【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

もてる/『時計じかけのオレンジ』

2009-04-24 17:52:32 | Weblog
 もてるようになるための方法には二つあります。一つは、自分を高めて多くの人からあこがれの対象となること。もう一つは、自分を安売りすること。

【ただいま読書中】
時計じかけのオレンジ』アントニー・バージェス 著、 乾信一郎 訳、 ハヤカワ文庫、2008年、740円(税別)

>>モロコ(ミルク)に何か新しいベスチ(もの)を入れちゃいけないって法律はまだないからモロコにベロセットとかシンセメスクとかドレンクロムなんてベスチを入れて飲んじゃう。そうすると、すごくハラショーな十五分間が楽しめるんだ。“神さまと天使と聖者たち”がおがめてさ、その一方じゃ、モズグ(あたま)ん中でもっていろんな色がバンバン爆発するのが見られるってもんだ。

 アレックスは15歳、仲間たちとはスラブ系のスラングまじりのナッドサット(ティーンエイジ)ことばでしゃべり、毎日(というか毎夜)楽しくやっているのは「超暴力」。ストリートや押し入った家で、暴行傷害・強姦・強盗・家の破壊などやりたい放題です。お気に入りの武器は蹴飛ばしブーツとのど切りブリトバ(かみそり)。ある夜も押し入った家で、作家が書いている原稿の表題「時計じかけのオレンジ」を鼻で笑い、作家をぼこぼこにしその妻を作家の目の前で輪姦し原稿をびりびりに破り捨てて意気揚々と帰宅します。彼が愛するのはクラシック音楽。超暴力をふるっているときやふるっていないときも、彼の回りや脳内には様々なクラシックがBGMとして鳴り響き続けています。
 しかし逮捕によって彼の運命は変わります。15年の刑。アレックスは刑務所内でも人を殺します。このままではまずい、とさすがの彼も思い、ルドビコ療法に志願します。これは暴力に対して肉体が拒絶反応を示すように条件反射付けをするものです。「パブロフの犬」です。療法はうまくいき、アレックスは世の中に放り出されます。暴力のことを考えただけで吐き気がする状態で、彼がめちゃくちゃにしたことに対して恨みを持っている人たちで充満している世の中へ。で、反政府運動家たちによってアレックスは利用され、どさくさ紛れに“治って”しまう、ところで映画版はおしまい。ただし本書にはもう1章あります。「暴力」のシャワーを浴びる感覚と、人の自由意志についての考察と、なかなか微妙なところをついてくれる本です。

 アルジャーノンや孫悟空の輪のことを私は思い出しました。人の自由意志をねじ曲げることは、人が行なって良いのか悪いのか、行えるとしても技術的にできるのかどうか、できるとして誰がそれをコントロールするのか……考え始めるときりがありません。

 なお本書は、サイズがちょっと特殊です。普通の文庫本より数mm高さがあります。どうしてこうなったのかはわかりませんが。




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