『理系志向―エンジニアだからできること』(大滝令嗣著、ランダムハウス講談社)を読みました。スティーブ・ジョブス、中村修二のように、理系人よ、大志を抱け、というのが主旨です。
なぜ、文系の私が、こんな本を手に取ったか。なぜか、理系に惹かれるものがあるからですが、なぜか、は自分でも分かりません(←理系ちゃうやん!)
以下、気になったことをいくつか。
「(モノづくりに優れた日本に対し、)残念ながらアメリカ企業は、品質の良い製品を大量に作って世に送り出す技術力には長けていない。ではどこで儲けているのかというと、壮大なコンセプトのもとで作り上げたプラットフォームの上である。上品なたとえではないが、ある地域を治めているヤクザのようなものだと考えると理解しやすい。」(以上流用)
著者も認めるように、上品な例でないですが、ス、スゴイ。そこまで言うか、という感じです。「店はショバ代を払わなくてはならないが、その地域で自由に商売ができたり、他の勢力から守ってくれたり・・・・・・」。
たとえば、電子空間に仮想の商店街を作り、出店料を取るというビジネスを成り立たせる、楽天なども、この典型ですね。プラットフォームビジネスです。リアルの世界では、たとえば、カジノは良いプラットフォームになるかもしれません。
オルフェウス・プロセス、という指揮者のいない世界的なオーケストラがあるそうです。プレーヤーが自主的に協調し、音楽を奏でます。
「プロフェショナルとしての技量とプライドがある演奏者たちは、素晴らしい指揮者に恵まれると、技量以上のものを発揮することができるという。「演奏者冥利に尽きる」とか「至福の喜び」というのは、まさに素晴らしい指揮者に恵まれたときだけに味わえる幸せだ。(中略)最悪なのが、なぜか下手な指揮者が来てしまったときである。「下手ならいないほうがマシ」というのが、プロの演奏家の正直な感想だ。」(以上流用)。
著者は、研究開発型の企業や研究チームを想定し、楽団の話をしています。マネージャーの本当の力量が問われる、ということでしょう。マネージャーも個々の研究者も「自律」が求められます。
理系の人が転身しやすい仕事として、弁理士やファイナンシャルエンジニア(金融工学)、技術翻訳などと並び、占い師も挙げていました。いくら何でも、行き過ぎだ、と感じましたが、読み進めるうちに、そうかもな、と思いました。
「大昔、文明が生まれたころ、星や月や太陽の動きと、天災などのさまざまな災難や、獲物の量、農業の収穫量などを関連付けたデータベースを作り、詳細な分析を元に一定のルールを導き出したのが占いである」(以上引用)。
例えばシンガポール政府は、占いで政策を決めているそうです。シンガポールといえば、未開の国でなく、タバコやアルコールの規制も厳しい先進的な国です。その国が、毎年、風水占いのために予算を計上しているそうです。恐るべし、シンガポール。
一つ、肝に銘じたいことがありました。「ドント・バーン・ザ・ブリッジ」。橋を焼くな、という意味です。一度できた人とのつながりは、切らずに大切に維持しておげ、ということです。いつどこでエンジェル(出資者)となり、出資してくれたり、転職のアドバイスをしてくれるか知れないからです。そこまで打算的でなくても、ストレスにならない程度に人付き合いは大切にしたいものだと思いました。
著者は、日本の大学の工学部を卒後、アメリカに留学。総合電機メーカーの東芝に就職し、半導体の研究者を経て、コンサルティング会社に転職。現在もコンサルタントとして活躍されています。
ところで、本が出たのは2005年。まだリーマンショック以前です。果たして今なら、(理系人の有力な転職先である)金融工学を礼賛する論調のこの本は出版されたでしょうか? なかなか難しい問題ですね。
なぜ、文系の私が、こんな本を手に取ったか。なぜか、理系に惹かれるものがあるからですが、なぜか、は自分でも分かりません(←理系ちゃうやん!)
以下、気になったことをいくつか。
「(モノづくりに優れた日本に対し、)残念ながらアメリカ企業は、品質の良い製品を大量に作って世に送り出す技術力には長けていない。ではどこで儲けているのかというと、壮大なコンセプトのもとで作り上げたプラットフォームの上である。上品なたとえではないが、ある地域を治めているヤクザのようなものだと考えると理解しやすい。」(以上流用)
著者も認めるように、上品な例でないですが、ス、スゴイ。そこまで言うか、という感じです。「店はショバ代を払わなくてはならないが、その地域で自由に商売ができたり、他の勢力から守ってくれたり・・・・・・」。
たとえば、電子空間に仮想の商店街を作り、出店料を取るというビジネスを成り立たせる、楽天なども、この典型ですね。プラットフォームビジネスです。リアルの世界では、たとえば、カジノは良いプラットフォームになるかもしれません。
オルフェウス・プロセス、という指揮者のいない世界的なオーケストラがあるそうです。プレーヤーが自主的に協調し、音楽を奏でます。
「プロフェショナルとしての技量とプライドがある演奏者たちは、素晴らしい指揮者に恵まれると、技量以上のものを発揮することができるという。「演奏者冥利に尽きる」とか「至福の喜び」というのは、まさに素晴らしい指揮者に恵まれたときだけに味わえる幸せだ。(中略)最悪なのが、なぜか下手な指揮者が来てしまったときである。「下手ならいないほうがマシ」というのが、プロの演奏家の正直な感想だ。」(以上流用)。
著者は、研究開発型の企業や研究チームを想定し、楽団の話をしています。マネージャーの本当の力量が問われる、ということでしょう。マネージャーも個々の研究者も「自律」が求められます。
理系の人が転身しやすい仕事として、弁理士やファイナンシャルエンジニア(金融工学)、技術翻訳などと並び、占い師も挙げていました。いくら何でも、行き過ぎだ、と感じましたが、読み進めるうちに、そうかもな、と思いました。
「大昔、文明が生まれたころ、星や月や太陽の動きと、天災などのさまざまな災難や、獲物の量、農業の収穫量などを関連付けたデータベースを作り、詳細な分析を元に一定のルールを導き出したのが占いである」(以上引用)。
例えばシンガポール政府は、占いで政策を決めているそうです。シンガポールといえば、未開の国でなく、タバコやアルコールの規制も厳しい先進的な国です。その国が、毎年、風水占いのために予算を計上しているそうです。恐るべし、シンガポール。
一つ、肝に銘じたいことがありました。「ドント・バーン・ザ・ブリッジ」。橋を焼くな、という意味です。一度できた人とのつながりは、切らずに大切に維持しておげ、ということです。いつどこでエンジェル(出資者)となり、出資してくれたり、転職のアドバイスをしてくれるか知れないからです。そこまで打算的でなくても、ストレスにならない程度に人付き合いは大切にしたいものだと思いました。
著者は、日本の大学の工学部を卒後、アメリカに留学。総合電機メーカーの東芝に就職し、半導体の研究者を経て、コンサルティング会社に転職。現在もコンサルタントとして活躍されています。
ところで、本が出たのは2005年。まだリーマンショック以前です。果たして今なら、(理系人の有力な転職先である)金融工学を礼賛する論調のこの本は出版されたでしょうか? なかなか難しい問題ですね。