俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

『スターフォックス、宇宙の中心へ』その4

2010年11月28日 21時46分20秒 | アナザーストーリー
「<鍵>の在り処か」
 観念して、ペパーは口を開いた。
「どこだ? その隠し場所は?」
「その前に教えろ。お前たちは何だ? どうして知ることができた。あの場所のことを」
「さあね。知らないほうがいい真実もあるさ。もと将軍様」
 知らないほうが良いもの? 『世界の中心』こそ、そう呼ぶにふさわしいものだというのに。ペパーは相手の顔を見つめた。自分の記憶が風化しているのでなければ、一度も出合った覚えはない。はじめにこの男が言ったように、諜報部隊『山狩りの一団』の一員である保証はどこにもない。もっとも、諜報員は政府の高官から秘密裏に任命される。軍の幹部といえどもかれらの素顔を知る機会はなかった。
「急いだほうがいい。カーペットが血で汚れないうちにね」
「ここだよ……私の頭の中だ。第一の<鍵>はそこにある」
 侵入者たちが顔を見合せ、目配せしあう。第一の男はペパーに向き直ると、口元に笑みを浮かべた。
「やはりご一緒してもらわねばならないようだな。あんたの<鍵>で<扉>を開くまで……。おたがい、愉快な旅路といこうじゃないか」

『スターフォックス、宇宙の中心へ』その3

2010年11月28日 00時40分45秒 | アナザーストーリー
「『宇宙の中心』への鍵だ! 渡してもらおうか、そいつを」
 第二の男が、吼えるように言葉を投げつけた。
 ペパーは極力平静を保った。その名を聞いても、顔色一つ変えてはならない。常々からそう自分に戒めてきた。
 だが――誰も知るはずのないその名を、不意打ちに投げつけられ、ペパーは一瞬、その名前が指し示す場所を想起した。厳重に、幾重にもプロテクトされた扉の奥底、この世界の存亡にかかわる秘密の眠る場所を――『宇宙の中心』を。そして記憶をなぞるその一瞬が、瞳に揺れるわずかな不穏となって映し出された。
 第一の侵入者は、それを見逃さなかった。
「知っているな」
 確信と満足を込めて、侵入者は言った。
「何のことだ……」
 虚しい抵抗と知りつつ、ペパーは空とぼける。
「いいかね。俺たちはあまり下品な真似はしたくない。それが証拠に、俺を招き入れてくれたあの家政婦も、いまは眠っているだけだ。だがペパー、あんたがおとなしく従ってくれないなら、彼女の喉にナイフを突き立てる。ということで改めて聞くが――鍵のありかを、教えてはくれないかね?」

『スターフォックス、宇宙の中心へ』その2

2010年11月28日 00時38分50秒 | アナザーストーリー
 応接間の戸口に現れた男の姿を見て、主は眉を寄せた。
 夜霧に湿ったコートを脱ごうともせず、ポケットに両手をしまったまま仁王立ちになっている。
 家政婦の名を呼ぼうとして、主は口を開いた。
「呼んでも来ない」
 コートの襟に隠された男の口元から、刺すような響きの言葉が発される。
 主はゆっくりと立ち上がり、言った。
「おまえは何者だ? 『山狩りの一団』の者ではないな?」
「いいや『山狩りの一団』だよ。多少、私的な目的のためにお邪魔しているがね」
 ぐぬう、と主は唇を噛んだ。いつの間にか、コートの男の後ろ、さらに第二、第三の侵入者が影のように現れていた。
「元・コーネリア軍最高司令官、ペパー将軍……。いくつか聞きたいことがある。ご同行願おう」
「なにが目的なのだ。いまの私はただの退役軍人に過ぎん。私を材料に政府を脅そうとしているのなら、見当違いだぞ」
「あんたの昔の肩書きなぞ、興味はない」
 コートの男の肩越しに、第二の侵入者の声が響く。声は若い男のものだ。黒いダウンジャケットから、茶色い鼻先と軽薄さのにじむ顔貌が見て取れ、二十代に入ったばかりかと、ペパーは推測した。

『スターフォックス、宇宙の中心へ』その1

2010年11月21日 20時49分14秒 | アナザーストーリー

 その邸宅を訪れる者は今も昔も少なかった。以前には、邸の主がほぼ留守にしていたゆえの事であったのだが、現在はそうではなかった。
 主は静かに暮らすことを望んだ。家政婦が一人、食事の支度のために寝泊りしているが、あまり言葉は交わさなかった。新聞を読み、コーヒーをすすり、安楽椅子に座って音楽を聴いて過ごした。それでも良かったのだ。かれはすでにひとつの時代を生き抜いた者なのだから。
 コーネリア首都郊外の閑静な住宅地の一角に、つややかな緑につつまれて邸宅はたたずんでいる。表札の上にはツタが生い茂り、かつてはその名とともにあった栄光までも覆い隠してしまっているようだった。あるいはそれも、主が望んだことなのかもしれない。

 永遠を内包しているかのような、穏やかな静けさ――。だがそれも、長くは続かないようだ。邸宅の主が胸中に秘める、秘密の巨大さゆえに。
 夜霧が街路樹の枝葉を濡らす夜更け。街灯に照らし出される夜霧を、赤茶けたコートでかきわけながら、近づくひとつの影。
 影は邸宅の門柱の前で立ち止まり……からみあったツタの下に隠された表札の名前を確認することもせず、呼び鈴を鳴らした。
 一言、二言、インターホン越しの言葉を交わした後、影は錆びついた金属の正門を開き、邸宅の敷地へと足を踏み入れる。玄関の扉が内側から開けられ、家政婦が顔を出して深夜の来訪者を招きいれた。
 「向かって左の扉が応接間――」
 家政婦は最後まで言えなかった。赤茶けたコートの男が、てのひらの内に納まる金色の何かを懐から取り出し、家政婦の鼻先にうすい紫の霧を噴射した。そのひと吹きで家政婦は昏倒した。
 ぐらりと傾いたその体を、夜霧に濡れた腕が羽毛のように支えた。

アニマノイドとSF用語

2010年11月09日 22時55分58秒 | 考察
 『スターフォックス』の世界の住人は、自分たちのことを何と呼んでいるんだろうか。
 と考えて、作った言葉がアニマノイド。

 SFの世界では、人間型の知的生命体をみなひっくるめて「ヒューマノイド」と呼ぶ。でもそれは人間(ヒューマン)ありきの言葉であって、スタフォの世界には人間はいないみたいだからおかしいよなあ・・てな思考。

 この言葉を「発明」したのは自分だ……と思い一人で喜んでいたのだが。
 検索してみたら、もうすでに存在してた。
 まあ、誰でも思いつきそうな言葉だもんね……。

 見たところ、どの作品でも「アニマノイド」という言葉は「獣人」くらいの意味で使われているな。
 もうこれを、ケモノとヒトの中間的存在を指す一般名詞として定着させられないかしら。

 『タイムマシン』はもとは小説のタイトルだった。『ロボット』だって、もともとは小説の中に登場した言葉だった。
 普遍性を持った言葉なら、一般に広がっていっていいと思うんだよね。

 というわけで、これからは獣人的キャラはみなアニマノイドと呼ぼうぜ。
 『ソラトロボ』のイヌヒトとネコヒトもアニマノイド。
 『グイン・サーガ』のグインもアニマノイド。
 『火の鳥 太陽編』のクチイヌも。
 エジプトの神ホルスやアヌビスも。カラス天狗も。

 ……。
 動物と人の混合とか、動物の擬人化って、そこらじゅうにあるね。
 わざわざ名前をつけるまでもなく、普通にある。新しく名前をつける必要性、ないかもしれないな。

猛将伝って何??

2010年11月06日 23時02分21秒 | 日々のつぶやき
 ちょっと前に『戦国無双3』を買った。

 豊臣秀吉のキャラの軽さにびっくりしたけど、「でも農民から天下まで上りつめた男なら、こういう誰からも好かれるやつだったかも・・」と妙に納得。

 伊達正宗が黒田官兵衛に詰問される、そこを直江兼続に救われる。
「存じませぬな! その者勇猛につき、後ろ姿しか目にしておりませぬ!」
 そこで秀吉も正宗を許す。
「ならええ。そんな勇敢なやつなら、この戦でも大活躍してくれるじゃろ!」
 ……このシーンが好きです。「なんと気持ちのいいやつらだろう……」とか言いそうになるね。

 買ってからしばらくは楽しんで遊んでいたのだが、ある時ふと思った。
「ラスボスはどこにおるんやろか……」
 ゲーマー的思考パターンでは、ラスボスを倒すなどの最終目標が見えないと何となく不安なのだ。
 全員分の『無双演舞』(ストーリーモード)をクリアしたら、隠しシナリオが現れて……時空を越えて現れた自衛隊と戦う展開になったりしないだろうか。
 『クロノトリガー』かなんかと間違えているね。

 ひたすら『無双演舞』を繰り返して、全員分のシナリオをクリアするのが最終的な目標なのかな……。
 『村雨城』モードも遊んでいるけど、これは最終ステージの村雨城が難しすぎてクリアできません。本田忠勝で挑戦すればいいらしいので彼を鍛えてみようかな。
 ん。時空を越えて戦国時代に現れた怪物ムラサメ。もうこいつがラスボスということにしておいてもいいんじゃないかな。ムラサメを倒せるくらいのプレイヤーなら、このゲームをとことん遊びつくしているだろう、きっと。

 てな感じで楽しんでいたのだが。
 『戦国無双3 猛将伝』が発売されるということをきのう知った。
 知ったはいいけど、猛将伝って何なんだ。
 つまりは追加ディスクなのか。
 『3』のセーブデータはそのまま使えるのか。
 『3』の内容を遊ぶには『3』のディスクが必要なのか?

 ……いまいちよくわからないのだった。僕は『無双』シリーズ遊ぶのこれが初めてだし。
 遊びながらいちいちディスクを入れ替えるのは面倒だなあ。
 『3』のディスクを必要にしているのは、中古販売を防ぐためなのですかね。
 

エネルギーが必要

2010年11月03日 03時23分18秒 | 日々のつぶやき
 久々にショートストーリーを書きました。『ライラット暦12月31日』。
 「忙しくて書けない」っていうのはイイワケだよねー。自分に書く気があれば書けるはずだよね。

 これだけの長さのものを書くにも、3時間かかったけどね……。
 何かを創り出すにはエネルギーが要るってことで、仕方ないけど。

 『ファルコとの出会い』も書いてしまいたいな……。

ライラット暦 2028年12月31日

2010年11月03日 01時22分25秒 | アナザーストーリー

「早いもんだ。今年ももう終わるんだな」
 いつになくしみじみした様子で、ファルコが言った。すでに夜は更けている。あと1時間もしないうちに新年が訪れるのだ。
 ライラット暦2028年12月31日、今日はコーネリアの大晦日である。
 冷えわたり澄み切った夜空の下で、街のネオンが静かにまたたいている。年の暮れに独特の、心に何かを呼び起こすような静けさがコーネリアの街全体を包み込んでいた。

 スターフォックスの面々も、ドックに停泊したグレートフォックスの艦内で、一年の終わりを穏やかに過ごしている。
「本当だな。アッという間に一年が過ぎてしまった気がするよ」
 ソファに寝そべり、両のまぶたを閉じたまま、フォックスは言う。となりではペッピーが腕を組んで高いびきをかいている。
 この日の昼間、スターフォックスチームのメンバーは、手分けして艦内のすみからすみまでを掃除しつくし、アーウィンやランドマスターの整備と燃料補給、部品類や食料の買出しを終え、税金の調整を片付けた。おかげで船の中は見違えるように美しくなり、今年の仕事をすべて片付けてしまった達成感からか、フォックスとファルコの顔にも安堵がにじみでている。
 奥の厨房からは、クリスタルとスリッピーが食器を片付ける音が聞こえてきている。
「大晦日か……。大晦日といえば」
 薄く目を開け、なかばウトウトした表情でフォックスが言う。
「なんだ? 大晦日がどうした」
 こちらも、半分眠ったような目のファルコが聞く。
「このあいだ読んだ本に書いてあったのさ。この星……惑星コーネリアが誕生してから、いま現在まで経過した時間を、ちょうど一年間だとする。すると、おれたちアニマノイドが誕生したのは、12月31日の大晦日。それも23時30分ごろになるって話さ」
「んん……」
 わかったようなわからないような返事が、ファルコのクチバシから漏れた。
「俺たちの歴史なんて、この惑星の歴史と比べれば、それだけ短いものだってことだ。宇宙は計り知れないよな、全く」
 満足そうに言ってから再びまぶたを閉じたフォックスだったが、ファルコの次の言葉を聞くと眠気は吹き飛んでしまった。
「なるほどな。とすると、アニマノイドの歴史ももうすぐ新年を迎えるってことか」
「ええっ!?」
 ソファから体を起こし、それは違うだろう、と言いたげな視線を我らのエースパイロットに向ける。なにかおかしなこと言ったか?と言いたげな視線がそれにぶつかった。
「そうじゃないよ、ファルコ。アニマノイドは新年を迎えたりしない」
「あぁ? 俺たちが生まれたのが大晦日の23時過ぎなんだろ。それなら、もうすぐ新年がきたっておかしくないだろうが」
「違う違う。いまの話はものの喩えなんだ。コーネリアの歴史を一年と考えたんだから、常に『いまこの瞬間』が一年の終わりにあたるわけで……、つまりいつまで経っても新年は来ないのさ」
「フォックス」
 信じられないものを見る目つきでファルコは言った。
「お前……言ってることおかしくないか? 『いまこの瞬間』が一年の終わりなら……次の瞬間にはもう年が明けてるてことじゃねーか」
「だーかーらぁ」
 じれったくなりソファから立ち上がる。
「『いまこの瞬間』はいつまで経とうが『いまこの瞬間』であって、さっきの『いまこの瞬間』といまの『いまこの瞬間』とは別の……あーややこしいっ」
 フォックスは眉をへの字に寄せると、耳の後ろをかりかりと掻いた。
「つまり、いまの話でいくと、『いまこの瞬間』はまさに年が暮れる時間なわけだよ」
「……それくらい、オレだってわかってる」
 そうだろ、とフォックスは言い、安心してほっと一息ついた。
「時計を見りゃあ一目瞭然だ。いま午後11時58分だからな」
 だーーーっ、と叫んでフォックスは頭をかかえる。
「わかってない! 全然わかってないぞ、ファルコっ。アニマノイドの話と、いまの時刻とは別の話だからな! 今が何時だろうと関係ないんだ!」
「お前こそワケわからないじゃねェか! いままさに年が暮れる、と言ったと思えば、いつまで経っても新年は来ない、なんて言うんだからよ。じゃあ何か、アニマノイドの歴史はずーーーっと年の暮れのままで、永遠にニューイヤーカードも受け取れないままだってのか? 御免こうむるぜ、そんな歴史は!」
 年の暮れに全く似合わない騒々しさで口論する二人に驚いて、クリスタル、スリッピーの二人が厨房から顔を覗かせた。
「一体何の騒ぎ? またつまんないことでケンカしてるんじゃないでしょうね」
「何が原因か知らないけどさ~、ケンカしたまま年を越すのは勘弁してよね」
「ケンカなんかじゃねェ、フォックスがワケ解らないこと言うもんだから俺は」
「違うんだって。ファルコ、よく考えればわかるはずだ、だから『いまこの瞬間』が……」
 そう、まさにその瞬間。
 惑星コーネリアは46億7896万5307回目の公転を終え、ライラット系の暦は新たな年を刻み始めたのだった。
 なおも騒ぎ続ける四人のかたわら、ソファに沈み込んだペッピーの高いびきがふと止まり、もごもごと口が動いた。騒がしい声が飛びかい誰も聞き取ることはできなかったが、唇の形はこう言っているようだった。

“A HAPPY NEW YEAR.”