二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真家 田中長徳を再発見!

2014年01月30日 | 写真集、画集など
<左は「LEICA, MY LIFE」 右はカメラマガジン2月号>


ライカ熱が再発する危険が大きいのでしばらく買い控えていた。
しかし、何度も紀伊國屋へいって立ち読みしているあいだに、とうとう買ってしまった。
田中長徳さんの「LEICA, MY LIFE」(エイ出版)2200円+税。
田中さんはこの本は自分の“生前葬”だといういい方をしている。半分は私小説。そこがこの本をこれまでの写真機本と分かつ特徴となっている。

目玉商品かもしれない沢木耕太郎さんとの対談は、それほどおもしろくはなかった。
わたしがいちばん眼を瞠ったのは、
WIEN 2011
と題されたカラーネガの作品群。
いやはや、すばらしいの一語ですぞ!
カラーネガ、コダックのGOLD100で撮られた写真が32枚収録されてある。これがなかったら、わたしはこの本を買わなかったろう。



田中長徳さんは、写真家というより、写真機家だった、わたしにとっては。
これまでかなりの数の写真集をお出しになっているとおもうけれど、一冊ももっていない。恐縮ながら、欲しいと思ったこともない。
愛読したのは写真機への愛や、うんちく話を集めた本ばかりだった。
ライカやローライの伝道師。
はまるとこの人のお説教ほどおもしろいものはない。
メカ記事をお書きになる評論家は大勢いらっしゃるが、田中さんは別格o(゜∀゜)o
わたしもずいぶん洗脳された・・・ということは、過去に何回か書いている。
しかし、老大家かというと、そういう表現は似合わない。どちらかといえば永遠の青年タイプといっていいだろう、風貌は仙人めいているけれど。

田中さんは、奥様(家人、家人といっているが)と7年間もウィーンに住んでいたことがある。そのとき、モノクロ&ライカで撮ったフォトも、この本を陰影たっぷりに飾っていて、見応えがある。
時間の厚みが、単なる旅行者のものとは違うのが、読み込んでいくと、しだいに炙りだされる。
「そうか、外国の街をこんなふうに撮れるんだなあ」
生意気ないい方のようかも知れないが、わたしは写真家田中長徳を、再発見したのだ。
いまはなきコダクロームで撮影されたウィーン1973~1980もすばらしい。この7年間、田中さんは、ウィーンで暮らし、たくさんのライカや偽ライカとつきあいながら、写真を撮っていた。
それがこうして蘇ってくる。

デジタルを体験し、堪能したいま、彼はライカを同伴者として暮らしてきた半生を振り返る。そしてライカへのゆるぎない信仰を確認する。・・・そういう本である。



今月はカメラマガジンも読み応えがあった。
わたしが密かに注目している尾仲浩二さんの記事は、くり返し読んでいる。
少し温かくなったら、ローライやF3にネガカラーをつめて、わたしもまた街角に立ってみよう。

「視神経の覚醒はまず歩行から始まる。歩くことは自己確認の手段であると同時にこの世界を体験することだ」(田中長徳)
通常の街撮りで一日10~20キロも歩くという田中さん。まだまだ衰え知らずといっていいだろう。わたしより5歳年長だというのにね´Д`
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