壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『ほんとうのウソの話』より

2013年01月23日 | 備忘、メモ

以下、『ほんとうのウソの話』より。

100匹目の猿の話。宮崎県の幸島には野生の猿がいて、芋を海水で洗う。ある1匹が洗い始め、真似する猿が100匹を超すと、イモ洗いが文化として伝播する。島の広さから、臨界点は100匹位とか。が、ウソ。ただ保守的な老猿が死に、洗う習性が身についた子世代が増えただけ。人間社会も、そうなる?

平均への回帰の話。飛行士の着陸訓練では、うまくやった練習生を「褒める」と次回は下手をし、下手をした練習生を「叱る」と次はうまくやるとか。よって「叱る」ほうが教育効果は高い。が、これはウソ。ただ複数回のトライで実力(その人の平均技量)に近づくだけ。もっとも、実力を上げる努力は必要。



読書とは

2013年01月22日 | 備忘、メモ

読者は、すでに自分の内側に存在していることしか、書物から読み取ることはできない。書物は、読者が自分自身の中にあるのにもかかわらず、書物の助けなしには発見できないようなものを見つけるために、いわば視覚的な道具に過ぎない。(マルセル・プルースト)


『一歩先のクラウド戦略』(大野隆司著)読後記

2013年01月21日 | よむ

以下、引用は『一歩先のクラウド戦略』(大野隆司著)より。(マルカッコ)は引用者による補足。


「(日本の製造業における)品質問題を、たとえば自動車のリコールで考えてみると、2004年以降、製造原因ではなく、設計原因によるリコールが急増していることがわかる。(中略)(製造現場ではなく)上流工程の設計品質に大きな問題があることが、近年の品質問題の特徴といえる。」

なるほど、そんな傾向があるんですね。ところで、2004年という年に、何か特別な意味はあるのでしょうか? 気になるところです。


「EUでは、域外へのデータの持ち出しは、基本的に法律で禁止されている。
またカナダでは、アメリカのクラウド・ベンダーの利用禁止、個人情報の持ち出し禁止を法制化している。
この背景にはパトリオット法の存在がある。アメリカの連邦捜査局(FBI)は「令状不要」で、データ・センター内の、各種データに利用が可能なのである。」

アメリカの隣国カナダは、アメリカのITベンダーの利用を禁じている! 驚きでした。日本では多くの人が無警戒にグーグル(gメール)やフェイスブック等を利用しているますが、まさに対照的です。

「これらは、2009年、2010年には、なぜかメディアで報道されることは少なかった。個人情報保護法に、これだけうるさい国(日本)にしては奇妙なことである。その理由の詮索はさておき(後略)」

『戦後史の正体』によると、カナダという国は、隣国アメリカの強大さにかなり警戒感を持っています。対して、日本の能天気ぶりというか、対米追随ぶりは、こういうところにも表れているんですね。



釧はどういう意味か

2013年01月18日 | しらべる

『別海から来た女』には、根釧地方という記述が出てきます。根室と釧路なんでしょうが、何と読むか分からない。ネクシ、コンセイ?

で、調べました。コンセイと読むんですね。

国語辞典より
くしろ【釧】<雅語>ひじにはめた古代の装飾品。

漢字辞典より
(音読み)セン。うでわ、腕輪、鐲(タク)。

漢字辞典には「くしろ」という訓読みが載っていませんでした。不思議ですね。

※鐲は「金偏に蜀」。


『別海から来た女』(佐野眞一著)読後記

2013年01月18日 | よむ

『別海から来た女 木嶋香苗悪魔払いの百日地裁』(佐野眞一著)を読みました。平成20年~21年に続発した、睡眠薬と練炭を使った首都圏連続殺人事件のルポルタージュです。

第1部は、木嶋の出身地をたずねる、彼女の根さがしの旅。第2部は、公判記録です。

(以下引用)「殺人事件はふつう、加害者と被害者の濃厚な関係に起因している。とりわけ男女関係をめぐる殺人事件なら、原因は痴情か怨恨かと相場は決まっていた。ところが、この殺人事件には、加害者と被害者の間に濃厚な関係があったどころか、関係そのものがあったかどうかさえ疑わしい。(中略)(確かにその通りですね)

インターネットの爆発的な普及の中で、人間関係の希薄化は急速に進んでいる。こうした世界史的なうねりが、最初に起こった大きな出来事の一つが、この事件だったように思えてならない。(本書の取材はこうした仮説からスタートした)。」

(以下引用)この事件を解く最大のキーポイントは、ネットという匿名世界が、パソコンの爆発的普及によって、私たちの暮らしの中に急速に浸透したことにある。(中略)
木嶋はまるで“仕事”のようにメールやブログを書いている。だが、いざ、婚活サイトで知り合った相手と対面すると、ほとんど会話らしい会話をしていない。(中略)

技術の急速な進歩によって恩恵を受けていた者が、停滞しっぺ返しを食らうのは、何も原発事故ばかりではない。情報伝達技術の進歩も時として、こうした犯罪を生む。
見知らぬ他人からいきなり暮らしの中に入り込んでくるメールは、整ったフォント(字体)によって“公共性”をまとっている。それが危険をカモフラージュする“信頼性”という罠になる。
インターネットが木嶋香苗のような犯罪者を生んだなどと短絡的なことは言わない。だが、私たちは、万人を発信者に変えたインターネット社会の到来をもう少し懐疑的な目で見た方がいい。

突飛な譬をすれば、この事件におけるインターネットはゴキブリホイホイのようなものかもしれない。木嶋が独身シニアホイホイという罠をインターネット上に仕掛けたから、デジタル世界に仕組まれた色香に惑わされた男たちが、ぞろぞろ這いこんでいた。
事件の犠牲者を冒涜しているわけではない。消費社会の強迫観念とセックスの妄想に日々追い立てられえた私たちは、自分からゴキブリホイホイにひっかかりたがるゴキブリに、みんなどこか似ている。

結婚詐欺は数年前まで男の“専売特許”だった。それが木嶋香苗にお株を奪われた。(中略)男のポテンシャルが急速に衰えている証左ではないか。
急速に進む高齢化社会の中で、男たちはそれ(女性に対する抵抗力や人間を見る洞察力)とはまったく逆ベクトルの幼児化に向かって進んでいる。この事件は、そのことを大きな犠牲を払って日本社会に教えてくれた。(引用終わり)

たしかに犯人は木嶋に違いなく、悪い奴なんだけど、決め付けが過ぎる筆致なのが、気になりました。

前著『東電OL殺人事件』では、かなり事件の背景(渡辺泰子の周辺とか円山町の成り立ちとか)が描かれており、その圧倒感に酔いしれました。しかし、この本には薄い。たしかに木嶋香苗の出身地の北海道別海町をロードムービー風に描きますが、事件の背景を描くという本来の狙いが、滑っているように感じました。時間のない中、月刊誌の発行に合わせてい書いたからでしょうか。

とはいえ、特異な事件に、手練のノンフィクションライターが独自の視点から迫っています。斬新な視点は随所に見えます。ご興味のある方は、ぜひ。