まだ、自覚は不完全

　自分が「トリックスター」だ、なんて……
　こんなアホなことを言っているのは日本で私だけだろうな。

　これまた、誰にも説明できないし、誰にも理解してもらえないな。


　自分でも思うよ！　なんでこんな性格になっちゃったんだろうって。

　なんで、普通に人づきあいして、普通に生きていけないのかなって。

　石仮面をかぶって吸血鬼になってしまったディオ・ブランドーのような気分だよ。
　日光を浴びたら死ぬ体になって、落ち込まなかったはずはない。
　なんでこんなことになっちまったのかと、さぞかし苦悩しただろう。
　ディオにとって、昼の世界には恐怖と苦悩しか無い。
　だが夜が訪れれば。恐怖と苦悩は消え去り、「自分は選ばれし者だ」という万能感に変わる。

　カードの裏表なんだ。劣等感と万能感は。

　「なんで、人と同じようにできないんだろう」という劣等感と、
　「人と違う自分は、特別な使命を背負った者だ」という万能感。


　落ち込んだり、高揚したりする私の精神。


　……ちょうど中学生のときも、こんな気分だったぞ！　学校ではなんだかんだでつらい思いばかりする。劣等感にまみれる。
　家に帰って、本を読んだり、空想をめぐらしたりしている間は、万能になれる。



　もし私が本当にトリックスターなのなら、賢明なトリックスターになりたいね。
　そのために、トリックスターの先輩に学びたい。

　……たぶん糸井重里さんはトリックスター。
　さまざまな分野の方とお会いしては、お互いの知識や人生観が化学反応をおこすのを面白がってる。さまよい歩き、境界を越えている。
　新しいものの見方や、生き方を提案する。世界の捉え方の根本を変える。
　「両面性」があるかどうかだが、おそらく、巧妙に隠している。……「秩序を乱す」性質や、「邪な部分を持つ」性質が、絶対に他人に受け入れられないことを知っているから。
（いつもは隠している邪悪な部分は、『MOTHER』のポーキーや、どうぶつの森のにこにこり村に注ぎ込んだんじゃないかと思うよ。
　……あ、なるほど、私も、自分の邪悪な部分はふだんは隠しておいて、小説にだけ注ぎ込めばいいんだね。さっそくヒントをいただいた。糸井さん！！　感謝します。）

　糸井さんは奥ゆかしい人だから、自分がトリックスターだなんてわざわざ言わないのだろう。頭のネジが飛んで、自己顕示欲がだばだば漏れ出している私とは違う。

　果たして、真似できるものなのかなぁ。無理して壊れない程度に、そろそろとやってみよう。

黒歴史は未来にもある

　「黒歴史」ってのは、10代、20代の頃のイタイ思い出だ、と勝手に思い込んでいたが、違った。

　いま現在、黒歴史を更新している私のようなヤツもいる。

　……自分が、礼節を失ったり、人を傷つけたりするクソバカ野郎だったなんて思わなかった。




　皆様。お気をつけなさいませ。

　私が言うのも何なのですが。黒歴史は過去だけに存在するのではございません。

　これから訪れる未来にも、きっと口を開けて待ち構えております。

　私はそれにハマり込んだ。と言っても、人生のハンドル操作を誤って自分で突っ込んでいったのであって、自業自得なのですが。

　TVをつけてみましょう。嘘の論文。不倫。覚醒剤。現在進行形で黒歴史を更新中の方々が勢揃いしております。

　どんなに年齢を重ねても、輝かしい業績を残した人であっても、黒歴史から逃れられるわけではない。

　自分が「心身ともに大人になった」と思う方ほど、お気をつけなさいませ。

　黒歴史はほくそ笑んで待っております。避けられるものなら、ぜひとも避けたいもの。


　よけいなお世話。いらぬ心配。そう思われるかもしれませぬ。

　私も、そうであることを祈りましょう。