何年かぶりにアイスココアというのを飲んだ。
道端にある自動販売機から。
お目当ての缶が売り切れてしまっていてね。
仕方なく飲んだのに
これがうまかった。
そういうことが人生にもあってね。
いきたくなかったところにたまたま迷い込み
その路地がどういうわけかおもしろかったりする。
人と人とのあいだに網の目のように張り巡らされた路地。
その奥で。
ぼくは石けりしている女の子に出会って
「ああ あのときのユミちゃん!」
と思わず叫んだ。
記憶という 漠然とした胸のひと塊。
岬もあるし 居酒屋もある。
象が長い鼻で草むらから草を毟りとるように
ぼくはことばを毟りとる。
ぼくの胸の奥には分厚い日本語の辞書があるけど
そいつは眼には見えない。
ガラガラと下駄を鳴らして
あるいは玄関ドアを軋ませて
いろいろな人がやってくる。
若き日の石原裕次郎が歌っていたり
「罪と罰」を書き終えたばかりのドストエフスキーが酒をのんでいたり
チェシャ猫が獲物に躍りかかっていたり。
あり得たことと
あり得なかったこと。
アイスココアを飲み干すあいだに
ぼくは記憶の中の旅をしたんだ
ぼくしか知らない記憶の中の。
道端にある自動販売機から。
お目当ての缶が売り切れてしまっていてね。
仕方なく飲んだのに
これがうまかった。
そういうことが人生にもあってね。
いきたくなかったところにたまたま迷い込み
その路地がどういうわけかおもしろかったりする。
人と人とのあいだに網の目のように張り巡らされた路地。
その奥で。
ぼくは石けりしている女の子に出会って
「ああ あのときのユミちゃん!」
と思わず叫んだ。
記憶という 漠然とした胸のひと塊。
岬もあるし 居酒屋もある。
象が長い鼻で草むらから草を毟りとるように
ぼくはことばを毟りとる。
ぼくの胸の奥には分厚い日本語の辞書があるけど
そいつは眼には見えない。
ガラガラと下駄を鳴らして
あるいは玄関ドアを軋ませて
いろいろな人がやってくる。
若き日の石原裕次郎が歌っていたり
「罪と罰」を書き終えたばかりのドストエフスキーが酒をのんでいたり
チェシャ猫が獲物に躍りかかっていたり。
あり得たことと
あり得なかったこと。
アイスココアを飲み干すあいだに
ぼくは記憶の中の旅をしたんだ
ぼくしか知らない記憶の中の。