【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

安売り禁止令

2013-04-26 06:35:57 | Weblog

 消費税増税にともなう「安売りセール」は一切禁止、だそうです。政府が言っていることを見ると、江戸時代の幕府の「禁令」かと思います。要するに「お上が決めた消費税増税について、たとえ安売りという形でもとやかく言及することは許さない。黙って増税を受けいれて静かに定着させろ」というお上からのお達しですな。もちろん「違法な不当廉売(仕入れ業者に対する安値の強制)」はいけないことですが、それならそれで現在の法律をきちんと運用すれば良いことではないです?(「違法」を罰するのは「現在の法律」によればいいのです) 自分が現在ある法律をきちんと運用しないからその責任を大型スーパーと消費者に取らせる、というのは消費税転嫁ならぬ責任転嫁でしかないでしょう。
 笑っちゃうのが「罰則」が公正取引委員会からの指導と会社名の公表であること。本当にそれをやったら、公取委が「このスーパーは安売りセールをやってます」と税金を使って天下に周知してくれることになりそうですが。

【ただいま読書中】『海の人々と列島の歴史』浜崎礼三 著、 北斗書房、2012年、2500円(税別)

 「海に生きた人々」の歴史について、詳しい研究書は数多くあります。しかしそれらはことばが難しく、読解するためには歴史の深い知識を必要とするものでした。そこで著者は、平易なことばで歴史に沿った記述をすることで中世の漁村の成立について述べようとしています。
 氷河期、日本列島は大陸に陸橋でつながり日本海は内海となっていました。その南北の陸橋を通って人類が列島に移住してきます。しかしもう一つのルートがありました。当時は、スマトラ・ボルネオ・ジャワなどのスンダ列島は面積を増し大陸とつながってスンダランド亜大陸を形成していましたがそこに住んでいた初期アジア人の一部が黒潮に沿って琉球・薩南諸島を経て南九州に到達していたのです。
 縄文時代の貝塚などからは漁撈の証拠が大量に発掘されています。丸太船や精巧な釣り針やヤスのほかに、石槍も漁具でした(鮭を突くのに使われました)。しかし、6500年前の九州佐多岬沖50kmの鬼界カルデラからの噴火(海中からの火焔流が南九州を遅い、火山灰が列島全域から朝鮮半島まで分厚く覆った、縄文期から現代の間では最大級の噴火)によって縄文文化は大打撃を受けました。
 縄文後期に「農業」が行なわれるようになりましたが、それには地域差がありました。やがて九州北部に稲作が伝わります。しかしこの地は豊かな漁業で充足していてしかも水田適地が少なかったため稲作は盛んにはなりませんでした。しかしやがて「弥生人」が縄文文化に混じり合う形で日本に広がっていきます。
 本書は、ページをめくるたびに話が時空間を行ったり来たりするため、ちょっと読みにくくなっています。ただ、歴史が“一直線”に展開するものでないことはこの書き方によってよくわかります。
 大和政権時代、海人を支配する豪族(たとえば和爾氏)は力を伸ばしました。海人も、漁撈や製塩だけではなくて日本海や瀬戸内海で海運などにも進出します。しかしその後の律令国家では、おそらく「海」は冷遇されたはずです。律令を生んだ中国は「大陸国家」で「海運」はその視野に入っていません。したがって「律令国家」日本は「街道」を基本に交通が整備されることになります。それでも「海」は重要なものでした。文字通り津々浦々に人が住み、繁栄をすることになります。そしてそこで各集団は衝突や協力をすることになります。これは「教科書に載っていない日本歴史」です。
 「海」から見るとまた別の「日本」が見える、というのは面白いものです。ちょっと得をした気分。



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