
(榛名山 2014年5月)
木はしゃべったり 動いたりしない。
しゃべったり動いたりしたことが
大昔にあったかどうか
世界中から神話を取り寄せて
調べたわけじゃないからわからない。
詩人がすすめるスコッチに口をつける。
その瞬間が好きなのだ
気泡入りの不格好な氷山が三つ四つ
クリスタルグラスとふれあって チリチリンと
硬い透きとおった音を響かせる。
そうしてなにをしているかというと
芝生の上のロッキングチェアにもたれて
ブナの梢が 夕暮れの風にゆれ
さわさわと波打っているのを見ている。
近くの枝でヤマバトが鳴いている。
「きみこういう音楽を知っているかね
ブラームスが渾身の叡智をふりしぼって書いたシンフォニーそっくりの。
さっきまでゴーギャンがむっつりとそこに座っていたよ。
楽譜のいらない この世のほとりの演奏会さ」
詩人はうれしげに微笑み 金色のウィスキーに口をつける。
・・・まるで永遠という女神への口づけみたいに。
木はしゃべったり 動いたりしない。
しゃべったり動いたりしたことが
大昔にあったかどうか
世界中から神話を取り寄せて
調べたわけじゃないからわからない。
詩人がすすめるスコッチに口をつける。
その瞬間が好きなのだ
気泡入りの不格好な氷山が三つ四つ
クリスタルグラスとふれあって チリチリンと
硬い透きとおった音を響かせる。
そうしてなにをしているかというと
芝生の上のロッキングチェアにもたれて
ブナの梢が 夕暮れの風にゆれ
さわさわと波打っているのを見ている。
近くの枝でヤマバトが鳴いている。
「きみこういう音楽を知っているかね
ブラームスが渾身の叡智をふりしぼって書いたシンフォニーそっくりの。
さっきまでゴーギャンがむっつりとそこに座っていたよ。
楽譜のいらない この世のほとりの演奏会さ」
詩人はうれしげに微笑み 金色のウィスキーに口をつける。
・・・まるで永遠という女神への口づけみたいに。