ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「われら闇より天を見る」

2023-10-09 20:15:00 | 

話題の長編ミステリー、

「われら闇より天を見る」クリス・ウィタカー著(早川書房)

をようやく読了したところです。

なにしろミステリーの賞を総なめした話題作なので、読んでおかなくちゃ、と思ってね。

英国作家推理協会最優秀長編賞ゴールド・ダガー賞をはじめ、このミステリーがすごい!(2023年版)/週刊文春ミステリーベスト10/ミステリーが読みたい。

いずれも一位獲得、という快挙を成し遂げたミステリーなのですよ。

で、今年の4月に購入して読みかけたのだけど、途中で挫折して中断していたのを、あらためて挑戦してやっとのことで読了したというわけです。

なにしろ、長い。500ページ以上ある。

長いといえば「三体」「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はもっと長かったけど面白いので全然苦痛じゃなかった。

でも、今回は何度も挫折しそうになったのでした。

(以下、個人的な感想です。ネタバレ全開)

なにしろ悲惨な話なのです。人がバタバタ死ぬ。しかも主人公は13歳の少女と6歳の少年(姉弟)。

この13歳の少女ダッチェスの目から見た大人たち、そして町の警察署長であるウォーカーの視点から描かれた複数の殺人事件の全容です。

「最後の一行が衝撃的」と書評にあったので、最後の一行見たさに頑張って読んだのだけどね、

大して衝撃的じゃないし、サプライズはその前にすでに終わっているしで、

(しかもそのサプライズたるや、けっこうご都合主義で、そんなのありかい?と思った)

なんか拍子抜けでしたねえ。

幼い二人のきょうだいの周囲でとにかく人が死にまくります。

彼らの母親ときたら酒浸りで男狂いで子どもたちを顧みず・・とよくあるアメリカの闇。

しかもこの母親を殺してしまったのが、実はダッチェスの弟ロビンだったりして(事故だけど)、そりゃないでしょ、という展開なのですよ。

冒頭、ダッチェスの叔母(母の妹シシー)が幼い頃に死ぬシーンから始まります。
シシーを殺したのが警察署長ウォーカーの幼馴染ヴィンセント。
それから30年後、彼はシシーを殺した罪で30年間服役して出所してくる。
その直後に、今度はダッチェスの母親が殺され、ヴィンセントに疑いがかかる。
ウォーカーは彼の無罪を信じているのですが、殺人犯の疑いがかけられた主要な人物たちも次々と死んでいき・・

もうね、あまりに悲惨な話である上に、人が死にまくるので、

途中で、いい加減にしてくれ~という感じで投げだしそうになったのでした。

アガサ・クリスティのミステリーでも人が死にまくるけど、あれはお約束なので。

この作品は現実的な貧困や差別やアメリカの闇を描いているので、人の死は切実なのですよ。それなのに・・

思うに、これを書いた作者は、まだとても若く人生を知らないのでは。彼自身トラウマになるような事件に遭遇したことがあると解説にはあるけど、ダッチェスほどの悲惨な経験はしてないだろうと思う。しかもアメリカ人じゃなくてイギリス人だという。

ミステリーとしても、冗長な上にご都合主義的な部分が多く(たまに光る部分はあるけれど)、最後まで黙秘を貫きとおした殺人犯ヴィンセントが最後にウォーカーに饒舌に告白するのもどうなのと思うし、ヴィンセントが子どもたちの父親って・・といろいろ突っ込みどころが満載でね。翻訳もイマイチだし。

なんでこれがアンソニー・ホロヴィッツの「殺しへのライン」を抜いて一位なの??

と思ったのでした。

でもまあ感想は人それぞれで、絶賛している人はすごく多い。

だからこそ賞を総なめしたのでしょう。

これから読もうと思ってる人は(散々けなしておいて何ですが)先入観なしで読んだほうがいいです。

アメリカの闇を描いて秀逸なのは、やはり「ザリガニの鳴くところ」(2023年1月28日の記事)や映画「シドニー・ホールの失踪」(2019年9月17日の記事)あたりじゃないでしょうか。

 


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