俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その16

2008年06月13日 06時54分46秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 モニタ上のファルコ機が射程に入り、照準が固定され瞬いた。反射的に、フォックスは発射ボタンを押し込む。
 プラズマ冷却弾が発射され、ファルコ機の軌跡を追って一直線に飛ぶ。狙いは正確だった。命中、するか。

 ファルコは、桿をグッと握り締めると、渾身の力で引き上げた。
 機首が空中を垂直におどりあがり、天を突くかたちになる。
(なっ)
 生き物のようなその動きを見て、フォックスは思わず息を呑む。
 ファルコは桿を引き上げたまま、左に半回させた。垂直に立ち上がっていた機体はのけぞり、寝返りをうつように宙返りし、アーウィンの頭上におどりでた。
(すごい)
 そう思わずにいられなかった。微細な重力制御の助けなしに、あんな芸当をやってのけるとは。ヤツの体には、オレたちの知りえない感覚が、知りえない能力が備わっている。「飛ぶ」ということを知らない種族には決して理解できることのない能力が。
(お前がうらやましいよ)
 ハッと気づくと、フォックスは桿を切った。そのまま直進しては、散布されたプラズマ冷却粒子のなかに飛び込んでしまう。アーウィンもプラズマエンジンを推進機関としている以上、自らが放った冷却弾で自滅する可能性があることは、常に頭に入れておかなくてはならない。

「ファルコとの出会い」その15

2008年06月11日 09時32分50秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 くすり。
 スピーカーから流れ出る怒鳴り声を聞きながら、スリッピーは思わず笑っていた。
「なっ……何がおかしい?」
 様子が変わったことをいぶかってか、完全に血が上っていたペッピーの頭も、すこし冷えたようだ。
「いいや。何でもないよ」
 スリッピーは明るく答えた。まだ目の端に涙のしずくが留まっていたが、もうそれ以上に溢れてはこなかった。
「やれるんだな?」
「もっちろんさ! オイラが始めに思いついた作戦なんだ。最後までやる。やってみせるさ」
「……よし。その意気だ」

 二人のやりとりを聞いていたフォックスも、その口の端に小さな笑みを浮かべた。べそをかくのもしょっちゅうなら、元気をとりもどすのもしょっちゅう。『泣いたカエルがもう笑う』そう冷やかされていたパペトゥーンのアカデミー時代から、スリッピーのそういうところは変わらない。
 相変わらずファルコ機はすさまじいスピードで逃走を続けている。断言はできないが、機体のスピードが徐々に回復してきているようにも感じられる。プラズマ冷却弾の効力が、失われつつあるのかもしれない。
 フォックス達は、コーネリア都市部からの目撃情報をもとに、ファルコの目的地・移動ルートを予測し網を張った。警戒の厳しい都市部とそれを結ぶ主要道路近くに現れることは避けるに違いない。衛星軌道上は、コーネリア軍の厳しい監視下にある。とすれば、見張るもののない海上を移動し、東部の海に浮かぶ無数の小島のどれかに身を隠すはずだ。
 予想は的中した。というより、論理的に考えたならば、逃げ道はそれしかないのだ。
 500を超える大小の島々が集積する東の多島海までは、民間機でも3日間飛行すれば辿りつける。ここでファルコを捕らえることができなければ、もうこの先再びチャンスが巡ってくることはないだろう。

【スターフォックス】僕たちは天使だった【手描きMAD】

2008年06月10日 09時17分46秒 | スタフォ動画
 このブログには、ニコニコ動画を貼り付けられるらしい。
 ふ~ん。。って感じでスタフォ関係の動画を探していたら、なんかおそろしいものを見つけてしまったので思わず貼る。

【スターフォックス】僕たちは天使だった【手描きMAD】


 ・・・パラパラ漫画の要領で描いたんだよな。一体何枚の絵を描いたんですか!?
 世の中にはすごい人がいるもんですな・・。内容がまた、スタフォ愛炸裂してて鼻血ものやわぁ・・。

「ファルコとの出会い」その14

2008年06月10日 08時36分57秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 ……ッピー! スリッピー応答しろ! 体勢を立て直すんだ!
 懸命にファルコ機を追撃しつつ、呼びかけるフォックスの声がスピーカーから流れ出るが、スリッピーの耳には入らなかった。自分の中から湧き出てくる後ろ向きな言葉だけがかれの中に何重にも響いて、レーダーも計器類も、涙でにじみ見えなくなった。ウッ、ウッ、という嗚咽さえ漏らしそうになった、その時。

わっかもぉん!!!」
 ぺッピーの怒号が、スリッピーのアーウィン内に爆発した。脳天を殴られたような衝撃を受けて、スリッピーはとびあがり、機の天井でしたたか頭を打った。目の前を星が飛び、痛みで座席からずり落ちそうになる。コントロールを失ったアーウィンはあやうく墜落しかけ、スリッピーはあわてて操縦桿を握り締め、ようやく機体を制御した。スピーカーからは、まだぺッピーの怒鳴り声が聞こえている。
「べそをかいとる場合か!? オマエの作った武器が頼りなんだぞ! 翼を取られたから何だと言うんじゃ!? 予定どおりにキチンとこなせる作戦などありゃせんわい、パペトゥーンの定期便じゃあるまいし!」
「予定は狂いはしたが、プラズマ冷却弾の性能に問題はない! あとは、今この状況でわれわれがどれだけ踏ん張れるかにかかっておる! 敵も必死だ、こちらの思い通りに捕まってくれるはずがなかろう!? 必死になった相手に勝つには、こちらも必死になるしかない! スリッピー! おまえも必死になれ! ……やれるな!?」

「べノム帝国」その3

2008年06月10日 00時55分11秒 | 小説『べノム帝国』

 だがこれは、公平な視点から語られたものとはいえない。
 他の惑星住民には知る由もない、コーネリアという星の上で何百年にもわたり続いてきた、ロキオンとハールの争いという事実を、まったく抜きにして語っているからだ。
 コーネリアには7つの大陸があり、おのおのの大陸でそれぞれまったく違う知的生命の出現が、同時多発的に起こっていたことが進化生物学者の手により証明されている。
 なかでも文明の先導者となったのがロキオン(俗にいうイヌ族)、ハール(俗に言うサル族)の二つの種族であった。


『べノム帝国』その2

2008年06月10日 00時28分52秒 | 小説『べノム帝国』

 ライラット連邦本部の公式記録にも、「べノム帝国」の名を見つけることはできない。
 そういう名前をした国家が存在したことの記憶も、この星系の住人たちの間では消えつつある。
 いや、正確に言えば、消されつつある。
 「べノム帝国」の名は、子供たちの学ぶ教科書に載ることもなければ、歴史書のなかに記されることもない。辞書のなかにも、当時の新聞の紙面にさえも、存在しないのだ。
 なにかひとつの概念が存在しても、その概念を指し示す言葉が存在しなければ、やがてその概念そのものが忘れ去られてしまう。べノム帝国は、皇帝アンドルフの死とアンドルフ軍の瓦解によって物質的に失われただけでなく、いまや精神的な世界からも、消し去られようとしている。
 アンドルフ。かれについて述べようとするときには常に、事実と憶測、敵意と信仰、個人と歴史が複雑にからまりあい、闇と光の中にその素顔がかくされ、真実をひもとくことは容易ではない。
 だがここでは、可能な限りの真実を、それも光神ライラットの公正なる天秤の下に、語ってゆくこととしよう。

 かれがまだ、『悪の皇帝』と呼ばれることもなく、狂科学にとりつかれた危険人物とみなされてもいなかった頃。
(フォックス・マクラウドがまだこの世に生を受けておらず、その父のジェームズが遊撃隊として活躍していた頃、と補足してもいい)
 突如として、かれは反乱を起こした。みずからが作り出した生物兵器をもって、自分が所属するコーネリアの軍本部に奇襲を仕掛けたのだ。事態の発生より68時間後、生物兵器は動きを止めた。死者58、負傷者170、軍本部は甚大な被害を受けた。軍部は科学主任アンドルフを逮捕。コーネリア最高法廷はかれを、国家中枢の要職にありながらみずから国を破滅に追い込んだ狂科学者として、国家反逆罪と裁定し、べノムへと永久追放した――。

 これが、べノムの反乱へとつながる発端となった事件の、おおよその内容とされている。コーネリア都市部の住人に「アンドルフについて教えてくれよ」、と頼んだなら、たいていこういった類の答えが返ってくる。狂った科学者さ。悪の権化ってやつだ。自分の力に溺れたんだな。あそこまで悪いヤツは、そうそういないよ。

『ファルコとの出会い』その13

2008年06月09日 23時01分37秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 いまのスリッピーには酷な話だが、プラズマ冷却弾の性格を考えると、この任務は、まさにこの兵器を使うにうってつけと言うしかない。
 3機のアーウィンが、1発でも冷却弾を命中させることができれば、敵機のスピードは落ちる。そうなればさらに冷却弾を当てることはた易くなる。
 コーネリア軍部にはまるで相手にされなかった自身の発明品が、新生スターフォックスの作戦第一号の要となる。そう考えたときスリッピーの胸はおどった。冷却弾を使うことを提案し、それが受け入れられたとき、かれは有頂天になった。チョーシに乗っていた……のかもしれない。
 きっと相手はすぐに飛べなくなっちゃうよ。楽勝、楽勝! 苦労せずに捕まえられるさ! ……作戦会議中、スリッピー自身が大威張りで、そう断言したのだった。
 だが。今の事態は、そんな想像とはかけ離れた悪い方向へと進もうとしている。『重ねがけ』するはずだった冷却弾は、最初の2発を最後にまるで当てることができない。ぐずぐずしていれば冷却弾の効果は消えてしまう。おまけに、グラビティ・ブレードをもがれたことで自分のアーウィンの機動力は半減し、これではもう、速度の落ちた敵機にも追いつけはしない……

 スリッピーは、じぶんの体が空洞のようになってゆくのを感じた。鍾乳洞のように暗く冷えきった体内で、鍾乳石に結露したしずくが漆黒の水面に落ちるように、言葉が滴りこだました。
 オイラのせい、だよな。
 一度その言葉が体ぜんたいに広がってしまうと、もう、あとからあとからあふれてくる涙をとどめることができなかった。
 もう、ダメだよ。あいつを捕まえることなんかできっこない。それもこれも、オイラが調子に乗って……油断して……アーウィンを壊されるような、役立たずだったからなんだ……。

ご愛読ありがとうございます

2008年06月09日 22時16分07秒 | 日々のつぶやき
 この『俺の翼に乗らないか?』も、やっといただいたコメントが3つになりました・・。コメントがいただけると嬉しいです。ありがとうございます。
 履歴を見れば、来てくれている人がいらっしゃるのはわかるのですが、来ているからって読まれているとは限らないし。読まれたからって面白いと思われたかどうかはわからないしで、どなたかコメントしてくださらないものか……と実のところいつも待っているのです。

 最近は専ら小説もどきを載せているわけですが、そもそも私の妄想を膨らまして書いているものですので、任天堂から許可を得ているわけでもないし、ほかの多くのスターフォックスファンの皆様に気に入っていただけるとも限りません。

 私が書くスタフォは、あくまで私の妄想でしかありません。
 しかして、その妄想の中で、キャラクターたちはみな輝いているのです……その輝きを私なりに表現していこうと思っております。
 思いつきでさぐりさぐり書いているので、書くのは遅いですし展開に矛盾が生じることもあるかもしれません。(実際、スリッピーのアーウィンの翼がもぎとられる場面で、グラビティ・ブレードが2本、と書いていましたが正しくは1本でした……。2本あるのはウルフェンですね。もう直しましたが)

 あまり過度な期待はなさらずに、たまに覗いて楽しんでくだされば幸いです。
 そしてもしよろしければ、なんかコメントしてくださいませ……。