夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

変な雑学は退散すべきだ。「国境線の無い国」

2009年06月15日 | 文化
 ある雑学の本に「陸続きなのに、国境線の無い所がある」と書かれている。えっ? そんな所があるのか。
 雑学の示す所はアフリカのザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビアの四カ国の境。つまり、この四カ国は線ではなく、点で接している。ぜひ世界地図を広げて確かめてください、と言うが、そんな事、地図で確かめるまでも無い。四つの国が接するなら、そうした情況しかあり得ない。三か国の境なら世界中のあらゆる所にある。アフリカのこの場合は四カ国だから珍しいのである。
 長野県の北西部に住んでいる人なら、岐阜県と富山県に接している所では県境は点になる事を知っている。それはどこでも同じ。三つの都府県に接していない都府県を探す方がずっと難しい。
 この雑学の問題は上に示したように「陸続きなのに、国境線の無い所がある」だ。これは明確に大間違いだ。「四カ国が接している所はどこか」との問題なのだ。でも出題者はどうしてそんな馬鹿馬鹿しい間違いに気が付かないのか、とても不思議だ。多分、四カ国が接している珍しい所を発見した事で舞い上がってしまったのではないか。だから冷静な判断力を奪われてしまった。
 でも私が読んでいるのはこれが講談社+α文庫に入ってから二年半も経った版だ。その間、誰も気が付かないのか。更にその前にはこの本は日本社と言う出版社から1981年に出されていて、それを編集、改題したのである。どの時点でこの問題が入って来たのかは知らないが、悪く考えれば1981年からあったとも思える。28年間も間違っていたなんて、まさか。

 まあ、これはほんのご愛嬌だとしても、ほかにもあまり感心出来ない雑学がある。その一つに濃い口醤油と薄口醤油の違いがある。
 濃い口醤油は大豆と小豆の割合がほぼ半々で、充分に発酵熟成させて作られている。そのため色が濃く、香りとコクのある味が特徴。
 薄口醤油は料理の味を生かすため、色と香りを控えめにしたものだが、食塩で熟成をおさえているので、塩分は濃い口醤油より一割ほど多くなっている。

 さてこれでお分かりになっただろうか。私は全然分からない。まず、濃い口醤油が大豆と小豆が半々に疑問がある。醤油に小豆なんて使っていたっけ? 百科事典には「大豆と小麦と食塩」が主原料とある。我が家で使っているいくつかの醤油もみんな同じ。小豆は小麦の間違いなのか? でもご丁寧に「あずき」と仮名が振ってある。
 薄口醤油は熟成をおさえて色と香りを控えめにしたと言うのだが、味はどうなんだ? 料理の味を生かすためだから、醤油その物の味は薄くても良い。でも味については無言である。しかも熟成をおさえているから、あまり良い味になっているとは思えないのだが。ただ、塩分が一割多いと言うのだから、塩味は効いているらしい。「らしい」としか分からない。
 あなたは、こうした説明で満足出来ますか? 

 でも本当に不思議だ。本は必ず校閲者が見る。編集長だって一通りは読むはずだ。全員が仕事をさぼっているとしか考えられない。
 本のタイトルは「つい誰かに話したくなる雑学の本」だが、こんな事話したら笑われちゃうよ。
 でも、逆に、おかしいぞ、と思って調べるから勉強にはなる。これは本のタイトルを変える必要がある。私に良い案がある。
 「つい自分で勉強したくなる雑学の本」
 どうです、いいタイトルでしょう。