二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

涙の理由(ポエムNO.95)

2012年11月22日 | 俳句・短歌・詩集

こんな場所で生まれ
こんな場所でその生涯を終える。
ある日 親しかったはずの風景がずいぶん遠くに見える。
いつのまにか落ち込んでしまった穴蔵のような場所から
外の世界をのぞいているように。
他人の街に紛れ込んでしまったわけじゃないのに。
・・・これはなんという現象だろう?
疲れがたまって いくら寝ても消え去ってくれない。

ブルドッグをつれた散歩の女性が通る。
木枯らしが枯れ葉を吹き寄せているのに
焼き芋を焼こうという人はいない。
なんだろう なにかが断ち切られてしまって
帰るべきところには帰れない。
ここ数年 そんな人びとばかり眼につく。

昆虫も犬も猫も むろんすべての植物もごみは出さない。
ごみを出すのは人間だけ。
核廃棄物のような始末の悪いごみを出さずに生きていく方法ってないんだろうか?
マンスフィールドの「パーカーおばあさんの人生」を読みながら
なんてすてきな人生だろうって思ったぼくは変人なのか?
秋の西日を浴びながら ほらほら
街角にある時の溜り場が 墓石のように輝いている。

どこかからすきま風が入ってくる。
部屋の中に空気が入ってきては 出てゆく。
あんなふうにさりげなく この世から退場できたらいいのに。
厭世的な気分にとりつかれたぼくが声にならないうめきをもらす。
なにもかもが遠くに見える。
ぼくはそっちへ歩いてゆく。
これからもそんな努力をつづけよう。
「パーカーおばあさんの人生」を読みおえ
目尻のあたりを湿らすかすかな涙をぬぐったあとで。

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