二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

物語の終わり(ポエムNO.2-14)

2013年06月30日 | 俳句・短歌・詩集
手をのばせばふれることができるもの。
外界はそこにしかない。
このリンゴはたぶんスケッチするに値する。
きみのヒップは大勢に見られるに値する。
ことばとことばのつなぐ橋梁のようなところを
水色のアヒルが渡っていく。
自意識のゆれのような世界から抜け出して。

さあどこへいこう?
どこでもいい。
どこかへいこう。
あそこへいこう。
きみの乳房が 白い皿の上でプルンプルンとゆれるほうへ。
さっき描かれたばかりのピカソのゲルニカのほうへ。
世界は美しくなんかないだろう。

ぼくは水色のアヒルであり
政治家の口いっぱいに拡がった塩辛い海であり
愛を知らない信号機の点滅である。
そのことに気がついてしまったいま。
どこへいこう?
あそこへいこう たとえば白い自転車に乗って。
物語は終わったのだ。

カメラを手にしたとき見えてくるもの。
光と影が織りなす 絶妙な織物を首に巻いて
てくてく歩く。
てくてく 歩いていると
どこかへ出るだろう。
一寸法師のように小さな人が
巨大なライオンを手玉にとることだってありうるだろう。

ぼくの指先までのぼくの眼の旅 そこからさきの旅。
ある世界と世界の境界線上でカマキリ男が
身を折り曲げて吐いている。
あれはぼくの従兄なのだ。
きみもぼくももう十分に老いた。
さて・・・いやなんでもない。
なんでもないんだけれど。

さあどこへいこう?
どこでもいい。
どこかへいこう。

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