンス」で目立っている
政治家の名前ばかりが、人気崩壊の麻生首相に代わる「次の総理候補」
として急浮上しているというのが、今の日本の政治の悲しい状況なので
ある。・・・・・」
と書いており、郷原 信郎氏は官公庁の仕事もしており、今後の商売にも影響すると思いますが、郷原 信郎氏の私信がブレない姿勢には敬服しますね。