うちのコンドは古いので、いつもあちこちで改修工事が行われている。
この棟には2基のエレベータがあるのだが、1基づつ交互に取り替え作業が行われている。
ハワイらしく、作業はのんびりと進められ、最近やっと2基とも取替えが終わったようだが、そのうちの1基の調子がどうも悪いようだ。
ある日使えるようになっていたかと思うと、次の日には稼動していない。
実際に使えている日に乗ってみると、ちゃんと止まる前にドアが開いたり、止まるときに異様にビョンビョンと振動が激しかったり。。。
きっと、こういう調整作業を行っているのだろう。
使用禁止の張り紙を張ったりはがしたり。
そんなことがもう5.6回続いていた。
ある日、エレベータを待っていると、例の調子の悪い方が来た。
相変わらずビョンビョンと揺れながらドアが開いた。
日本でもエレベータ事故があったみたいだし、いやだなあ、と思いながら乗った。
エレベータのドアは、ステンレス製。鈍い銀色に光っている。
壁にもたれ、ドアを見ると、そこに手形が!
ドアを一生懸命にこじ開けたような、引きずったような手の跡が!
いやーん。こわーい。
その手の跡の上には、指で書いた「Why」の文字!!!
「ぎゃーん。」
もっと怖ーい!
きっとこのエレベータ、誰かが乗ってるときに開かなくなっちゃったんだわー。
この人、必死になって手でドアを開けようとしたんだ。
そして、何時間たっても開かないドア。暗闇の中で薄れゆく意識。
「why」最後の力を振り絞って、彼女はドアにこう記した。
3階の我が家に上がるまでのわずかな時間に、妄想してしまった。
わたしの妄想をよそに、ビョーンと揺れながら無事、ドアは開いた。
あーよかった。あー、怖かったー。
ちなみに、このエレベータ、シンドラー社ではありませんでした。