当初より、使い物にならないソフトであると評価され、民間で使えるソフトを開発するために、仕様書の公開を求めていましたが、法務省は、一部の仕様書しか公開しませんでした。公開しない理由について、登記識別情報に関する部分はセキュリティ上の問題があるので公開できないと説明しておりました。
私が、登記所の職員が使用しているマニュアルの提供をお願いしたときも、「登記識別情報の作成に関することなど,同システムのセキュリティや公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報が含まれておりますので,お渡しすることができません。」とのお答えでした。
法務省はオンライン申請促進のために、平成19年8月推進策案を提示し、12月、不動産登記規則を改正、不動産登記令の附則に一条追加して、添付情報の郵送等による別送を認めることになりました。(平成20年1月15日実施予定)
書面で交付を受けた登記識別情報は、オンライン申請の場合は、オンラインで申請書情報とともに送信することになっております。
オンラインで提供する場合は、専用のフォルダに入れて提供します。このとき、登記名義人(登記義務者)の電子署名が必要なのですが、電子証明書が普及していないため、申請代理人(司法書士)の電子署名(電子証明書)でよいことになりました。
これらの変更に伴い、申請書作成支援ソフトが、12月10日バージョンアップされました。どの程度利用しやすいものになったか検証の意味もあって、登記識別情報を提供する操作をしてみました。
この結果、改めて、使い物にならないソフトであることが判りました。
法務省は、ソフトの仕様書を公開しないのは、セキュリティ上の問題であると説明していました。また、登記識別情報は、登記名義人だけが知っている情報である。その本人しか知らない情報を提供させることによって、登記名義人であることを確認するシステムであると説明しておりました。
しかしながら、半ライン申請においては、申請代理人は(名義人から特別の委任を受ければ)、登記識別情報の暗号化及び復号化ができることになりました。つまり、登記識別情報は、交付した瞬間に、名義人しか知らない情報ではなく、名義人以外の者が知っている情報になったのです。
申請書作成支援ソフトは、入力項目の入力値についてチェック機能があります。入力しなければいけない情報は、申請人の住所・氏名、物件の情報、登記識別情報等で、名義人の電子署名も必要です。このソフトの入力情報のチェック機能は、値が「全角か半角」か「入力されているかいないか」だけしかチェックしていません。
登記情報と登記識別情報は、法務省が管理している情報です。電子署名する際の電子証明書には、当然に名義人の住所・氏名が入っています。
これらの情報と入力された情報が符合しているかどうかのチェックはされていないのです。つまり適当な値を入力し、適当な電子証明書で電子署名すればオンライン申請の添付情報として送信することが出来るのです。
一方で、セキュリティ上の問題があるからソフトの仕様は公開しないと言い、一方で「名義人からの委任があれば」と条件つきながら、司法書士に暗号化と復号化を認め、適当な値を入力して適当な電子証明書で電子署名したものでも、添付情報として提供できるのはどういうことか、法務省の対応には矛盾があります。
平成19年10月、法務省は不適切なパスワードについて、申請書作成支援ソフトを修正すると説明し、謝罪しました。
しかし、今回のバージョンアップ後のソフトも、使えない「屑ソフト」であることが判明しました。