俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その5

2008年02月29日 21時38分28秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 来やがったな。
 操縦桿を握るファルコの腕に、小さな震えが走った。
 落ち着くんだ。何とかしてレーダーの圏外に出る。あとは、死角に入ってやり過ごす・・と行きたいところだが、周囲は青い海に青い空。
 隠れるところなんざ無ぇか。とすりゃああの曲芸を、もう一度やるしかない。
 今度は、前とは違う。相手も網を張ってきてる。うまくやれるか?
 わからねえ。悪くすると……死ぬ。
 死ぬなら、空だ。監獄の中でエサの世話をされるなんざ、笑えねぇ。
 カゴの鳥はごめんだぜ。『鳥のように自由に』だ。最後までな。

 ファルコの機体には、コーネリアの重力を突破する力はない。
 限りなく宇宙に近い空を飛べはするが、それもこの惑星の衛星軌道を、引力にあらがいながら周回するだけだ。
 コーネリアの都市には、すでにこの機体のデータが――もしかするとファルコ個人のデータも――伝えられているだろう。都市に立ち寄って、食料や燃料を調達することはできない。
 かといって、仲間の元にも戻れない――すでにアジトは、軍の手入れが入ったあとだ。

 これじゃあ、ほんまもんの根無し草だ。
 じぶんの心に暗い影が押し寄せてくるのを感じて、ファルコはあざけるように笑う。
 血の昂りにまかせて、家族と家業をほっぽり出して……自分と似たようなやつらとつるんでは、楽しくやってきた。けれどそいつらも、俺が自分から切り離しちまった。
 いまさら「一人ぽっちが怖い。家族や、仲間と呼べるものがほしい」だなんて、あんまり勝手だぜ。ファルコ・ランバルディ。

 と、そのとき。海面すれすれに飛ぶファルコ機の視界のなかに、真正面から接近するひとつの機体が現れた。

「ファルコとの出会い」その4

2008年02月23日 02時20分04秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 レーダーから、機影を示す輝点が消えた。
『目標消失。低空を飛行しているため捕捉できないものと思われます』
「やつめ、こちらに気がついたぞ」
 ペッピーが言う。
「グレートフォックスで近づいても、逃げられるだけだ。アーウィンで3方向から接近し、仕留める」
 フォックス・マクラウド。数ヶ月前はコーネリア軍の士官候補生であったが、いまは新生スターフォックスのリーダーである。
「アーウィンの状態はどうだ、スリッピー?」
 声をかけた先には、メカニック担当のスリッピー・トードが、落ち着かない様子で立っている。
「アーウィンは、だいじょうぶ万全だよ。でっ、でも、オイラも出るの~?」
「なんだ、不安なのか? おまえもコーネリアのパイロット候補生じゃないか」
「うん、まあね……」
 ポケットにレンチをつっこみ、もぞもぞと帽子をかぶり直す。
「スリッピー、安心せい。奴の機体には武器は搭載されておらん。恐れるべきはスピードだけだ」
 なだめるようにペッピーが言う。
「ぐずぐずしてはおれんぞ、出るなら今だ。不安があるなら留守番だぞ」
「待ってよ、出る! オイラも出るさ、もちろん!」
 スリッピーが慌てた声を出した。
「よし、出撃だ。ナウス、グレートフォックスを頼む」
『お任せください』
「フォックス、スリッピー。初仕事だからといって力まなくてもよいぞ。3人でかかれば、必ず奴を追い詰められる。自分を信じるんだ」

 スペースダイナミクス社の特別製、G-ディフューザー搭載全領域戦闘機。
 「アーウィン」と呼ばれる3機の機体が、ハンガーで静かなうなりを上げている。
 プラズマエンジンが駆動をはじめ、機体後方の噴射口が青く発光しだした。
「システム、全て良好」
『ロックボルト、解除します』
 機体の固定が解除され、その底面がわずかに格納庫の床より浮かび上がった。
「全機発進!」
 フォックスの声とともに、3機のアーウィンはカタパルトより順々に射出され、抜けるような青空と白い雲、そしてあおく広がる洋上にその姿を浮かべた。

「ファルコとの出会い」その1改

2008年02月23日 01時09分42秒 | 小説『ファルコとの出会い』
 『ファルコとの出会い』の最初を書き直したから載せとこっと。


 ライラット系・第三惑星コーネリア。
それは、まだフォックス・マクラウドがコーネリア防衛軍士官学校に属していた頃。そして、辺境の惑星ベノムへと追放されていたDr.アンドルフが、沈黙を破りライラット系にその魔手を伸ばしはじめた頃であった……。

ファルコ・ランバルディは根無し草である。
 家を飛び出し、仲間たちと気ままに空を駆け巡る生活。アンドルフ軍とコーネリア防衛軍との戦闘で、機体の部品にも、燃料にも事欠かない。大気を、ときには真空を切りさいてがむしゃらに飛んだ。
星々を渡り歩く命知らずなパイロットの中にも、ファルコの腕にかなう者はいなかった。
「フン。どいつも張り合いがねぇなぁ」
だれもがかれの後方に消え、ただ一人星の海に浮かぶとき、ファルコはエンジンを停止させると、通信回線をあるチャネルに合わせる。SEC-2778654C。
彼だけの秘密だった。星から星へと物資を運ぶ星間配達人の一族、じぶんが捨ててきた家族が、その稼業を営む際に切れ切れにかわす会話、その通信を傍受し、家族の声に耳を傾けていることは。