そんなはずはない、という声が脳裏にこだまし、次の行動へと移る意欲を削いだ。
己の身体の延長とも思えるまでに乗りこなし、あらゆる状況下の訓練、戦闘をもくぐり抜けてきたのだ。それも全ては、この一戦のためだった。かつて自分のプライドを切り刻んだアーウィンという機体。それと同等の力を持つ機体を手に入れるためアンドルフに接触したのも。各惑星に点在するコーネリア軍の拠点にゲリラ攻撃をしかけ、この戦争にスターフォックスを引っ張り出させたのも、全てはこの一戦のため。アーウィンに正面からブツかり、勝利するためだ。
だというのに。最後の一手を詰めようとするときに、なぜ動かない? なぜオレを裏切る?
頭脳のなかで疑問だけが渦をまいて大きくなり、働かせるべき思考回路を凍りつかせてしまった。
操縦不能のまま背後からの攻撃を死ぬまで受け続けるのだ。そう気づくと、凍りついた思考は融解し、その下から怒りが溶岩のごとく噴出した。
それはウルフ本人にとって屈辱だった。
死が身近に迫ったとき、己の感情や欲望を抑えきれず、周囲にまきちらしたまま死んでいく。そういう輩をウルフは数え切れないほど見てきた。そして、軽蔑していた。
ところがいま、自身の死が背中にぴたりと貼り付いてみると……。何のことはない。自分も感情を暴発させ、しかもはるか昔の恨みを今ごろ蘇らせて怒り狂っている。怒り狂ったまま死ぬ。滑稽なことこの上ない。
程度の差があっただけで、自分も同じだったのだ。そう思い至ると、ウルフははじめて笑った。
己の身体の延長とも思えるまでに乗りこなし、あらゆる状況下の訓練、戦闘をもくぐり抜けてきたのだ。それも全ては、この一戦のためだった。かつて自分のプライドを切り刻んだアーウィンという機体。それと同等の力を持つ機体を手に入れるためアンドルフに接触したのも。各惑星に点在するコーネリア軍の拠点にゲリラ攻撃をしかけ、この戦争にスターフォックスを引っ張り出させたのも、全てはこの一戦のため。アーウィンに正面からブツかり、勝利するためだ。
だというのに。最後の一手を詰めようとするときに、なぜ動かない? なぜオレを裏切る?
頭脳のなかで疑問だけが渦をまいて大きくなり、働かせるべき思考回路を凍りつかせてしまった。
操縦不能のまま背後からの攻撃を死ぬまで受け続けるのだ。そう気づくと、凍りついた思考は融解し、その下から怒りが溶岩のごとく噴出した。
それはウルフ本人にとって屈辱だった。
死が身近に迫ったとき、己の感情や欲望を抑えきれず、周囲にまきちらしたまま死んでいく。そういう輩をウルフは数え切れないほど見てきた。そして、軽蔑していた。
ところがいま、自身の死が背中にぴたりと貼り付いてみると……。何のことはない。自分も感情を暴発させ、しかもはるか昔の恨みを今ごろ蘇らせて怒り狂っている。怒り狂ったまま死ぬ。滑稽なことこの上ない。
程度の差があっただけで、自分も同じだったのだ。そう思い至ると、ウルフははじめて笑った。