雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のエッセイ「猫爺式小説作法?」第四回 

2015-11-30 | コラム
 第三回で用意した「あらすじ」で、出だしの部分を仕上げてみようと思う。


 猫爺の連続小説「賢吉捕物帖」第八回 此処で会ったが百年目

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   「おや? 何だろう」
 小さなお社の境内に人集りが出来ている。境内に走り込む人の群れは皆血相を変えている。賢吉は、その叫び声のなかに「仇討ち」という言葉を聞いた。仇討ちなど、生れてこの方見たことがない。恐いもの見たさに、賢吉も野次馬の一人になっていた。

 賢吉は、目明しの父親長次に言い付けられて、朝から叔父の家まで使いに行った帰り道である。
   「賢吉、この大根を持って帰れ」
 百姓の叔父が育てた立派な大根を、五つばかり束ねてを差し出した。
   「重いから嫌だ」
   「この罰当たりめ、重いから嫌だとは何事だ」
   「だって、この後回るところがあるのに、大根背負って行けねぇや」
   「どこぞのお坊ちゃんじゃあるめえし、何を軟弱(やわ)なことを言いやがる」
 それでも、賢吉は無理やり持たされて、捨てることも出来ずに大根を背負ってお社のところまで帰って来たのだ。

 お社の境内は、黒山の人だかりで、賢吉が潜り込もうとしても、弾き出されてしまった。
   「こら、子供が見るものじゃない、けぇれ」
 賢吉は未練気に人々の背中をみていたが、最初から見ていたらしく、微に入り細に入り説明をしている男が居た。賢吉が聞き耳を立てると、仇討ち側は、まだ年端もいかない少年とその姉だそうである。
 彼らは、花巻藩士倉掛半平太の倅・倉掛藤太郎と姉・美代と名乗ったそうである。敵は、元花巻藩士、笹川仁左衛門 訳は分からないが、姉弟の父を殺害し、江戸へ逃れてきたらしい。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 出だしは、ちょっと読者の興味を引くように、「仇討ち」の場所から入っていった。どんな小説でも、「出だし」は大切である。プロの作家は、巧みに読者を引き入れる。

 次回は、もう少し「仇討ち」の説明を入れて、この仇討ちに賢吉が違和感を覚えるところを書いていこう。
 
 
   「猫爺式小説作法?」第一回
   「猫爺式小説作法?」第二回
   「猫爺式小説作法?」第三回
   「猫爺式小説作法?」第四回
   「猫爺式小説作法?」第五回
   「猫爺式小説作法?」第六回
   「猫爺式小説作法?」第七回
   「猫爺式小説作法?」第八回
   「猫爺式小説作法?」第九回
   「猫爺式小説作法?」第十回(終)

猫爺のエッセイ「猫爺式小説作法?」第三回 

2015-11-28 | コラム
 「賢吉捕物帖」の第八回は、手の内を明かしながら書いてこうと思う。仮のサブタイトルを「ここで会うたが百年目」としておこう。

 ≪登場人物≫ 「レギュラー」
 主人公・賢吉、 賢吉の親分・右吉(元は地方の藩士・桐藤右近)、
賢吉の実父・長次(目明し)、 長次の下っ引き・幹太
賢吉の親友・長坂心太郎、 心太郎の父・長坂清心(北町の与力)、 

 ≪あらすじ≫ 「猫爺の空想から」
 賢吉は、父親の使いで叔父の家まで行った帰り道、仇討ちの場面に出くわす。
   討つ側 花巻藩士、倉掛半平太の倅・倉掛藤太郎(十三歳)と姉・美代(十七歳)
   敵 側 元花巻藩士、笹川仁左衛門 姉弟の父を殺害し、逃走中。
 賢吉は人だかりに阻まれて、見ることが出来ないので、見ていた人の話を聞く。姉弟は、逃げた敵を追って江戸に来て、捜しもとめて漸くここで会ったらしい。賢吉は、近くに有った木に登って見物することにした。
 屡々少年が返り討ちになりそうになるが、その都度見物人の怒号に救われて時が経つ。そのうち、見物人の一人が「役人が来た!」とさけび、敵の男は逃げだしてしまう。
 姉弟も、敵の後を追ってこの場を立ち去るが、その後、見物人の興奮が冷めると、あっちこっちで「懐の巾着がない!」「財布が無い」と、大騒ぎになる。賢吉は、敵や姉弟を追って駆け出すが、無人の荒れ寺に入る姉弟を見つけて様子を窺う。
 何と、敵役の男と姉弟は親子で、他の男は手練れの掏摸、やがて賢吉は掏摸の男たちに捕えられて手足を縛られる。

 賢吉の帰りが遅いと気付いた長次と右吉が賢吉の行方を捜して足取りを追い、荒れ寺に転がされている賢吉にたどり着く。

 以上の物語に肉付けをして、原稿用紙十五~二十枚程度の一編にして行く。

 次回は、エピローグ部分を書きます。

 
   「猫爺式小説作法?」第一回
   「猫爺式小説作法?」第二回
   「猫爺式小説作法?」第三回
   「猫爺式小説作法?」第四回
   「猫爺式小説作法?」第五回
   「猫爺式小説作法?」第六回
   「猫爺式小説作法?」第七回
   「猫爺式小説作法?」第八回
   「猫爺式小説作法?」第九回
   「猫爺式小説作法?」第十回(終)

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.27

2015-11-27 | コラム
 神戸は新開地通り、湊川公園のすぐ近くに、「春陽軒」という中華料理屋さんがある。猫爺が小学生の頃、正月のお年玉を貰うと、近所の悪ガキばかり何人か寄って春陽軒へ、当時「豚まん」と言っていた肉まんを食べに行った。我々にとって、年に一度の贅沢だったのだ。
 それも、「電車賃」を倹約するために、須磨から遠い道のりを喜々としてテクテク歩ていったものだ。

 その「豚まん」を土産に貰ったので、蒸し器で蒸しなおして、本日の「猫爺の昼餌」となった。それに、北海道限定(どこが北海道限定やねん、ここは兵庫県やで)と謳った日ハムの超人気者、「中田翔君」の雄姿がデンと載ったカップ「北の焼きそば」と、インスタント味噌汁である。

 以前、鯖煮の美味い料理法というのをテレビでやっていた。鯖切り身と、砂糖、醤油、酒などを調合したタレと共にビニール袋に入れ、水を張った鍋に袋ごと入れて火にかけ、65度になったら火を止めて人肌くらいまでに冷めるのを待つのだそうだ。
 冷めたら、フライパンに移し火にかけ、煮汁が少なくなるまで煮詰め、出来上がりだとか。これだけのことをしていたら、冷めるのを待つ時間ともで一時間あまりかかってしまった。
 普通に煮ると、五、六分で煮上がる。テレビでやっていたのと、普通に煮たのでは、美味さはさほど変わらなかった。鯖煮は鯖煮である。いや、猫爺など、普通に飴状に煮た鯖煮の方がむしろ美味しいと思うが、猫爺が変なのか?

 

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.26

2015-11-26 | コラム
 猫爺の得意料理は「ホワイト・リゾット」 ホワイトと言っても、チーズも牛乳もクリームも入っていない。入っているのは、ちょっと贅沢な伯方の塩だけ。米を炒るのも省略するので、和風に言えば「粥」である。

 もう一つ得意料理に、「ハヤシライス」がある。紙の箱に入り、おまけにポリプロピレンのパウチに入っており、お湯で温めると出来上がる。

 今日の昼餌は、サ〇ゼリアの「ハヤシライス」 薄切り肉(多分豪州産)がたくさん入って、一見ゴージャスかな? と思うのだが、惜しいことに「肉のコク」がない。味はレトルト(一箱89円)のハヤシライスに負けていたような。

 いえ、決してサイゼ〇アの悪口を書いているのではない。なにしろ完食して、「げっぷ」をしながら買い物に回ったので、余分な食材を買わずに済んだのだから有難いことだ。

 

猫爺のエッセイ「猫爺式小説作法?」第二回 

2015-11-26 | エッセイ
 庭の千草も虫の音も、枯れて寂しくなりにけり (関係ないけど…)


 猫爺の作品は、小説とは名ばかりの文才もなければ、巧みな表現力もない稚拙なものだが、目的は「ボケ防止」である。
 こんな物でも書き続けていると、「未だ呆けていないぞ」と気を良くしているが、そう思うのは自分だけかもしれない。

 庭の千草も、ボケのことも、こっちゃへ置いといて、猫爺の小説作法というか、手の内ばらしというか、参考にもならない反正当的な「はちゃめちゃ作法」を、猫爺の空想から短編か掌編を書き上げるまでシリーズで投稿していきたいと思っている。

 空想から始まって、あらすじを組み立て、できるだけ読まれる方に分りやすいように表現してみようと考える。それは、正当なものではなく、あくまでも猫爺の「我流」であるから、「批評」を受ける値打ちさえないものであろう。

 今回は、猫爺の勝手な「線引き」を示しておこうと思う。

 使っているツールは、MicrosoftOfice2013 のワードである。このソフトは、文章の間違いなどを指摘してくれて便利なのだが、「関西弁」は、殆どアウトである。「池田の亥之吉」や「チビ三太ふざけ旅」を書いた時は、青や赤の波下線だらけであった。

 タイトル右に、原稿用紙○○枚と記しているが、あれは「ワード」が示してくれる原稿用紙枚数で、長い文章を避けられる方の為に記しているのだ。

 300枚以上を、猫爺は「長編小説」と言っている。
 30枚から299枚までを「短編小説」
 30枚以下を「掌編小説」 以前は勝手に「ミリフィクション」と銘打っていたが、長っちょろいので止めて、元来の誰にも通じる掌編(しょうへん)に戻した。

 文体は、主に「だ・である調」の常体を用い。「です・ます調」の敬体を混ぜない。
話体は、原則として現代用語で、雰囲気を出す為に「江戸時代話体」を少しばかり用いる。

以上のようなことを、勝手に取り決めている。

ご興味がおありであれば、お暇な折にどうぞ…。

   
   「猫爺式小説作法?」第一回
   「猫爺式小説作法?」第二回
   「猫爺式小説作法?」第三回
   「猫爺式小説作法?」第四回
   「猫爺式小説作法?」第五回
   「猫爺式小説作法?」第六回
   「猫爺式小説作法?」第七回
   「猫爺式小説作法?」第八回
   「猫爺式小説作法?」第九回
   「猫爺式小説作法?」第十回(終)

猫爺の連続小説「賢吉捕物帖」第七回 温情ある占い師2 (原稿用紙20枚)

2015-11-25 | 長編小説
 相も変わらず、占い堂は人気を集めて依頼者の列ができていた。右吉と賢吉は、こっそりと列の最後尾に並び、おとなしく順番を待っていたのだが、占い師陣容の一人が気付いて近寄ってきた。
   「お役人さん、また見張りでございますか? 私どもは何も不正はしおりません」
   「いや見張りではない、昨夜成松屋へ盗賊が押し入ったので、その隠れ処を占って貰おうと思うのだ」
 何と横着な目明しであるが、相手の反応を見ているのだ。賢吉が、男の顔色を窺っていたが、動揺している気配はなかった。
   「さようでしたか、物騒でございますね、先生ならきっと何か手掛かりを見つけましょう」
 男は引き下がり、お堂の中へ消えた。占い師に報告を入れる為だろう。やがて順番がきて、右吉たちは呼び込まれた。

   「恐ろしいことです、それでお店の方々はご無事でしたか?」
 占い師は、その答えを知っていながら訊いている様子であった。
   「ただ一人として命を取られることも、傷付けられることもなく、全財産を持ち去ることもありませんでした」
   「それは不幸中の幸いでした」
   「非道働きが多いなかで、情のある盗賊です」
 占い師の口元が緩むのを、賢吉は見逃さなかった。
   「それで、何を占いましょうか?」
   「盗賊の手掛かりです、隠れ処などが分かればよいのですが」
 占い師はさっそく瞑目して、暫くはそのままで身動ぎもしなかった。再び目を見開くと、厳かに答口を開いた。
   「盗賊集団は、いま甲州街道に向かっています、早く手配なさるが良いでしょう」
   「甲州街道を、どこへ行くつもりでしょう」
   「甲府か、信濃か、それ以上のことは占いでは知ることが出来ません…」
   「ところで奪った千両箱は、持っていますか?」
 占い師は即答した。
   「たかだか千両箱三つです、置いてゆくこともないでしょう、担いでおります」
 聞いていた賢吉が、「早くお奉行に手配をして貰いましょう」と、右吉に耳打ちをしたが、それは占い師の耳にも届いているようであった。
   「わかりました、そんな物を担いでおれば直ぐに見付けられることでしょう、いや、お蔭を持ちまして、盗賊の集団を見つけたのも同然です」
 占い師は、黙って頷いた。
   「占い料は、如何程でしょうか」
   「個人であれば、五十文も戴ければよいのですが、あなたはお上の御用で参られたのですから、一両頂戴致します」
   「わかりました、わたし共はそんな大金は持っておりません、上司に払って頂きますので、どなたかに奉行所まで取りに来て戴けませんか」

 右吉たちの後から、「付け馬」が付いてくる。占い料などに執着しない集団なのに、奉行所の様子を探るためだろうか。賢吉が思い着くのは、奉行所が集団の正体を感づいているのではないか探ろうとしているのであろう。金を出す上役の言動など奉行所の空気に神経を注ぐに違いない。

 ただ歩いているだけではあるが、やはり男の足取りが軽い。コイツも忍びに違いないと賢吉は確信した。
   「右吉親分、親父が心配していると思うので、俺はここから家に帰ります」
 賢吉は、右吉に告げると、脱兎のごとく駆け出して行った。

 右吉と「付け馬」は、北町奉行所の門前に立つと、その前に二人の門番が立ちはだかった。
   「右吉、その男は?」
   「はい、今評判の占い師の陣容の方です」
   「長坂清心さまの言い付けで占って貰ったのですが、長坂さまから占い料を預かって行くのを忘れました…」
   「さようか、長坂さまは奥に居られる、入りなさい」
 普通なら、胡散臭い男を連れて行けば、おいそれと門内に入れてくれる筈はないのだが、どうやら賢吉が先回りをして話しておいたに違いない。

 門内に入ると、与力の長坂清心が待ち受けていた。
   「右吉、盗賊の行方を占って貰ったか」
   「はい、盗賊集団は、甲州街道を甲府か信濃方面に向かっているそうでございます」
   「千両箱を抱えて小仏関所までは、男の速足でも五日はかかるだろう、早馬を飛ばして関所に手配させよう」
 長坂は、思い出したように右吉に付いてきた男を見た。
   「ところで右吉、この御仁は?」
   「占い師集団の陣容の方で、わたしが占い料を払う金がなかったので、ここまでご足労願いました」
   「左様か、それはご苦労であった、いくら払えばよいのだ?」
   「一両頂戴致します」
   「では、これを…」
 長坂は用意した一両を出すと見せかけ、懐に忍ばせた懐剣を出して男に突き付けた。男は身軽に後方に跳び、懐に手を突っ込んで構えた。
   「いやあ、済まぬ、済まぬ、間違えてしまった、許してくれ」
 懐剣を懐に仕舞うと、小判を一枚出した。
   「一両で御座ったな」
 長坂が小判を差し出すと、用心しがら手を出した男のその手首を長坂が掴んだが、男はスルリと外すと長坂を睨みつけた。
   「何をするのだ」
   「其処許は、忍びで御座るな」
   「忍びならどうした」
   「成松屋を襲った盗賊も忍びの疑いがあるので、訊いてみただけで御座る」
 黙ってその場を去ろうとした男を、右吉が遮った。
   「尋ねたいことがある、暫し待たれよ」
 右吉、無意識で武士に戻っていた。尚も右吉を振り払い、逃げようとする男を、右吉は後から十手で羽交い絞めにした。すばしっこさでは男に敵わぬ右吉も、力では負けていなかった。
   「待てというのが分からぬか」
   「煩い、貴様俺を嵌めやがったな」
 そこへ、目明しの長次と同心が走り寄り、男をお縄にした。賢吉も植え込みの中から、ひょいと姿を出した。
   「成松屋の主人に、お店の信用に関わるから盗まれた千両箱の数は内密にしてくれと頼まれていて、誰も喋っていないのに占い師は千両箱三つと言ったのですよ」
   「それは占いで当てたのだ」
 男は暴れながら叫んだ。
   「黙れ! それにお前が忍びであることが怪しい、伊賀者の集団であろうが」
 男はいきなり着ているものの襟を噛もうとした。
   「そうはさせないぞ」
 長坂は言うと、男の着物の襟を懐剣で切り裂き、小さな紙袋を取り出した。中身は笹ケ森と呼ばれる猛毒の砒素である。安土桃山時代の「伊賀者」のしきたりが、江戸時代の今も受け継がれているのだ。しかし、このことで占い師の集団が盗賊であると長坂は確信した。自害をしてまでも守らなければならない程の秘密を、集団は抱えているのだ。
   「捕り方を引き連れて踏み込んでくれ」
 長坂は、古参の同心に命令した。
   「はっ、承知仕りました」
   「賢吉行くぞ、捕物をよく見ておくがよい」
   「はい」

 占い堂は、昼までの占いを終えて一旦扉を閉めたところだった。二人の男が表の掃除をしている。そこへ右吉と賢吉がやってきた。
   「今、朝の占いが終わったところです、半刻のちにお出でください」
 言葉は丁寧であるが、態度は横柄である。
   「いや、占って貰いに来たのではない、建物の中を調べる」
   「何故でございますか?」
   「成松屋で盗まれた千両箱を、ここに隠している疑いがある」
   「我々がその盗賊だと言われるのか」
   「まだ疑いだ、入るぞ」
   「何を証拠に言っておられる」
   「その証拠を探させて貰う」
   「そんな強引な」
 男二人は、何が何でも入れてなるものかと、立ちはだかった。何処かで様子を見ていた同心たち捕り方が集まってきた。それを見て、男たちは堂内の占い師のところへ駆け込んだ。

   「お待ちください、我らが盗賊だという根拠を見せて頂きたい」
 頭目であろう、占い師が仁王立ちになり、男たちがその両脇と後方を固めた。
   「建物の中のどこかに隠している筈だ」
   「筈だというだけで家探しをされても困る」
 同心の一人が占い師の前に進み出た。
   「お前たちの仲間が一人我らの手に内にある、忍びであると判明致した」
   「忍びは皆盗賊だと言われるか」
   「ヤツは、自害しようと致したぞ、ヤツが命を持って守ろうとした秘密は何だ」
   「我らに秘密などない、何かの間違いでしょう」
   「間違いかどうか、ここを家探しすれば分かることだ」
   「家探しをして、何も出ないときは何とされます」
   「その時は、お前たちは疑いが晴れる」
   「それだけですか、我らが被った屈辱と、落とした信用はどう償われる」
   「それは、何も出なかったときに改めて考えよう」
   「無茶な…」

 お堂とは言え荒ら家、大きな千両箱を隠す場所などそうは無かろうと侮ってかかったが見つからない。家探しする同心、長吉や右吉たちに焦りの色が出てきた。大口を叩いた手前、引っ込みが付かないのだ。
   「運び出して、他へ移したのだろうか」
 同心の一人が、諦め加減で呟いた。
   「賢吉はどう思う?」
 右吉が、考え込んでいる賢吉に声をかけた。賢吉は頼みの綱だったのだ。
   「ちょっと考えさせてください」
   「よし」
 占い師が、「それ見ろ」と言わんがごとくにやけている。

 縁の下も、天井裏も隅から隅まで探したが見つからなかった。押しかけた捕り方が諦めかけたとき、ようやく賢吉の顔が綻んだ。賢吉は、厠に目を付けたのだ。厠(かわや)とは便所のことで、当時は後架(こうか)とも言っていた。
   「わかった、厠ですよ」
   「厠も散々調べたぞ」
 与力の一人が憮然として言った。
   「糞尿も竹で突いて調べた」
   「違います、糞尿に沈めているのではありません」
 天井や壁をトントン叩いて調べたが、壁は厚みが無く、天井は屋根の傾斜がそのまま見えている。
   「壁は外に回ってみたが厚みはない」
   「天井も調べたぞ」
 賢吉は、床を拳で叩いて確信した。
   「足元ですよ、床に厚みがあっても、便器の囲いで気が付かないのです」
 占い師の薄ら笑いが消えた。それを賢吉は見逃さなかった。
   「例え釘付けしていようとも、何処か開くところがある筈です」
 床に羽目の蓋も無ければ、切れ込みらしき形跡もない。
   「床を壊しましょうか?」
 同心たちが壊そうと合意したところで、賢吉が待ったをかけた。
   「羽目の蓋が無ければ、床全体が蓋なのかも知れません」
 天井の付梁に縄をかけ、一端を厠の外へ、もう一端に身の軽い賢吉の腰に巻き付け、天井から賢吉がブラ下がり、「金隠し」を持ち上げた。床は周りにぴったりくっ付いていて重かったが、持ち上げることは出来た。
 千両箱は、三つだけではなかった。もう三つ、合計六箱が並べられていた。
   「賢吉良くやった、お手柄だ」
   「そんなことよりも、早く盗賊を捕まえてください」
 だが、遅かった。捕り方が気付いたときは、盗賊の一味は素早く逃げ去った後であった。

 後日、三千両は成松屋にはそっくり戻されたが、残りの三千両の出処が不明であった。江戸に、はそれに該当する被害届はなかったからだ。どこかの藩で奪った金を江戸に持ち込んだのであろうと、長坂清心は、京や浪花方面へ問い合わせするつもりだが、当面は奉行所預かりとした。気になるのは逃げた盗賊の集団である。

 長坂家の長男心太郎と剣道の手合わせをしていた賢吉は、屋敷に戻って来た長坂清心のもとに駆け寄った。
   「お帰りなさいませ、盗賊の手掛かりが見つかりましたか」
   「いや、さっぱりだ、ヤツらは金を取り戻す為に、再び成松屋を襲うかも知れぬ」
   「一度襲った商家を、もう一度襲いますか?」
   「金蔵の錠前は壊されていない、だが盗賊共が今後の為に鍵の形を写し取っていたとしたら、もう母屋を襲う必要はない、行き成り金蔵を開けて易々と千両箱が奪える、今度は我らへの面当てで六千両を奪うだろう」
   「長坂さまのお考えは分かりましたが、いつ成松屋を襲うかがわかりません」
   「そうだなぁ、一人や二人で張り付いても、相手は多勢だ、わしの押し当てで捕り方を幾日も張り付かせるわけには参るまい」
   「その前に、掴まっている仲間を助けに来ると思われませんか?」
   「猿轡を噛まされてまだ生かされていると分かれば、寧ろ殺しに来るだろう」
   「生かされて拷問を受けているという噂を広めましょう、きっと焦って事を急ぐでしょう」
 成松屋を襲うのが先か、掴まった仲間を殺しに来るのが先か、何れにせよここ数日のうちに動くに違いないと賢吉は睨んでいる。
   「長坂さま、成松屋は俺が小僧に入って見張ります」
   「賢吉一人では、大勢の盗賊に太刀打ち出来ぬではないか」
   「太刀打ちはしません、ちょっとでも不可解な出来事があれば、お知らせに来ます」
   「それで間に合うのか?」
   「盗賊が襲うまえに、きっと何かが起こります」
   「例えば?」
   「妙な客の探るような仕草とか、夜中に役人が見回りに訪れるとか」

 賢吉のは自信あり気である。長坂は奉行の許しを得て、成松屋に賢吉を張り付かせることにした。成松屋の主は、賢吉が子供であることが不安のようであったが、長坂に説得されて受け入れることにした。

 賢吉が見張り小僧になった翌日に、役人と思しき男が見回りに来た。
   「北町の与力、長坂清心である、今夜あたりに盗賊が取り戻された千両箱を再び奪いに来る恐れがある、深夜は我々が店の前に隠れて見張っているので安心致せ、決して取り乱すではないぞ」
 賢吉は長坂の声を知っている。明らかに偽者だ。番頭は、ペコペコ頭を下げて承っていた。賢吉は偽長坂の顔をしっかり見たところ、やはり占い師のところで見かけた記憶がある。賢吉は奉行所へ走った。

   「そうか、すぐに手配して貰おう」
 賢吉は奉行所に立ち戻り、右吉に報告した。右吉から長坂に、そして奉行へ伝えられて、同以下捕り方の手配万端、深夜になる前に少し離れたお店や、空き家などに隠れて、与力が率先して飛び出し、采配を振るのを待つ。

 真夜中過ぎに、成松屋の戸が叩かれた。
   「はい、何方さまでいらっしゃいますか?」
   「拙者だ、昼間声を掛けた北町の与力、長坂清心である」
   「はいはい、ただいまお開け致しますが、用心の為施錠致しましたので、暫くお待ちを」
 昼間応対した番頭が答えた。
   「何をしておる、捕物で怪我を致した者の傷口を洗ってやりたい、水を所望致す」
   「申し訳ございません、鍵はあるじが持っております、今呼びに行っております、今暫くお待ちを」
   「左様か、早くしてくれ」
 さらに待たせたので、焦れて戸を叩き続ける。
   「早くせんか、戸を壊すぞ」
   「あ、漸く主が参りました、ただいまお開けします」

 その時、急に表が騒がしくなった。「御用」「御用」の声とともに、十手の鉤で刀を受け止める音、刀の鎬を削る音が聞こえる。恐いもの見たさで、賢吉が戸の覗き窓を開いた。驚いたことに、右吉が刀を振り回している。十手では思い切り戦えず、賊の刀を奪ったようだ。
   「右吉親分は、やはり根っからの武士なのだ」
 右吉は水を得た魚の如くきびきびと立ち回り、峰打ちで次々と賊を倒していった。捕物が終わるとポイと刀を捨てて、涼しい顔で賢吉に合図を送ってきた。「もう出てきても良いぞ」という合図だ。
 右吉の様子を見ていた長坂は、「早く身を固めさせて武士に戻してやろう」と、密かに思うのであった。

 成松屋を襲おうとした盗賊は、悉くお縄になった。盗賊集団は奪った小判で、何を企んでいたのだろう。恐らく、この集団の他にも第二、第三の盗賊集団が存在するに違いないが、誰一人吐かぬままに処刑されて露と消えた。

 「賢吉捕物帖」第七回 温情ある占い師2 (終)

  「賢吉捕物帖」第八回 執筆中

  「賢吉捕物帳」第一回 大川端殺人事件へ戻る

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.22

2015-11-22 | コラム
 今日、日曜日はテレビでスポーツ満載の日だった。まさしく「スポーツの秋」である。サッカーあり、野球あり、ゴルフあり、アメフトあり、相撲ありと、テレビ点けっぱなし。

 そんな訳で、(どんな訳や!)昼餌は全くの手抜きだった。一番安物のカップ焼きソバ(88円也)と残りもの。

 相撲の千秋楽を観ていて思ったのだが、「国歌斉唱」は、モンゴルの国歌にするべきではないだろうか。横綱三者ともモンゴル出身だし、優勝したのはモンゴル出身の日馬富士だから「君が代」が可哀そうだと思うのは猫爺だけだろうか。日本の国技だから仕方ないのだろうが…。

 ブログの更新は、「のんびり行こうよ」というところ。なかなか気が向かないのは、テレビの観すぎかな?

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.20

2015-11-20 | コラム
 今日の猫爺の昼餌は、定食屋さんの「なんちゃら御膳」と名付けられた定食(980円也)。 猫爺にすれば、これでも大贅沢。なんだかんだチョコチョコ品悪く寄せ集めたもので、小豆と団子のスイーツがちょこっと付いていた。団子は緑色に着色していたので、マスカットかと思った。

 テレビで「サバ味噌煮」の作り方を説明していた。若い頃、三ノ宮の飯屋で、よく昼飯のおかずに選んでいた好物なのだ。そのサバ煮の新しい作り方だそうで、サバ切り身と調合した汁をフリージングバッグにぶち込み、レトルト・カレーを温める要領で鍋に水を張り、高温にならないように(60度位と言ったかな?)コトコトと十何分煮るのだそうな。煮るというよりも湯煎だな。これで美味しい「サバ煮」が出来るのだそうな。
 今はサバが旬なので一度やってみようと思い録画しておいた。不器用な猫爺にも作れそうかな?

 今年は柿が安かったので、一箱(20個入りだったかな?)買ってきて完食した。無くなると寂しいもので、また買ってこようかな? と、思っているが、急激に値上がりしていたりして。

 高値だった大根が値下がりしていたで一本買ってきて「おでん」にしたのだが、その不味いこと。あれは何だったのだろう。輸入物だったのだろうか。しかし、大根を輸入するのかな?

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.16

2015-11-16 | コラム
 今日の昼餌は、cafe de crieの「ソフトフランス・あらびきソーセセージとアイスコーヒーのセット(450円) 以前はこの場所にドトールがあり、ここのジャーマン・ドッグと同じようなもの。パンがちょっと白いけれど…。

 世界野球プレミア12 今日準々決勝開幕で、日本×プエルトリコ サムライ・ジャパンの活躍には感動させられっぱなし。今日の先発ピッチャーは前健とか、ワクワク感が止まらない。なにしろ一発勝負なので、ハラハラも、ドキドキも覚悟しておこうと思う。

 

猫爺の日記「雨の慕情」'15.11.15

2015-11-15 | コラム
 猫爺、朝早くから八代亜紀の「雨の慕情」を歌っている。「いい年をして、何ですのん?」と嘲笑されそうですが、実は今日「隣保寄っての表通り掃除当番」なのだ。
 雨が降れば中止になり、次のグループへバトンタッチする。ところが、早朝から微妙な雨降りである。顔を空に向けると、霧のような雨を感じる程度。

 雨雨降れ降れ、もっと降れ(^^♪

 何だか東の空が、明るくなってきたような悪い兆し。(-й-)

 そこで「雨の慕情」になったわけ。 要するにサボりたがり爺。 年を取ると、たかが掃除でもなかなか「しんどい」のだ。

 さっき朝食をとった。朝食だけはあれこれ考えないように、食パンの山形五枚切りを一枚と、一袋10円の青汁にオリゴ糖を一滴入れたもの。マグロ缶詰のサラダ、あとは毎朝飲む薬が前後計6錠、これで満腹になる。薬も食事の内に入っているのだ。

 さあ、そろそろ掃除の準備だけはしておこう。

 

 


猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.11

2015-11-11 | コラム
 本日は、「パソコン工房」まで行ってきた。ツレが、何やら買うというので、ついて行った訳だ。猫爺の場合は、大阪の店では「しょんべん」と言われているヤツで、店には入ったが何も買わずに出てきた。

 欲しいかな? と思うのは、27インチのモニターが2万7千円(1インチ千円?)とは、ちょっと高いなぁと思ったのと、複合プリンタが4400円は安いかな? と、思っただけ。

 帰りに「業務スーパー」に寄って、バナナが五本で30円、グレープフルーツが一玉10円、夕食に「おでん」でも食べようと、食材を買ってきた。すじ肉とか、練り物とかは安いのだが、大根が「えーっ」と驚くほど高かった。それとキャベツも。そうかと思えば、きれいなレタスが一玉30円。松茸が、ひと盛り1200円とか、何か「おちょくられて」いるような値段であった。

 昼餌は、「蔵ずし」で、寿司を食わずに天丼と味噌汁だけを食べて満腹になった。

猫爺の連続小説「賢吉捕物帖」第六回 温情ある占い師 (原稿用紙17枚)

2015-11-09 | 長編小説
 北の与力、長坂清心の屋敷に居候している元武士桐藤右近(とうどううこん)こと駆け出しの目明し右吉(うきち)は、朝早く賢吉の声に起こされた。
   「凄い占い師が江戸にやって来て、貧しい人からは料金をとらずに占ってくれるのです」
   「賢吉、金持には高額を吹っ掛けるのだろう」
   「出張って占うので、ほんの出張料程度でよく、最高でも一両を超えることはないのだそうです」
   「どのように占ってくれるのだ」
   「ジッと相手の目を見るだけです、占いばかりではなく、悪霊による病気もお祓いしてくれるそうです」
   「どのように?」
   「先生の前に座るだけで、これは悪霊の所為だ、流行り病の所為だと振り分けてくれます」
   「ふーん、嘘臭いなぁ」
   「右吉親分もそう思いますか」
   「まあ、貧しい者に被害がないのが何よりだ、金持ちも一両程度なら気が晴れて、満足するのだろうから被害とは言えないだろうな」
   「被害が出始めるまで、それとなく見張っていましょうか」
   「そのうち依頼者になって、探りを入れてみよう」
   「はい」

 だが、占い料が吊り上がる訳でなく、金持ちだけを依頼者とするでもない。貧富公平で真剣に占っているようである。出張る理由として、町なかと言うのに空き地に頗る粗末な小屋を建てて御堂と称し、そこで一向に勿体ぶることもなく依頼を受けている。その近しさが庶民の人気を集める要因になっているようだ。

 そのうちとは言ったが、気になって翌々日に右吉と賢吉はノコノコ出かけて行った。依頼者は列をなしていたので、右吉たちも並んだ。占う様子を見ていたが、やはり賢吉が持ってきた情報のごとく、大した占い料を取らずに次々と相談事に助言し、時には病気の対処法や流行り病に関しては医者に診て貰うように勧めていた。

   「先生、次の方をお呼びしてもよろしいか?」
 弟子であろう若い男が窺(うかが)いをたてた。先生と呼ばれた占い師は、頷(うなづ)いて言った。
   「お上がり願いなさい」
 呼ばれたのは、夫婦者であった。
   「夫は太助、私は妻のシカで髪結いを生業(なりわい)にしてございます」
   「何を占いましょうか?」
 夫らしい男は不貞腐れている。妻が恐る恐る訴えた。
   「五歳になる倅ですが、家出をして一ヵ月も経つのに戻らないのです」
   「親戚や、知人の家には探しに行ってみたのか?」
   「はい、わたくしが血眼で探し続けました」
   「その間、父親は何をしておったのだ」
 男がそれを聞いて、熱り立った。
   「お前は占い師だろ、余計なことを訊かずに子供の居場所を占え」
 占い師の側近の者が、慌てて男を窘めた。
   「先生に無礼であろう」
 占い師は、到って冷静であった。
   「良い、良い、それも道理じゃ、どれ占って進ぜよう」
 占い師は暫く夫婦の目を見ていたが、妻に向かって口を開いた。
   「子供の父親は如何致した?」
   「は?」
   「実の父親だ」
 男は怒って占い師の胸倉を掴みかかったが、側近の者たちに取り押さえられた。
   「その男は、実の父親ではなかろう」
   「お察しの通り、後夫(うわお)でございます、子供の実父は、死別しました」
   「では占いましょう」
 占い師は瞑目し、暫くは身動きもしなかったが、ゆっくりと目を開くと物静かに言った。
   「ところで、子供の居場所が見つかれば何と致す」
   「連れ帰ります」
   「さようか、では訊くが子供は何故家出をしたと思うのか?」
   「わかりません」
 占い師は再び瞑目して、次に目を開いた時は一段と厳しい目になっていた。
   「居場所は教えぬ」
   「何故にございますか?」
   「そなた達は、自分たちが子供にしたことを一向に反省しておらぬではないか」

 そればかりか、占い師は恐ろしい事実を話した。ある夜、母親が花嫁の髪を結うために先様に出張って家を留守にしたおり、男は「腹が減ったから、蕎麦を食いに行こう」と、子供を連れ出し、橋の上から子供を投げ落としたと言うのだ。
 その時は、偶々橋の下で夜釣りをしていた男が気付き子供を助けたが、子供は恐怖のあまりに家に帰るのを拒んだのであった。
 男は自分に懐かぬ子供に暴力を振い、母親は暴力を見て見ぬふりで男の機嫌取りをするばかりである。子供の居場所を教えると、子供は男に殺されると占い師は思ったのだ。
 男は顔を真っ赤にして、自分を取り押さえている側近の男の手を振り放そうともがいている。
   「この嘘つき野郎! 見てきたような事を言いやがって」
 実は、これは占いの結果ではなくて、子供を連れて占い師のところへ相談に来た男が居たのである。子供を助けた釣り人だ。占い師は子供の訴えを訊いて家には帰さずに、あるお寺へ十両の小判を渡して預けることにした。両親の名を訊いて、占い師が子供の両親だと気付いただけである。

 子供の義父太吉は、占い師の喋ることがあまりにも事実のままなので、負け犬のごとく意気消沈している。
   「これ以上子供の行方を探そうとするなら、子殺し未遂として役人に引き渡す、そうなればお前は遠島になるであろう」
 占い師は太助に釘を刺すと、おシカに顔を向けて言った。
   「おシカ、そなたも子供を顧みずに男と睦み合って、子供が愛想を尽かしておるぞ、以後、一端(いっぱし)の母親気取りで子供に会いたいなど思わずに精々男に可愛がって貰え、やがて捨てられる日がくるまでだが」と、占い師は憎々し気に言い放った。

 夫婦は、追い立てられるように帰っていった。
   「凄いものだ、占いであれ程言い当てるとは…」
 右吉が賢吉にこっそりと漏らした。すっかり占い師に傾倒しているようである。
   「次の人、御堂へお上がりなさい」
 右吉と賢吉が呼ばれた。二人揃って占い師の前に進み、頭を下げた。頭を上げた二人に、占い師はいきなり敵意を露わにした。
   「そなたは変装して来たお役人ですね、与力ですか、それとも同心ですか?」
   「いえ、わたしは町人でございます」
 右吉が畏まって答えた。
   「嘘ですね、あなたの右手の指に、剣ダコがあります」
   「あ、これは剣ダコではなく…」
   「どうして隠す必要があるのですか、私を探りに来たからですか?」
   「いえ、とんでもございません」
   「では、何を占ってほしいのですか」
   「はい、こちらの倅のことでございます」
   「また、嘘をつくのですか、その子があなたの子供とすれば、あなたが十二、三のときの子供ですね」
 取りつく島が無いと言うか、見透かされていると言うか、右吉は逃げるようにその場を離れ、賢吉もそれに従った。

   「あの占い師は本物だ」
 右吉は、興奮気味にため息をついた。
   「右吉親分、俺はそうは思いません」
   「何故だ?」
   「あの夫婦のことは、子供を助けた釣り人が占い師に教えたのでしょう」
   「そうか、恐れて帰りたがらない子供を連れて、占って貰いに来たのか」
   「多分、そうでしょう」
   「では、わたしのことを見破ったのは?」
   「それも、占ったのではありません、占い師の観察眼でしょう、俺だって分かることです」

 右吉には分からないことがあった。次々と依頼の者を占ったわりには、料金が二文とか精々五十文程度しか取らないのだ。それで十人程度は居た側近の者にお手当が払えるのだろうか、生活はどうなっているのだろうか。右吉は「嘘だろう、仙人じゃあるまいし」と、首を傾げた。

 右吉は忘れていたのだ。占い師は、午後になると、時々金持ちの屋敷に呼ばれて、郎党を引き連れて出張(でば)って行くのであった。
   「そうか、金持ちからは、ごっそりと戴くのか」
 だが、賢吉が訊いてきた情報では、一両が最高だと言っていたのを思い出した。
   「感心な占い師だ」
 右吉は、それっきり占い師のことを忘れてしまつた。

 それから幾日か経ったある日、北町奉行所からさして遠くはない大店に、夜盗が入った。ただ、一人たりとも命は取られず、血の一滴さえも流さず、千両箱が金蔵から三箱だけ持ち去られた。奉行所の面目は丸潰れである。奉行からの探索命令が下りて、奉行所の中は大騒ぎになった。当然、長坂からの命で、目明しの長次と右吉にも聞き込みの指令が下った。
   「店の者の証言で、盗賊は十人を超えていたそうだ、気を付けて探索に当たれ」
 完全に覆面をしていたうえ、一言も発することがなかったとの店の者の証言である為に全く手掛かりがなく、長次や同心たちも、どこから手を付けてよいか分からなかった。だが、右吉だけはよい思案が浮かんだようである。
   「右吉親分、どこへ行くのですか?」
 賢吉は右吉の後を追いながら尋ねた。
   「決まっているだろ、占い師のところだ」
   「怪しいのですか? あの集団が」
   「違うよ、盗賊の手掛かりを占って貰うのだ」
 賢吉は、右吉を止めた。
   「その前に、襲われたお店(たな)へ聞き込みに行きましょうよ」
   「占って貰えば、その必要はなかろう」
   「ある程度の情報を持って行った方が良いのではありませんか」
   「他の誰かが先に行くということもある」
   「では、本心を言います、俺はあの集団を疑っています」
   「まさか、あの善人集団が夜盗だなんて」
 右吉は大笑いをしたが、賢吉が大真面目なので従うことにした。

 賢吉が、大店の主(あるじ)に尋ねた。
   「旦那様、盗賊はどこから入ったのでしょう」
   「同心の方にも訊かれたのですが、それがさっぱり…」
   「最近雇った店の使用人は居ますか?」
   「いいえ、ここ何年かは雇っていません」
   「お店の方々は皆縛られたそうですが、誰も逃げなかったのですか」
   「夜中に起こされて、行き成り当て身を食わされて、苦しさの余り気が朦朧としている間に縛られてしまいました」
   「金蔵の鍵は、誰が開けたのですか?」
   「店の者は、誰も知らないと申します」
   「盗賊は、鍵の在り処を知っていたようですね」
   「金蔵の鍵は、わたしの寝所の金庫に納めています、金庫の鍵は番号を合わせるもので、その番号はわたしだけが知っています」
   「よくわかりました」
 賢吉がそう言って右吉を促して帰ろうとしたが、思い出したように立ち止まった。
   「旦那様、では最後にもう一つだけお尋ね致します」
   「なんでしょうか?」
 右吉も興味律々で耳を傾ける。
   「昨夕、占い師を呼んで占って貰いませんでしたか」
   「最近降って涌いた取引のことで、受けるべきか断るべきかを占って戴きました」
   「その時やって来た占い師と側近の人たちの数は覚えていますか?」
   「さあ、十人以上の人々が来て下さったのですが、数えたりしませんでした、それが何か?」
   「いえ、俺が今後の勉強の為に知りたかっただけです」
   「これ賢吉、こんな時に何を訊くのだ」
 賢吉は、右吉に窘められた。
   「済みませんでした」

 盗賊に入られたお店を後にして、右吉と賢吉は占い師のもとへ向かった。
   「右吉親分、あの占い集団は忍者だと思うのですが…」
   「根拠は何だ」
   「お店に呼ばれて占いに出張った人数が、多すぎると思いませんか?」
   「だから?」
   「十何人も押しかけて、占いを終えて引き上げた人数が一人減っていたら気が付くでしょうか」
   「気が付かないかも知れないなぁ」
   「でしょう、忍者なら素早くお店の天井裏へでも隠れることが出来ます」
   「隠れていて、何をするのだ」
   「旦那様が商いの金を金蔵に仕舞うときを待って、金庫を開けて金蔵の鍵を取り出すのを天井の隙から番号を覗き見するのです」
   「それから?」
   「深夜になるのを待って、店の者が寝静まったら戸を開けて仲間を手引きする」
   「店の者たちに、同時に当て身を食らわせ、縛りあげると金庫を開けて金蔵の鍵を取り出すのか?」
   「そうです、金蔵を開けて千両箱を三つだけ運び出すと、鍵をもと通り金庫に納めて立ち去る」
   「まだ千両箱が有っただろうに、遠慮深くて物静かな盗賊団だなぁ」
   「非道働きをしないと言うヤツらの誇りでしょう、だが盗賊は盗賊、顔を見られたら見た相手を必ず殺すでしょう」
   「さあ、ヤツらの塒へ乗り込みましょう」

 「賢吉捕物帖」第六回 温情ある占い師 ―続く― 


 「賢吉捕物帳」第一回 大川端殺人事件へ戻る

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.06

2015-11-06 | コラム
 値段が安くて量がたっぷりあるので若い人向けらしく、あまり爺さん婆さんで混んでいるところを見たことがない。猫爺は脂っこいもの好きなので、性に会っているかも知れない。
 今日は内科の通院日(四週に一度)だったので、帰りにサイデリアで昼餌を食ってきた。若い医者に「コレステロール値がやや高い」と、指摘されたのに。
 メニューは、きのこスパゲティとポタージュスープ、それにアイスコーヒー。上に見えているエスカルゴは、連れが注文したもの。猫爺は、でんでん虫など気持ち悪くて食べれない。連れの前世は、マイマイカブリかもしれないと、向かいをチラ見して思った。


猫爺の連続小説「賢吉捕物帳」第五回 お園を付け回す男2  (原稿用紙15枚)

2015-11-03 | 長編小説
 お縄こそ掛けられていないが、長次に連れられて番所に向かう壮吉は、打ちひしがれて咎人さながらであった。見かねた賢吉が壮吉に声をかけた。
   「おじさん、大丈夫だよ、俺の親父や与力の長坂さまは、おじさんの味方だからね」
 壮吉は黙ったまま項を垂れた。
   「おじさん、このまま黙って歩いていたのでは気が滅入るだろう、俺と話をしないか」
 壮吉は、気のない返事をした。
   「おじさんは、与太郎という男を殺してはいないのだろ」
   「昨夜家に帰ってお園の話を聞いたが、賢吉さんが護ってくれているというので晩酌をして朝までぐっすり寝た」
   「ノミは盗まれていなかった?」
   「今日は、ノミを使う仕事はしていないので、確認はしなかった」
   「盗まれているかも知れないのだな」
   「そうだ」
   「今日仕事場へ戻ったら俺と調べてみよう」
   「うん」
   「ところで、もしおじさんが咎人にされて、しかも与太郎が死ねば得をする者って誰だろう」
   「居ないと思う」
   「よく考えてみなよ、きっと居る筈だ」
   「居るものか、そんなヤツ」
   「そうかなぁ、いや、待てよ」
   「何だ、どうしたのだ」
   「お園さんが危ないかも知れない」
   「どうしたのだ、言ってくれ」
 壮吉は、娘が危ないと聞いて心配になってきたようだ。
   「親父、俺はお園さんの所へ行くから、番屋へいったら右吉親分もきてほしいと伝えてくれ、親分はお園さんの家を知らないから、親父が教えてやってほしい」
   「わかった」

 賢吉は、父親の帰りを待つお園の家を指して、駆け出して行った。
   「賢吉さん、お園を頼むぞ」壮吉が叫んだ。
   「がってんだ」
 賢吉は振り向かず、肩越しに手を振った。

   「お園さんは居るかい」
 戸は閉まっていたが、賢吉の声を聞いてお園が開けた。
   「あゝ、無事で良かった」
   「どうしたの? お父っぁんはどうしたのですか?」
   「お調べを受けている」
   「お父っぁんに、疑いがかかっているのですか?」
   「なに、すぐに帰されるさ、それより、もうすぐ右吉さんという目明しが来るから、一緒におじさんの仕事場へ行こう、大工道具が一つ盗まれている筈だ」

 右吉と賢吉がお園を伴って仕事場に到着したときは、すでに日が傾きかかっていた。壮吉の大工道具は、仕事場に放置されたままである。
   「大工道具は全部揃っているかい」右吉がお園に尋ねた。
   「だって、わたしは元々何本あったか知りません」
   「そうか、では変わったことは無いか調べてみよう」
 右吉がノミの一本を手に取って見ていたが、「やはり」と、頷いた。
   「そのノミが、どうかしましたか?」
   「賢吉見てみろ、握りに血が付いている」
   「凶器の可能性があるってことですか」
   「そうだ」
 
 その日、壮吉は帰宅を許されなかった。お調べ協力人から、容疑者に切り替えられたのだ。
   「長次親分、おれは殺していないよ」
   「分かっている、お園さん親子は目明しの右吉と、倅の賢吉が護りに行った、右吉はもと武士で凄腕だ、安心しろ」
   「えっ、なにか心配なことがあるのですか」
 壮吉は、余計に不安になった。
   「女二人きりでは、夜は物騒だろう」
   「与太郎とかいう男は死んだではないですか」
   「男は、与太郎一人ではないぞ」
   「あっしは殺してなんかいない、すぐ帰してくださいよ」
   「我慢しろ、与太郎殺しの本当の下手人が分かるかも知れないのだ」
 壮吉は、自分が疑われているのではないと、一安心したようだ。

 そこへ、右吉と賢吉とお園が番所にやってきた。お園を家に帰そうとしたが、賢吉が止めたのだ。今夜あたり与太郎を殺した下手人がお園の所へ来るような気がしたからだ。
   「壮吉さんの道具箱を仕事場から持ってきたぜ」
 右吉が壮吉の前に「どすん」と置いた。
   「何か無くなっている道具はありませんか?」
 壮吉は、道具箱の蓋を取った。暫く調べていたが気が付いた。
   「ノミが一本足りません」
   「それは、どんなノミだね」
   「薄ノミの、一番刃幅の狭いヤツです」
   「ところで、このノミの中に、柄に血が付いたのがあるのだが」
   「賢吉さんにお園に付き纏う男が居ると聞いて、心配しながら仕事をしていたら指を切ってしまったのです、大工仲間に嘲笑われてしまいました、お恥ずかしい次第で…」


 壮吉を帰すには、下手人を挙げなければお奉行の許可が下りない。長坂清心も壮吉が下手人だとは思っていない。ここは暫く様子見て、下手人の出方を待つより仕方がないと思われた。とにかくお園を宥めて送って帰し、米や味噌、目刺など必要な物を右吉が様子を窺いがてらに届けた
 それから二日、三日と経っても、下手人は姿を見せなかった。そろそろ壮吉が焦れはじめて、見ていられなくなった賢吉が長坂に申し出た。
   「長坂様、下手人は壮吉さんがお仕置きになるのを待っているに違いありません」
   「拙者もそのようだと考えておったが、壮吉が処刑されたと嘘の噂で誘き出すのをお奉行はお許しになるまい」
   「それで、よい事を思いつきました」
   「何だ、言ってみなさい」
   「右吉親分に頼んで、お園さんに惚れて貰うのです」
   「賢吉、お前子供のくせに何と妄りがましいことを言うのだ」
   「そりゃあ、親父の倅ですから」
   「何を言うか、長次が聞いたら怒るぞ」
   「それより、話の続きを聞いてくださいよ」
   「右吉がお園に惚れたら、どうだと申すのだ」
   「下手人は、お園さんを自分のものにするために邪魔な与太郎を殺し、壮吉さんを嵌めたと思うのです」
   「まあ、そうであろう」
   「下手人がうかうかしている間に右吉さんがお園さんに言い寄ると、焦ると思うのです」
   「お前、大人の気持ちが分かるのか?」
   「男の女に対する気持ちは単純ですから」
 長坂は、賢吉の策略を試してみようと思った。
   「だが、右吉がやってくれるだろうか」
   「長坂さまが命令すれば、イチコロです」
   「壮吉は、嫌がるだろう」
   「長坂さまが説得すれば、イチコロでしょう」
   「気が進まないが、やるしかないだろう」
   「お願いします」

 右吉は、嫌がることもなく引き受けた。壮吉は、そのままお園を右吉に取られそうで嫌な気がしたが、早くお牢から出たいので承諾した。後は、お園が傷つかぬようにこの作戦に引き込むことだが、父親の命に関わることであるから、断ることはなかろう。

 右吉に付いて食料を届けに行った賢吉が、前もって「芝居だから」と、母娘に話を付けた。だが、心配ごとは、別のところにあった。お園が右吉に好意を持ち始めていたのだ。長坂は、右吉を同心か与力の養子にするつもりである。夫婦養子となると、まず縁談は纏まるまい。賢吉が余計なことまで報告したので、長坂は右吉に釘を刺した。
   「右吉、頼んだぞ、だがお園に惚れるではないぞ」

 右吉がお園の家に訪れると、お園を誘い出して近くの神社を詣で、時には二人で町まで買い物に出掛けるようになった。二人で歩くときは、仲良く寄り添っているように見せる。
   「右吉さん、どうしました?」
   「シーッ、後ろを見てはいけません、誰かが付けているようです」
   「はい」
 右吉が徐にお園の肩を抱いた。付けてきた男を挑発しているのだ。
   「なんだか嬉しいけれど、恥ずかしい」
 お園は逢引き気分に酔っていた。買い物をして帰り道も、男は付けてきた。右吉は、だいぶん前からお園を付け回していたのは与太郎ではなく、この男だったのかも知れないと思った。
 お園を家まで送って行くと、後を賢吉に任せて右吉は早い目に帰るふりを装った。今日こそ下手人が右吉の命を狙って来ると踏んだからである。
   「親分、俺の木刀を持って行ってください」
   「いや、木刀は賢吉が持っていて、お園さんを護ってくれ」
 実は今日、右吉は長坂さまから十手を預かってきており、懐に隠し持っているのだと、賢吉に見せた。
   「十手術は見様見真似だが、何とかなるだろう」
 右吉は、軽い足取りでお園の家を出た。ものの一町も行かないうちに、四人の男に囲まれた。そのうちの三人は遊び人風で、腰に長ドスをだらしなく差している。
   「おい、お前は誰だ」
 男の一人が右吉に声を掛けた。
   「何だ、誰か分からないで取り囲んだのか」
   「お園の何なのだと訊いている」
   「末は夫婦になる約束をした」
   「そうはさせない、お園は俺の女だ」
   「お園が承諾をしたのか?」
   「させるさ」
   「お園に言い寄った与太郎を殺ったのはお前たちか?」
   「フフフ、お前もそうなるのだ」
   「私も、与太郎みたいに匕首で一突きかな?」
   「与太郎は、ノミを使ったぜ」
   「そうか、私もノミで殺られるのか」
   「あのノミは、大川の流れに捨てちまったさ」
 そう言った男が、行き成り懐から匕首を出すと、右吉に斬りつけてきた。右吉は、素早く匕首を避けると、懐から十手をだした。
   「あっ!」
 男たちは、瞬間に罠だと気付いたが、四対一の安堵があるのか、怯むことはなかった。
   「殺れ!」
 匕首を持った男が叫ぶと、三人が長ドスを抜いた。その一人が、斬りかかってきたのを鉤で受け止めて十手を捻り、長ドスを跳ね上げた。回転してくるドスの柄を左手で受け止めた右吉は、十手を腰に差し長ドスに持ち替えて構えた。
 刀を取らせば、この男たちが束になってかかっても敵う右吉ではない。右吉は峰を返して、たちまち四人を遣っ付けてしまった。
 右吉は、蹲る四人を置いてお園の家に取って返すと、賢吉を番所まで走らせた。

   「右吉、お手柄だった」
 四人の男を牢に入れると、長坂が右吉を労った。
   「いや、お手柄は賢吉の知恵です」
   「賢吉の知恵と、右吉の腕が寄れば、凄腕の目明しだな」

 後は、奉行所のお取り調べに任せて、右吉と賢吉は引き上げて行った。やはり、匕首の男は与太郎殺しの下手人で、男が喋った通り、大川を浚ったところ壮吉の薄ノミが上がった。 
 男は死罪を言い渡され、後の三人は男に金を貰って手を貸したとして、寄せ場送りになった。壮吉は、無罪お解き放ちになったが、お牢に入っていた日数だけ、大工としての日当が支払われた。

  「賢吉捕物帖」第五回 お園を付け回す男2(終)  続く

   
   「賢吉捕物帳」第一回 大川端殺人事件へ戻る

猫爺の日記「猫爺の昼餌」'15.11.02

2015-11-02 | コラム
 今日は、カップ・ラーメンで済ませた。「旨かったか?」はい、イリコとかつおの出しだそうで、「美味かった」です。そう、「スープは旨かったです、スープは…」後は、お返事しかねる。

 明日は「レコードの日」だそうで、新しくカットしたアナログ・レコードが発売されるそうだ。レコードの音は「温い」のだそうで、オールド・ファンのノスタルジアだと思うのだが、その「温い」を科学すれば、レコードは帯域幅が狭くて、高域がカットされているのが原因だそうである。高齢になると高域の音が耳の邪魔になるので、無い方が良いのだとか。

 若いアーティストも発売するとかで、アナログ・レコードがブームになりつつあるとか、既にブームだとか。日本で唯一レコードのカッティングをしている東洋化成の製造が、需要に追い付かないらしい。

 下手をすると傷を付けてしまうデリケートさが、CDをぞんざいに扱う若い人には、すぐに傷だらけにされてしまいそうだが…。