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スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その10

2008年04月17日 02時33分52秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 はじめに気づいたのはペッピーだった。
 ファルコ機周囲の空間が、凝縮されたように歪んで見える。

「気のせいか!? ヤツの機体が……ゆがんでいる?」

 ペッピーの言葉に、フォックスとスリッピーの二人も、高速飛行するファルコ機を肉眼で凝視した。ペッピーの言うとおり、ファルコ機が……ファルコ機をつつむ空間全体が、かげろうのように揺らめいている。

「ひえっ! こっちに向かってくるよ!」

 スリッピーが悲鳴を上げた。その通り、ゆらめく空間を纏ったまま、ファルコ機がスリッピー・ペッピーの二機へ猛然と近づいてくる。
 熟練の兵士としての勘がペッピーの身体を支配し、接近するファルコ機に照準を合わさせた。間髪入れず、プラズマ冷却弾が発射される。
 身をひるがえす。そうとしか表現しようのない動きでファルコ機が上方に旋回し、2発の弾丸をかわした。苦々しく、ペッピーが舌打ちする。

(当てられんか。今のヤツには)
「スリッピー! とにかく逃げろ! ヤツから離れるんだ!」
「ひぁ!? ああああっ?」

 ペッピーは、機を空中静止の状態から解き放ち、さらにブーストを開いて上空へと発進させた。
 だがスリッピーは? 恐怖と混乱で、慣れ親しんだはずの機器の操作法も吹き飛んでしまっている。指と視線はもたもたとうろつくだけで、事態を好転させる措置はなにも取れていなかった。

「スリッピー!!」
 フォックスとペッピーが叫んだ、その刹那。
 ファルコ機は、スリッピー機を撫ぜるようにかすめて飛び、機体周囲の重力場は、アーウィンの構造上もっとも脆弱な部分――重力を微細に制御するためのグラビティ・ブレード――を、もぎ取っていった。

 初めてにしては、うまくやれたな……
 ファルコはクチバシの端で少しだけ笑った。