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二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

永遠への口づけ(ポエムNO.3-76)

2020年06月15日 | 俳句・短歌・詩集
   (榛名山 2014年5月)



木はしゃべったり 動いたりしない。
しゃべったり動いたりしたことが
大昔にあったかどうか
世界中から神話を取り寄せて
調べたわけじゃないからわからない。

詩人がすすめるスコッチに口をつける。
その瞬間が好きなのだ
気泡入りの不格好な氷山が三つ四つ
クリスタルグラスとふれあって チリチリンと
硬い透きとおった音を響かせる。

そうしてなにをしているかというと
芝生の上のロッキングチェアにもたれて
ブナの梢が 夕暮れの風にゆれ
さわさわと波打っているのを見ている。
近くの枝でヤマバトが鳴いている。

「きみこういう音楽を知っているかね
ブラームスが渾身の叡智をふりしぼって書いたシンフォニーそっくりの。
さっきまでゴーギャンがむっつりとそこに座っていたよ。
楽譜のいらない この世のほとりの演奏会さ」
詩人はうれしげに微笑み 金色のウィスキーに口をつける。

・・・まるで永遠という女神への口づけみたいに。

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