壁際椿事の「あるくみるきく」

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『伊藤真の民法入門』を読んだ

2011年09月03日 | 読書(ノンフィクション、実用)

『伊藤真の民法入門』を読みました。民法には、私的自治という原則があります。私人と私人の約束は、その内容は自由だ、ということです。だから、「原稿1枚、1000円」という、フリーラーターにとってチョー悲惨な契約も、当事者さえ納得していればOKであり、逆に「原稿1枚、10万円」というオイシイ契約もいいのです。

これは、憲法の価値である「自由」がベースにあるからだとか。なるほど、法律は相互に関連しているんですねぇ。目からウロコでした。

同書によると、民法には、4つの視点があるそうです。

1)価値判断と法律構成。
民法は、私人間の関係を規定する法律だから、フツーの感覚が大切です。そのため、例えば裁判では、裁判官は、原告・被告両者の言い分を聞いて、バランス感覚を働かせ、落ち着きどころを探る。つまり、結論を先に出す。その後、それを正当化する法律を探し、当てはめる。つまり理由は後付け。

この場合、落ち着きどころを探るのが「価値判断」で、法律を探すのが「法律構成」なんです。決して、法律が先にあるわけでない。誤解されやすいポイントです。

2)原文修正パターン。
民法は明治時代に作られたから、現代に合わない条文もある。これを現代に解釈しなおすのが原文修正パターンです。ただし、いくら修正してもいいとはいえ、あくまで原則が大切、なんだそうです。

3)効果から考える。
法律には、要件と効果があるそうです。売買契約をしたら、お金を払わなければならない、という一文では、「売買契約をしたら」が要件で、「お金を払わなければならない」が効果です。

いろいろなモノゴトでは、効果から考える。締切を飛ばし、編集長が文句を言っている。彼は、ボクへ発注した請負契約を撤回したいのか、損害賠償を請求したいのか、それとも締切は過ぎてるが、原稿を欲しいのか。まず、効果を考え、それを実現するために、では何が必要か、どんな法的根拠を引っ張ってくれば良いか、を考える。こういう発想が大切だということです。

4)民法全体を視野に入れる。
売買といっても、物権と債権と重なっているし、相続といっても、土地を相続するなら名義書き換えとか、物権変動しなければならないし、いろいろ関連している。だから全体を見ることが大切ということです。

以前、当ブログに、徳島県のサッカーボール事件について書きました。その判決があまりに強烈だったからです。同書を読んだとき、「裁判官にバランス感覚はあるのか?」と思い出された次第です。


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