街はもうクリスマスの装い。 毎年聴きなれた歌が流れる。 山下達郎の「クリスマス・イヴ」、松任谷由実の「恋人がサンタクロース」 今年もクリスチャンでない家庭も、クリスマス・ツリーの準備をし、子供たちへのプレゼントをそろそろ考えておく時期になった。 子供たちが小さい頃は、無神論者の私でさえも、似非(エセ)クリスチャンになったりしたものだ。
子供たちがまだ幼稚園にも行っていない頃のある年のクリスマス・イヴ、私たちはマンションの一階に住んでいたので、子供たちへのプレゼントをベランダの外に置き夜が更けるのを待った。 ケーキも食べ終わった頃、急におしゃべりを止めて、私が小声で言った。 「ベランダでなにか音がしたぞ、サンタクロースかな?」 子供たちは目を輝かせてベランダにすっ飛んでいった。 ベランダのサッシュを開く音がして、子供たちは「わっ」と叫んだあと一瞬の沈黙があった。 隣のおっちゃんがマンションの角を曲がるのが見えたらしい。 子供たちが嬉々としてプレゼントを抱えてリビングに戻ってきて言うのだ。 「サンタクロースは、となりのおっちゃんやった」 「おっちゃん、ありがとう」 この年は、なんだかあほらしいクリスマス・イヴだった。