先日、オフシーズンに入りランニングを始めた選手から「監督最近走ってますか?どのくらいのスピード出ています?12km/hくらい?」と質問されました。
私の勝手なイメージかもしれませんが、距離あたりのスプリットタイムではなく時速で質問するあたりが自転車選手らしいと感じませんか?
私は
「基本パタパタと気持ちよく走るだけだよ。そういえば数年前(2016年10月)、JPT南魚沼のレースコースを走った時が成人後一番集中して長い距離走った記憶かな?カメラマンの(故)高木秀彰さんがロードバイクで追い付いてきて伴走してくれたんだけど、『野寺さん!僕は陸上経験者だけどこのペースめちゃ早いですよ!』と声をかけられてドンドンペースアップしていったことを覚えているよ。」
と答えたのです。
その時の記録を探してみたのがこれ!↓





▲伴走してくれた直後の高木さん
‘かなり頑張った’くらいにしか思っていなかったのですが、今改めて見返してみると結構速くないっすか!?
後半はもっとも速いときで1㎞あたり3分25秒になっています(最後の1㎞は下り坂なので速くて当たり前かもしてません。)
私は高校生の時、体育の授業で計測した1500m走を4分36秒?くらいで走り、クラスでは一番、学校全体でも2番目程だった事を覚えています。
(もちろんしっかり活動する陸上部があるような学校ではありませんでしたがスポーツテストは5分きれば満点だった記憶が)
その時とほぼ同じペースを、しかも5㎞以上それなりの強度で走った続きで維持していた事になります。
しかも良い歳のおっさんが。(覚えていませんがたしか28歳前後…もういいって?)
そんな話はさておき、
ふとした選手との会話の中でその翌年、急逝した高木氏と最も長く2人で過ごしたあの貴重な時間を深く思い起こす事となりました。
最近、将来を期待された、ある若い選手と言葉を交わした時の事です。
私-「久しぶり、ちょうど昨晩、高木さんの過去のSNSを見てたら君の事が書いてあってさ。過去に走った選手権で世界トップとのタイム差が(過去の日本人が出した結果と比較し)いかに優れてるか書いてあって、今更ながら驚いたよ。」
ヤング選手-「そうなんです!高木さんは自分が成績を出すことができるようになって早い段階から注目してくれて、記事にもしてくれて、モチベーションに繋がりすごく感謝してるんです!」
高木氏はいつも写真や記事を通し選手を応援し勇気を与えてくれていました。
それはトップ選手に限定された事でなく、多くの努力を見せる選手に向いていました。
全国大会で大きな成績を残したような選手でなくとも、高木氏の話になると高揚した顔をする大学&高校生選手を何人も見たことがあります。
今思えばあの日、ランニングする私を見つけ、横に並び、私に向かう高木氏の声、表情、姿勢の全ては私の心に火を灯してくれるものでした。
それまでも自分の限界に近い強度で走っていたはずの私は、そこから更にペースが上がり続け、苦しさと高揚感がリンクする感覚の中それまでの自分を大きく上回るパフォーマンスを出していたのです。
ツアー・オブ・ジャパン2017東京ステージで撮影中の高木秀彰さん。カメラを向けるとピースで応える photo:yuya.Yamamoto(cyclowired)
人が大きな力を発揮できるのは、自らを認識してくれる他者の存在が強く影響している事は疑いようがありません。
私も、高木氏のように他者へ勇気や前向きな力を与えられる人でありたい、そんな人を目指し続けたいと考えています。