永井荷風(1879~1957年)の最高傑作。「日和下駄」「断腸亭日乗」なども愛読するようになったが、それもこの一作にめぐりあったためである。はじめて手にしたのは二十代の終わりころ。しかし、書かれた内容に深く共感を覚えるようになったのは、四十代なかばになってから。
長編小説といいたいところだが、「作後贅言」をふくめても、文庫でたった180ページである。奇妙な一編の小説が日本や自分自身への絶望のう . . . 本文を読む
カフカ、ノサックなどドイツ現代文学の翻訳紹介者であるとともに、文芸批評家として活躍した中野孝次さんが、じつはこんなに平凡な人だったとはな~・・・。論争も辞さない鋭利な論客とのイメージがあったからである。雑誌「文学界」誌上で行われた座談会の席上、評論家の柄谷行人さんに罵声を浴びせ、怒鳴りあいになったと何かで読んで知っていた。
こういった個人的な手記とでもいうべきエッセイを5つ星で評価するのは空 . . . 本文を読む