壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『いのちと放射能』を読んだ

2011年09月20日 | 読書(ノンフィクション、実用)

なぜ食べ物にいろいろな添加物を入れなければならないのでしょうか。
なぜ作物に農薬を撒き散らさなければならないのでしょうか。
なぜ放射線を照射したジャガイモを食べなければならないのでしょうか。
なぜクリスマスに見事なイチゴを食べなければならないのでしょうか。
食べ物の旬はどこへいってしまったのでしょうか。
私たちは、なぜ居ながらにして、世界中のおいしいものを食べなければならないのでしょうか。
なぜ「ぬかみそ」をモーターでかきまぜなければならないのでしょうか。
消費電力の問題ではありません。こころの問題です。

以上、『いのちと放射能』(柳沢桂子著)より。

なぜ、放射能が大人より子どもに影響を与えるのか。こうした素朴な疑問に、分かりやすく説明が加えられています。

ふだん、DNAが記された二重螺旋のヒモは、細胞の核の中で、団子状態にからまっている。しかし細胞分裂するとき、もつれている状態がほぐれる。DANを写しやすくするためです。ほぐれた状態だから、放射線の影響を受けやすい、というわけ。

例えば、新聞紙を硬くボール状に丸める。水に一瞬つける。引き上げて、延ばしてみると、それほど濡れていない。しかし、1枚ペラの状態で水につけると、同じ一瞬でも、引き上げてみると、ベタベタに濡れている。広げていると、それだけ水の影響を大きく受ける、ということです。これと同じことなんですね。

DNAは、何万個も、何兆個もあります。もちろん、10や20の配列が変わっても何の影響も受けない部分もあるけど、1つ変わるだけで、大変なことになる部分もある。そのへんは今、研究の段階だろうけど、僕自身は「解明せんでええよ」と思います。

放射線は、いろいろなものを透過する。細胞内も透過する。それで、DNAを壊す、というわけです。

細胞分裂を激しく繰り返すのは、子どもであり、胎児です。受精卵が、心臓や肺などの機関に分かれるときに影響を受けると、奇形児として生まれる。それ以降に影響を受けると、ガンのリスクが高まるのだとか。

著者は分子生物学者。30代より原因不明の難病に襲われ、病床でつづった数々の科学エッセイが多くの読者に支持されています。同書は、チェルノブイリの原発事故にショックを受け、1988年に書かれたものであり、福島原発の事故とは関係ありません。

分子生物学者の書だけに、細胞の話などが中心なのですが、なぜか僕の感性は「ぬかみそをモーターでかきまぜる」話に引っかかりました。とても分かりやすい表現で、中学生から読めると思います。ぜひ。



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